◆上川あや

先月九日の台風十八号への区の対処の不備について問いたいと思います。

まず、水害対策です。今から七年前の台風九号から振り返ります。二〇〇八年九月六日、時の台風九号が関東を直撃し、多摩川は氾濫危険水位を超える大出水になりました。区長は、二十三区で唯一、堤防に守られていない住宅街、玉川一・三丁目の一角、七百四十世帯、千四百九十人に避難勧告を出しましたが、避難者はたった六人という大失態、避難率にして〇・四%でした。しかも、最初に濁流にのまれる河川敷一帯に避難勧告は出さずに、ホームレスは見殺しとなりました。区内で流された方のお一人は、安否不明のままとなりました。
台風の直撃はあらかじめ予想されておりましたし、上流の小河内ダムの放流もあらかじめ知らされておりましたので、お隣大田区では台風が直撃する前日夕方から区の職員がホームレスを一軒一軒訪ねて避難を呼びかけました。また、放流後も避難所を開き、行き場のない方々を保護しています。ところが、当区は、今述べたとおりの見殺しでした。直後に開かれた区議会で私はかんかんになって怒りました。すぐに対策を見直すように求め、その結果、区は二カ所の待避所を設定し、今後は待避をきちんと呼びかけるとしましたが、今回の台風でこの教訓が生かされることはありませんでした。
小河内ダムの放流は十二時からスタートをし、その二十分後、私は災対課長のお席にお電話を入れております。ホームレスの退避を求めました。この段階で、ダムは順次放水量をふやす計画を具体的に明らかにしており、河川敷の危険も明らかでした。その日の午後五時のニュースは、多摩川が氾濫寸前という字幕で、兵庫島に渡る兵庫橋の冠水と、それよりもっと低い河川敷一帯が川と化した濁流の様子を中継で流しています。ところが、砧支所からの報告では、ホームレスに退避が呼びかけられたのは午後五時過ぎ、地元町会の方々が、河川敷にホームレスが四人いると区に通報して、初めて区から避難所の設営が知らされて、住民の方が知らせたんです。玉川地区でも区の職員が退避を呼びかけましたが、その時刻も午後四時過ぎと遅く、退避先の開設もなく、ただ退去をさせただけ。避難誘導が遅過ぎますし、避難誘導と待避所開設は必ずセットであるべきだと考えます。区の見解を伺います。

◎有馬 災害対策課長

区では、平成十九年の台風第九号を踏まえ、多摩川河川敷のホームレスの方への対応について速やかに再検討し、一時退避場所二カ所を設定するとともに、チラシやハンドマイクを活用した退去の呼びかけを行うことといたしました。
砧・玉川総合支所で実施内容をマニュアル化し、その後の台風の接近時にはマニュアルを基本に対応しております。先月九日の対応につきましては、砧では、成城消防署と連携して退去の呼びかけを行い、一時退避場所を開設し、地元町会の協力も得ながら三名の方を受け入れました。玉川では、一時退避場所の開設できる状況を整えた上で呼びかけを行ったところ、自主的かつ速やかに避難を開始されたことから、結果として、今回は一時退避場所への避難は行わなかったと聞いております。今回は、両支所がマニュアルに沿って適切に対応できたと認識しておりますが、初動が遅いという御指摘につきましては、河川敷からの避難誘導という観点から、動き出しのタイミングについて、改めて総合支所と連携しながら検証してまいります。
なお、小河内ダムの放流情報につきましては、危機管理室から庁内への共有において時間が経過した点につきましては、次回以降適切に対応してまいりたいと考えております。

◆上川あや

タイミングが遅過ぎますので、マニュアルごと改めてください。

◆上川あや

続いて、土砂災害対策です。
今回の豪雨で気象庁は、目黒、大田、品川、板橋の四区に土砂災害警戒情報を出しました。その結果、大田区、品川区は急傾斜地の三千百世帯余りに早速避難勧告を出しました。世田谷区の地盤の含水率は幸い隣接の二区よりも若干低く観測をされ、土砂災害警戒情報が出ることはありませんでしたが、当区の対応が万全だったとは言えないと考えています。
当区と同様に、区内に多くの急傾斜地を抱える港区、文京区では、今回、土砂災害警戒情報が出ていないにもかかわらず、避難勧告の一方手前、避難準備情報を急傾斜地に対し出しています。一方、当区で準備情報を出す判断基準は曖昧で、今回も非常に迷ったと確認をしています。しかも、当区で問題だと思うのは、過去、気象庁から土砂災害警戒情報を出されたときですら、避難勧告はおろか、準備情報さえ出したことがないという点です。昨年十月六日、当区に土砂災害警戒情報が出された際も、避難準備情報さえ出されませんでした。港区、品川区、練馬区の土砂災害対策の基準をチェックしますと、大雨警報が出た時点で避難準備情報はしっかり出されることになっています。世田谷区の対応は遅過ぎると考えますが、いかがでしょうか。

◎有馬 災害対策課長

御指摘のとおり、昨年十月に土砂災害警戒情報が発表された際、都や気象庁からの情報等を踏まえまして避難準備情報を発表しませんでした。昨年は、判断基準の作成に着手した段階でしたが、現在では、庁内で訓練も行いながら検討を進め、現段階では、都または気象庁から土砂災害警戒情報発表の可能性が示唆された場合に避難準備情報を、土砂災害警戒情報が発表され引き続き降雨が見込まれる場合に避難勧告を発表することとしております。
今回のケースは、副区長をトップとした水防本部会議を適宜開催し、その結果、土砂災害警戒情報が発表された場合は即座に避難準備情報を発するということで準備しておりました。この方針に基づき、総合支所とともに避難勧告も視野に準備を進めましたが、結果として、土砂災害警戒情報は発表されず、避難準備情報の発令は行いませんでした。
区では、当該地域の区民等へ土砂災害に関するチラシを配布するとともに、国のガイドラインや他区の状況を勘案しながら判断基準の作成を進めてまいります。

◆上川あや

最後に、避難等の呼びかけ方についても伺います。
さきの本会議でも、防災無線塔が聞こえない地域があるという指摘が他会派からございました。区は、ホームページ、災害防犯メール、ツイッターなど多様な手段で呼びかけると答弁をしておりましたが、なぜそこに重要なツール、伝わるツール、エリアメールが出てこないのかが不思議でした。エリアメールであれば、幹線道路沿いでも、繁華街でも、風雨が強くても、室内にいても、あるいは耳が聞こえない方に対しても確実にメッセージが手元に届きます。港区では、今回の避難準備情報でも積極的に使われました。世田谷ではいまだどういうときに使うのかの整理もついていないそうですが、もう一歩、しっかりとした検討を進めていただきたく考えます。区の見解を伺います。

◎有馬 災害対策課長

エリアメール、緊急速報メールとも言いますが、その利用規約では、避難準備情報発表も利用可能とされております。
区では、避難準備情報について、対象エリアが局所的である場合や深夜に及ぶ場合など、その都度判断し、実施する必要がありますが、緊急速報メールを活用する方向で検討してまいります。

◆上川あや

速やかに改善をしていただきたいと思います。
九月二十八日に危機管理室がまとめました台風や大雨による土砂災害に対するチラシの配布というものがありますが、対象世帯四千四百十六世帯、九千六十七人、一万人の命がかかっているんですね。緊張感を持って速やかにやっていただかないと本当に困るということを重ねて申し上げまして、私の質疑を終わります。