★大蔵大根の原種の採種を支援する事業が予算化されました。
2017年度より大蔵大根の原種の採種を支援する事業を予算化。年10万円を補助しています。
また大蔵大根を区立小中学校の給食で提供する「せたがやそだち給食(大根カレー)」が今年度拡大され、近隣農家、JA協力のもと全校で実施されました。
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◆上川あや
伝統野菜の継承について伺います。
区内農産物「せたがやそだち」の中には、世田谷でつくられた品種や代々地域の農家でその種が受け継がれてきた伝統作物があります。比較的知られたところでは大蔵大根や下山千歳白菜、また、名前が知られていないところでは城南小松菜や安藤早稲小松菜、宇奈根ねぎ、また、牛の角というネギの種類などがあります。この中には、JA東京により江戸東京野菜に指定、ブランド化され、近年人気が高まっているものもあると理解をしておりますが、生産者が現在たった一人で、その存続が危ぶまれるものもあります。
こうした農産物は、世田谷の特色を発信するアイテムでもありまして、地域の遺伝資源を保護し、次世代に残していくことも大変重要なことと考えるんですけれども、区の見解はいかがでしょうか。
◎畑中 都市農業課長
世田谷ゆかりの農産物の中には、お話しのとおり、生産者が少なくなってきている品種もございます。農産物の品種は、生産者側から見れば栽培のしやすさや耐病性、農地面積から見た収益性など、消費者側から見れば趣向や家族構成により好まれる味や形、大きさなど、時代時代で目まぐるしく変化するため、現状では農業に関する技術的、学術的な知見を持つ国や都道府県においても品種を保存する仕組みはございません。
一方、区ではこれまで、大蔵大根に限ってではございますが、区内農業協同組合と協力し、「せたがやそだち」の柱、ブランドのフラッグシップとして生産拡大や啓発活動に努めてきたという経緯がございます。
お話しにありました大蔵大根以外の品種につきましても、一部については農業協同組合や生産者の間で保存に向けた動きもあると聞いておりますので、生産者から御相談がありましたらば、区としても関係機関と連携し、必要な支援に努めてまいりたいと考えております。
◆上川あや
今おっしゃられた大蔵大根ですけれども、今流通しているもののほとんどはF1と呼ばれる交配種、いわゆる雑種なんですね。厳密には地域伝来の野菜とは似て非なるものと申し上げるべきだと思います。かつての農家は、みずから育てた野菜から形質がすぐれたものを選抜し、そこから種をとり、それをまた植えることで、地域の土壌と風土に合ったすぐれた固定品種というものをつくり出してきました。この自家採種を重ねてできた大根が本来の大蔵大根です。
これに対してF1というのは、狙いどおりの性質があらわれるように、種苗会社が異品種をかけ合わせてつくり出した交配種、雑種です。一代目は成長が早くて収量もふえ、形も大きさも出荷時期までもそろい、見た目もそっくりで、いいことづくめのように見えますが、そこから採種した、種をとった二代目は形質が既にばらばらとなって安定しません。つまり、毎年種を買い続けなければできない農業なんですね。このため、大蔵大根では、ことしから種苗会社の都合で生産されなくなってなくなった品種、七福というのがあると聞いております。伝統野菜がF1で支えられている状況を変えていく必要もあると考えるんですけれども、いかがでしょうか。
◎畑中 都市農業課長
大蔵大根のF1種につきましては、確かにお話しのような状況がございます。しかし、現在、大多数の農産物がこのF1種でつくられているのが農業の現状でございます。F1種については、メーカーにおいて均質的につくられており、雑種のため、耐病性があり、栽培しやすく、つくりむらも少ないと聞いております。
大蔵大根においても、これまで取り組んでこなかった農家が栽培できるようになり、収益が上がるなど、生産拡大の役割を果たしてきたものと考えております。
