◆上川あや
通告に基づき質問します。
初めに、犯罪被害者への支援について伺います。まず、当区の対応がいかに空疎であるのかから述べたいと思います。
国と自治体の支援する責務を定めた犯罪被害者等基本法の施行からことしで十年です。本年六月に閣議決定された犯罪被害者白書では、犯罪被害者に対する自治体の総合的な相談窓口の開設は、既に全国の自治体の九割に、都内では全体に広がったとされています。ところが、専門家からは、実際には機能しない窓口が多いとの指摘が絶えることがありません。
当区も例外ではありません。区のホームページから犯罪被害者というキーワードで検索をしても、区そのものの相談窓口はヒットせず、その連絡手段すらわかりません。そこにあるのは外部機関へのリンクだけ。犯罪に遭われた方の御相談は、被害者支援都民センターのウェブリンクへ、心の悩み相談も、警視庁の犯罪被害者ホットラインのウェブリンクへとつなぐだけ。つまりは全て外部への丸投げです。
区は、二十三年度より庁内連絡会を立ち上げたといいます。しかし、こちらも全くの空手形です。会議資料を取り寄せてみれば、都からおろされた情報を年に一回共有する程度。相互にどれだけ相談事例があるのかの情報共有すらされていず、相談件数の把握もゼロ件です。結局こちらも、切れ目のない支援策がさもありそうに見せるおためごかしにすぎません。二〇〇五年に施行された犯罪被害者等基本法は、国と自治体に対し、被害者の相談を受けた上で、給付金支給、公営住宅への優先入居、医療サービスの提供などを実施し、被害者やその家族、遺族を支援しなければならないと定めています。内閣府の調査によれば、昨年四月現在、日常生活支援や住居の提供などを含む犯罪被害者支援の条例制定は秋田、神奈川、京都など都道府県の約半数、二十四府県に、また杉並区、兵庫県明石市など、全国の五分の一以上の市町村、三百六十三市区町村へと広がっています。さらに見舞金制度の運用も九十八市町村で、貸付金制度の運用も二県、七市区町で行われています。
しかるに、当区独自でやっていることといえば、犯罪被害者週間に合わせた映画の上映会がある程度。既存の弁護士相談、消費者相談が役立つケースもあるとはいえ、独自の支援策はありません。これでは何もやっていないに等しいと言わざるを得ません。
昨年夏、犯罪被害者団体ネットワークハートバンド、全国犯罪被害者の会あすの会会員、大学教授や自治体の職員らから成る被害者が創る条例研究会が、犯罪被害を経験した立場からの基本条例案を作成、公表し、全国の自治体に関連条例の制定を呼びかけました。
そこでは、犯罪被害者らの相談に応じ、秘密の保持や安全確保に配慮した上で総合的に支援を行う窓口の開設、見舞金の給付や貸し付けなどの経済支援、公営住宅の活用など転居への支援策、病院への付き添い、送迎、家事、育児、介護を支援するための援助者派遣、さらには、被害者らが警察や検察に出頭したり、公判に出席したりするための情報提供や付き添いの支援などが求められておりますが、区で実施しているものはこのうち何一つありません。
既に杉並区、中野区では、それらの多くが実施に移されており、今年度の中野区の関連予算は二百七十一万円、杉並区も二百十九万九千円。これに対し世田谷区の予算は、映画会を除けばゼロ円です。職員体制も、中野区では三名、杉並区では二名、世田谷区は担当者不在です。都内最大の町、ここ世田谷区で、これでよいはずがありません。そこで伺います。まず、当区も条例制定を視野に総合的な対策を講じるべきと考えます。区の見解を伺います。
その上で、たらい回しではない自前の相談窓口の創設と明示、主要な生計維持者を失った御家族などへの経済支援、御自宅がまさに犯罪現場になってしまったり、犯人が捕まっておらず、家にとどまれば明白な危険がある場合の居宅支援、家族を失い、また心身の健康を損ない、日常生活や育児が立ち行かなくなった御家族への援助者の派遣、犯罪被害者がふなれな警察、検察などへの同行支援のそれぞれについて、区としての実施を求めます。見解を伺います。
◎齋藤 生活文化部長
犯罪被害者の支援に関連し、まず、条例の制定など総合的な対策についてでございます。
犯罪被害者への総合的な支援は、人権・男女共同参画担当課が窓口となって、関係所管及び関係機関と連携することによって取り組むとされております。しかしながら、御指摘の区のホームページから区の担当窓口がわかりづらいといった御指摘につきましては、区民にわかりやすい案内とするため早急に改善を図ってまいります。
また、区では、犯罪被害者が必要な手続に来られた際に切れ目のない支援となるよう、関係所管による犯罪被害者等支援連絡会を設置し、犯罪被害者支援の手引を作成、活用することにより情報の共有化を図るなど、体制づくりに取り組んでおります。
お話しの条例制定等総合的な対策につきましては、他の自治体の取り組みなどを注視し、まずは情報収集を行うなど、研究に努めてまいります。また、庁内の連携強化や啓発事業を通して犯罪被害者の方々の立場に寄り添った支援となるよう、国や東京都、警察及び関係機関等とも一層連携し、適切な支援に努めてまいります。続きまして、個々の個別の支援策についてでございます。御案内する窓口に関しましては、先ほども申し上げました人権・男女共同参画担当課が全体調整役となる一方、御指摘の経済支援、居住の支援策、援助者の派遣などにつきましては、まずは区の既存のサービスによってそれぞれの犯罪被害者の方々の状況に応じて御相談に応じることとしております。また、警察、検察への同行支援につきましては、公益財団法人被害者支援都民センターへの橋渡しをするなどにより、支援を行うこととしております。
