★発がんアスベストに461棟の調査漏れ。追跡調査実施中。
国は過去の震災で被災建物からアスベストが飛散した教訓から、使用建物の調査を区に求めてきましたが、区が追跡調査したのは44棟のみで461棟が調査漏れ。
上川の追及で区は毎年調査を実施。未把握は276棟に減りました。
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◆上川あや
区の災害対策総点検からこぼれ落ちてきた課題、震災時、災害時のアスベスト飛散・暴露防止対策について伺います。
アスベストは、主に建材として広く用いられてきましたが、人が吸引すると中皮腫や肺がんなどを引き起こす強い毒性が明らかとなり、その新規使用は二〇〇六年より全面禁止されています。中皮腫の潜伏期間はアスベスト吸引から平均三十五年前後で、現在、年間千人もの方々が死亡しています。今後十五年で死亡者はさらにふえ、十万人以上に達するとの推測もあります。しかし既存の建物内には大量のアスベストが今なお残されています。国土交通省は、アスベストの残る可能性のある民間建物を二〇〇九年およそ二百八十万棟と推計。区内にも、なお多くの含有建築物が残ることは明らかです。
九五年の阪神・淡路大震災では、住宅だけで二十五万棟近くが全半壊しました。周辺住民、また、住宅の解体に当たった作業員が無防備にアスベストを吸い込んだ反省から、環境省は、二〇〇七年、災害時における石綿飛散防止に係る取扱いマニュアルを策定、全地方自治体に配布し、その活用を促してまいりましたが、当区ではその反省が全く生かされてはおりません。
そこで伺います。
まず、平時からのアスベスト含有建物のチェックについてです。国は二〇〇五年から二〇〇八年にかけ、三次にわたり、各自治体に延べ床面積おおむね千平米以上の民間建物について、吹きつけアスベストの有無とその状況の報告を求めています。四月現在、区内の対象建築物は千六百七十九棟、うち調査報告がされたものは千二百十八棟で、六十五棟でアスベストの露出が確認をされ、五十五棟が対応済み、十棟が未対応です。しかし、問題は未対応の十棟だけではありません。持ち主から返答のない調査漏れが、区内では四百六十一棟、二七・五%に上ります。国の調査指示から八年、区が追跡調査を行ったのはたった四十四棟だけで、四百棟以上が野放しの状態です。
大阪府では府内市町村と連携、調査漏れの追跡調査を毎年実施し、今では九割以上で調査を終えており、区の対応の甘さは明らかです。平時から災害時に飛散の可能性を持つ建物について追跡調査を徹底し、リストアップを済ませておくべきです。区の見解を問います。第二に、災害時のアスベスト含有廃棄物の処理についてです。
災害時は被災建築物などの解体撤去で一時に大量のアスベスト含有廃棄物の発生が見込まれ、平時の体制ではその処理が難しくなります。
このため、地域防災計画や震災・水害廃棄物処理計画などの中に大量発生する廃棄物対策の一つとしてアスベスト含有廃棄物を明確に位置づけておく必要があると国のマニュアルは指摘しておりますが、当区では地域防災計画の被災住宅等の応急危険度判定の中で「応急危険度判定の際には、石綿飛散の危険性も配慮する」とあるだけで、具体的な処理計画はありません。マニュアルが求める周辺自治体、事業組合、事業者等との連携についても、ゴールの見えない、なお検討中。それぞれ検討を急ぎ、関連計画等に明文化しておく必要があります。区の見解を問います。この質問の最後に、被災建物の応急危険度判定についてです。
前出のマニュアルでは、災害本部は災害発生時の措置として、応急危険度判定時にアスベストの有無の確認を行い、その結果や住民等からの情報に基づき、建築物の持ち主等への飛散防止の必要性を伝え、対策を実施させるとしています。しかし、区の地域防災計画にも、応急危険度判定士の業務マニュアルにも、そのような記述はありません。明記するべきです。いかがでしょうか。
また、そもそも都内の応急危険度判定士の養成課程にアスベストの有無の判定に係る項目が含まれておりません。人材養成を見直し、危険を判定できる体制を早急に整えておく必要があると考えます。
あわせて区の見解を問います。
◎渡辺 都市整備政策部長
私からは、災害時のアスベスト対策について、二点に御答弁申し上げます。
まず、平時から災害時にアスベストの飛散の可能性を持つ建築物につきまして、調査の徹底、リストアップについてでございます。
区では、民間建築物における吹きつけアスベストに関する調査について、議員からお話がございましたように、平成十七年に二回、平成二十年に一回、計三回、国からの調査依頼を受けまして、延べ面積千平米以上の建築物の所有者等に対しまして、吹きつけアスベストの調査報告の依頼文書を送付し、また、フォロー調査等も行うなど、対応に努めてきたところでございます。御指摘の調査報告を求めているものの報告がない物件におきましては、これまで管理会社や所有者の変更などにより宛先が不明になっている物件の再調査や、解体に至った物件の追跡、建築基準法によります建築物の定期報告書によるアスベスト有無の記載内容の確認などを行ってまいりました。
しかしながら、御指摘のように、調査対象としている建築物について、現在、所有者等からのアスベスト調査報告がないものが四百六十一棟ございます。今年度の取り組みとしまして、七月に吹きつけアスベスト使用の可能性の高い鉄骨造におきまして、調査報告がない所有者に改めて調査報告の依頼文書を送付し、求めているところでございます。アスベストにおける健康被害は問題であると捉えてございまして、議員御指摘の点を踏まえまして、関係所管と連携を図りまして、さまざまな機会を捉えて民間建築物のアスベスト使用の把握に、より一層努めてまいります。次に、応急危険度判定におきますアスベスト対応に関しましてでございます。