一方で、今回のようにメーカー側の判断で生産が中止となるような場合もございます。どの種を使うかは、あくまで農家の経営上の判断となりますけれども、伝統的な野菜に限って言えば、原種の継承を図ることが重要と考えております。
◆上川あや
大蔵大根については、新年度予算に初めて原種継承のための事業費が予算化されたと承知をしておりますが、どのような事業になりますでしょう、御説明をいただければと思います。
◎畑中 都市農業課長
大蔵大根の原種につきましては、F1種と区別するため、伝統大蔵大根と呼ばれております。区内農業協同組合の青壮年組織で構成される世田谷区農業青壮年連絡協議会では、F1種生産中止に備え、自主的に伝統大蔵大根の継承に向けた大蔵大根の原種の採種を行っております。区では、農業協同組合とも調整の上、事業への支援として、伝統大蔵大根の採種用の圃場を運営管理する経費の補助事業を開始することとし、二十九年度予算案に計上させていただいております。
区といたしましては、事業の進捗状況を確認しつつ、原種の継承に向け、今後とも必要な支援を継続してまいりたいと考えております。
◆上川あや
もう一つ名の知られた地域野菜に下山千歳白菜がございます。こちらも現在、七十五歳の方が烏山でたった一人だけ栽培をしております。しかも相続で、近く畑の大半を手放すようだとも伺っております。この地域野菜に親しむイベントが地域の商店街等でも行われているとは聞いておりますが、この活用状況と今後についてどのようにお考えでしょうか。
◎畑中 都市農業課長
お話しの下山千歳白菜は、大正、昭和のころに区内で品種改良された野菜でございます。特徴としては、結球が三、四キロある非常に大きな白菜で、他の品種に比べ病気に強いと聞いております。市場出荷はされていないと聞いておりますので、主に地元において活用されているものと認識しております。
区としても、引き続き品種が継承されていくことが望ましいと考えているところです。
◆上川あや
危機感は共有していただいていると思いました。
あと宇奈根ねぎについても、長年お一人で栽培を続けてきた方の農地が、近く外環関係で大半を失われてしまうと聞いております。このため、この種の継承を心配した方々が今動いていらっしゃって、昨年は次大夫堀民家園にその栽培と展示を頼みにいらっしゃったということも伺っております。
この種の存続も懸念される状況かと思いますが、区ではどのように見ていらっしゃるでしょうか。
◎畑中 都市農業課長
宇奈根ねぎは品種登録されている野菜ではございませんけれども、数軒の農家で栽培が行われているとのことで、生産者の間で品種の保存をしているものと聞いております。所管の農業協同組合に聞きましたところ、先ほどの下山千歳白菜とともに、今後、生産者と相談し、何らかの対応を検討したいとのことでした。
◆上川あや
あともう一つ、牛の角ネギというのがあるんですが、栽培してきた農園も後継者がいないということが今の悩みだというふうに伺っております。事態は決して楽観を許さない状況だと心配をしております。かつては名を知られた松沢きゅうり、これは下半分が白いキュウリだそうです。深沢かぼちゃ、これは外側は緑でなく赤いカボチャだそうです。もう失われてしまいました。都市農業課もいま一歩歩を進め、各方面ともしっかり連携をとり、種の保存の方策をしっかり考えていただきたいとお願いいたしますが、いかがでしょうか。
◎畑中 都市農業課長
都市農業課としては、生産者がたとえお一人になられても営農の継続を支援してまいりますが、先ほど申し上げましたとおり、品種を系統的、網羅的に保存する仕組みにはございませんので、即時的な対応は難しい現状がございます。対応が必要な状況の発生等に留意し、農業協同組合や東京都の専門機関、教育関係の方など多方面にお声かけをさせていただきまして、伝統野菜の継承に努めてまいります。
◆上川あや
失われてはもう遅いですので、しっかり連携して取り組んでいただくように重ねてお願いを申し上げまして、私の質疑を終わります。