御指摘の具体的な支援策につきましては、区が作成する犯罪被害者支援の手引の中で各種支援制度として整理をしておりますが、御指摘の制度的な担保も含め、さらに犯罪被害者支援としての有効性を持たせるため、早々に窓口を持つ関係所管課と検討してまいります。
いずれにいたしましても、御質問の趣旨を踏まえ、犯罪被害者の方々への支援のありようは犯罪の内容、被害者の状況によって異なり、どのような支援が適切なのか等、先行する他自治体の状況等の把握に努めながら、区の制度の活用策の検証や区民の方々にわかりやすい周知方法を検討し、身近な自治体としてより一層犯罪被害者の方に寄り添ったきめ細やかな支援となるよう努力してまいります。
以上でございます。
◆上川あや
犯罪被害者対策について再質問です。
私が求めた経済支援、転居への支援、援助者の派遣についてですが、応急小口資金の条例施行規則を見ても、対象者の列挙に犯罪被害者がありません。つまり、サポートセンターの二つの支援事業も、対象は高齢者、障害者、ひとり親しかありません。ファミリー・サポート・センターの事業もしかりです。使える制度なんてどこにあるんですか。区長はこれを改善するつもりがないんですか。区長にも見解を求めます。
◎保坂 区長
再質問にお答えをします。
まず、個々の具体的なサービスについて、利用可能性については生活文化部長から答えてもらいますけれども、基本的に私は、十五、六年前だと思いますが、世田谷通りで片山隼君という小学生が亡くなったひき逃げ事件、このときに不起訴になったわけですが、そのお父さん、お母さんが検察庁に行ったときに、親だということで求めても、不起訴の理由も全く見せてもらえなかった。このことに対して取り組んで、また、ストーカー殺人事件が桶川でございました。犯罪被害者支援ということをかつて議論してきた立場ということで考えると、今生活文化部長が答弁しましたけれども、仮にAさんという犯罪被害者の方が世田谷区役所の、たくさん窓口があります。あるいは総合支所もある。どこかに行かれたときに、どのような対応が今できるのか。あるいは、人権・男女の担当課が窓口であるということをきちんとガイドできるのかどうかも検証していきたいと思います。
その上で、これから所管課とともにそれぞれのサービスについてどのようなレベルにあるのかと。つまり、公営住宅等の入居支援などについて配慮がされているかどうかも直ちに検証したいと思います。
世田谷一家殺害事件はまだ未解決の事件ですが、平成二十四年に犯罪被害者週間で、隣の家にお住まいだった入江杏さん、ペンネームですが、お話を聞き、その中でグリーフサポートの重要性など、空き家活用事業で始まっております。グリーフサポートも一つの重要な支援の場だと思います。
また、十二月十七日に再びこの世田谷一家殺害事件の当事者遺族である入江さんのお話も伺いますので、一つのメルクマールとして取り組みを強めたいと思います。
個々については生活文化部長から。
◎齋藤 生活文化部長
犯罪被害者の支援について、再質問にお答えいたします。
平和な生活をされていた方が、突然不慮の事故、事件に遭われて、大変精神的にも肉体的にもショックを受けて、もとの生活に戻ることの大変さ、そこら辺は大変我々区としてもサポートする必要があるというふうに認識しております。
先ほどの御質問の中に、例えば区がどんなサービスがあるのかホームページを見てもよくわからないと、それはきちんと、ちゃんと案内すべきではないかということはそのとおりでございまして、我々としても早急にわかりやすく示せるように、まずはホームページの改善を早急に行っていきたいということと、それから、個々の支援策を御指摘されました。中には経済支援、居住の支援策、援助者の派遣、それから同行支援がありますけれども、例えば、ちょっと例を挙げさせていただきますと、総合支所の生活支援課のところで先ほど御指摘のありました応急小口の資金の援助がありますけれども、まずは、窓口に来られた犯罪被害者の方のお話とか状況をじっくり聞いて、その方に合う援助は何かということをきちんと対応させていただきたいと思います。もし小口の貸付金に合わなくても、ほかにも何種類か貸し付けの制度がございますので、合うものがあれば、適正なものがあればそれを御案内いたしますし、また、それから援助者の派遣という件を御指摘されましたけれども、その方の状況によって、例えば家事のヘルパーさんが必要なのか、それから小さいお子さんがいらっしゃる場合はベビーシッターが必要なのか、それからあと、特定の時間を限ってファミリーサポート的な支援が必要なのかという、やはりそれぞれの状況に応じた対応というのが必要になりますので、たとえ制度的な担保がないという御指摘でしたけれども、それでありましても、きちんとその状況に対応していくとして対応はさせていただきますので、身近な自治体といたしましてきめ細かく対応していくことには間違いございません。
今回いろいろ御指摘を受けましたので、これをもとに一層区民の方にわかりやすい制度になるように改善していきたいと思っておりますし、また、たまたまですけれども、この秋に連絡会を開催する予定でおりますので、今回の件をきちんと話に出しまして、もう少し踏み込んだ対応を検討させていただきたいと思います。
以上でございます。
◆上川あや
決算質疑で続きを行います。終わります。