被災建築物応急危険度判定員につきましては、東京都防災ボランティア制度に基づきまして、建築士、行政職員として、三年以上の建築技術に関する実務経験を有する者が、講習会を受けた後に災害時のボランティア判定員として東京都が登録をし、広域災害を想定した被災時の活動支援をする制度でございます。このため、判定員の養成講習会の開催等は、東京都におきましてこれまで実施してきております。区といたしましては、お話にあります応急危険度判定に当たってのアスベスト対応について、東京都全体で対応すべき課題であるという認識のもと、こういった中、先般行われました東京都被災建築物応急危険度判定行政連絡協議会におきまして、当区から、アスベスト対応に関する問題提起をさせていただいたところでございます。その後、東京都からは、今後、アスベストについてどう対応していくのか、全国被災建築物応急危険度判定協議会の事務局でございます日本建築防災協会と検討していると伺っております。
なお、区におきましては、今年度、東京都に登録している区内在住在勤のいわゆる地元判定員の緊急連絡網の体制整備に取り組んでいるところでございまして、こういった取り組みや建築士会世田谷支部が主催しております応急危険度判定員スキルアップセミナーというものがございまして、そういった機会を捉えまして、東京都とも連携、調整を図りながら、応急危険度判定に当たってのアスベスト対応に関する情報提供、連携等に努めてまいります。以上でございます。
◎松下 清掃・リサイクル部長
災害時のアスベスト対策につきまして、廃棄物処理の観点からお答えをいたします。
地震などにより損壊した家屋等は、災害廃棄物として自治体が適切に処理することとされております。想定されます直下型地震による瓦れきの発生量は、東日本大震災をも上回るという都の試算も出ておりまして、世田谷区においても、可燃ごみ、不燃ごみ、粗大ごみの合計排出量の十四年分以上の瓦れきが発生するものと推測しております。こうした膨大な瓦れきの処理をどのように進めていくかは、当区のみならず二十三区共通の大きな課題でありますことから、二十三区と清掃一部事務組合で災害廃棄物処理対策に関する検討会を平成二十六年度に設置いたしまして、し尿や瓦れきの処理に係る課題検討や対策に、相互連携により取り組んでいるところでございます。
中でも、御指摘のアスベストなど、有害物質、危険物質の分別や処理、処分は重要な課題であると考えております。区ごとの対応には限界がございますことから、建設や産業廃棄物処理等の業界団体と二十三区との協力協定締結に向けた準備を現在進めているところでございます。瓦れき仮置き場の確保や分別体制など、課題も多くございますが、国による災害廃棄物対策指針、都が検討しております災害廃棄物処理基本計画等を踏まえまして、区といたしましても、アスベストなど有害物質の処理につきまして、二十三区、業界団体と連携して取り組みを進めるとともに、その旨を地域防災計画に位置づけてまいります。
以上でございます。
◆上川あや
アスベスト対策について、二点再質問いたします。
まず一点目、危機管理室長に伺います。本日、私からは三点課題を取り上げましたけれども、それ以外にも、マニュアルには、自治体の対処の必要性を書いてございます。そもそも危機管理室に問題認識がないかわかる。これだけ抜け穴だらけだと私は考えているんですね。庁内全体の役割分担をしっかり定めていただかないと困ります。全体の調整をどう果たしていただけるのか、その点、お答えください。
あと、清掃・リサイクルについても伺います。業界団体との協定締結の準備を進めているということなんですけれども、なお検討中ということです。どのような団体と、どのような内容で、一体いつになったら締結が終わるのかお示しください。
◎澤谷 危機管理室長
再質問にお答え申し上げます。
災害時におけますアスベスト飛散防止に係る工程におきましては、平常時における準備から、応急危険度判定等による応急措置、解体、収集、運搬、一時保管、中間処理、最終処分と、複数の所管が関係機関と連携して対応することになります。災対統括部であります危機管理室としましては、応急危険度判定の対応や瓦れき処理においては、それぞれの所管から答弁をさせていただいたとおり、関係機関との調整など課題があるものと認識しております。
現在作業を進めております世田谷区地域防災計画の修正においては、応急危険度判定の際には、災害時における石綿飛散防止に係る取扱いマニュアルを参考にして、アスベスト飛散の防止に配慮すること、また、瓦れき処理においては、二十三区清掃一部事務組合とともに、都や業界団体と連携して処理に取り組むことなど、新たに記載する予定です。今後も、御指摘いただいた課題を初めとしました災害時のアスベスト飛散防止対策の検討状況に応じて、庁内で役割分担や横断的な課題に対する調整をしまして、検討内容を地域防災計画や震災時初動期職員行動マニュアル等に反映してまいります。以上です。
◎松下 清掃・リサイクル部長
協力協定の締結準備状況についてのお尋ねをいただきました。現在、し尿や瓦れきに関しての収集運搬処理に関して複数の準備を進めておりますが、そのうち瓦れきに関しまして、収集運搬について、現在、都内の三つの団体、具体には建設業、一般廃棄物、産業廃棄物処理業の団体でございますが、こうしたところとの準備を進めております。また、災害廃棄物の撤去、処理、処分に関しましては、都内の産業廃棄物処理業の団体との協定締結に向けた準備を進めております。
現在の状況でございますが、昨年度にこれらの団体との協議を行い、協定書案文の提示などを行っておりまして、今年度に入りましてから、二十三区に対して協定書の案文の内容確認をいただいているところでございますが、今後、二十三区の対応窓口、また、費用の支払い方法等、詳細にわたっての課題整理が必要でございます。こういった作業を協定締結に向けて早急に進めまして、できるだけ早い時期に協定締結を行いたいと考えております。以上でございます。
◆上川あや
それぞれ速やかな改善を求めます。終わります。