◆上川あや
区立大蔵運動公園内に現存する大規模な防空ごうについて伺います。
昨年十月の決算質疑で、区立大蔵運動公園内にある鳥居とほこら、また、そこで例年神職を呼んで行われている祭祀が、憲法の定める政教分離原則に違反しないかどうかを伺いました。その際、同公園にある史跡を調べておりまして、区教委からいただいた資料に大変興味深い記述がございました。同公園の地下には、今なお大規模な防空ごうが残されているということです。該当部分を読み上げます。
幅一・五メートル、高さ一・八メートルで、内部は、ほぼ空洞の地下通路の存在が国立大蔵病院取り壊しの際に明らかとなった。これらは東京都砧公園事務所が予算配分を受け、昭和十九年に造営した横穴式防空ごうの一部で、成育医療センターの建設により埋め戻されたが、通路は南側の国分寺崖線方向に延びており、崖線に開口(三カ所)している。開口部は閉ざされているが、通路は空洞のままで区立総合運動場陸上競技場の地下に存在しているらしい。電探調査結果報告ありとありまして、脚注には総延長六百メートルと書かれておりました。
さらに先週、同資料に書かれていた電探調査の結果報告を区教委に求めましたところ、出てきましたのがこの二冊の分厚い資料です。タイトルはいずれも、大蔵運動公園内の旧陸軍病院・防空壕等にかかる、地形・地質調査報告書というもので、一つは、八二年暮れから翌年春にかけて行われたボーリングと地震波と電気抵抗の三つの調査の記録で、もう一つは、さらにその翌年、内部にカメラを差し込んで行われた撮影の記録です。いずれも崖線のへりのそばのごうの入り口付近のテニスコート周辺だけが調査対象でした。
これらを見ると、三カ所あったごうの出入り口の場所が特定されまして、そこから延びてゆくごうの方向性もざっくりとではありますが確認をされ、場所によっては公園の地下五メートルの深さでその存在が確認をされ、さらに電気抵抗調査の結果からは、経年変化による空洞周辺地盤の水分上昇と、地耐力の低下と書いていました。つまり荷重に耐えられる力の低下が推察され、懸念されているということが書かれておりました。そして、報告書は、今後はごう全体の分布を明らかにするとともに、ごう周辺部の土質調査も必要であろうの言葉で結ばれております。
そこで、まず伺いますが、この結びの部分で必要性が指摘をされたごう全体の分布の調査と土質調査は行われたのでしょうか。
◎大橋 公園緑地課長
ただいま委員から御説明のありました報告書ですが、昭和五十七年度及び五十八年度に当時の教育委員会が調査したもので、その内容については把握しております。この調査によりますと、国分寺崖線の斜面地の入り口から防空ごうが始まり、公園内に延びているという推察をしておりますが、園内は車両の荷重がかからない箇所であることから、陥没等のおそれはないと判断し、現在に至っております。また、一部車両の往来のある区道部分や、それ以外の場所において、発泡モルタルなどによる埋め戻しを行ってきていることから、これまで防空ごう全体の分布調査や土質調査を特に行ってきておりません。
◆上川あや
二〇〇八年に結審をした鹿児島県鹿屋市の防空ごうの上を通る県道の陥没による死亡事故をめぐる裁判では、防空ごうの占有者として管理責任を負うとして国の責任を認め、また、防空ごうが存在したのを知りながら管理を怠ったとして県の責任を認め、合わせて五千六百万円の賠償が命じられました。これで結審をしています。
ごうの建設から三十八年後の調査時点で既に地耐力の低下が指摘されていた大蔵運動公園のごうは、この調査からもう三十三年経過しました。テニスコートのすぐ脇のボーリング調査では深さ五メートルでごうの位置が確認をされており、課長にきのう伺ったところ、実際テニスコートの地盤が下がったことが一度あって改修工事をしたということを聞きましたので、危険性がないなんてとても私は言えないと思っているんです。公園全体としてどこに防空ごうがあるのかわかってもいないのに万全な管理ができていると言えるのかどうかということを私は非常に疑問に思うんですけれども、もう一度御答弁いただけますか。
◎大橋 公園緑地課長
現段階では、防空ごう全体の分布の深さ、地盤状況等の詳細は把握しておりませんので、公園管理上どの程度支障になるかを定性的に示すことはできませんが、今後、公園施設の再整備の機会などを捉えて全体の調査を行い、それらについてしっかりと分析してまいりたいと考えております。
◆上川あや
先ほど三十三年前の調査を御紹介したんですが、これは危険予防だけが目的の調査ではなくて、近代戦争史をこの町がどういうふうに引きずってきたのかを証明する文化財としての保全も視野に入れた調査ということでしたので、この点も踏まえてしっかりと調査をしていただかなければいけないんですけれども、この点はいかがですか。
◎大橋 公園緑地課長
いずれにいたしましても、詳細な調査を実施し、防空ごうの埋め戻しがどの範囲まで必要なのかを判断した後に、戦争の遺構として部分的に防空ごうが残せるか否かについて、関係所管と調整して、検討してまいりたいと考えてございます。
◆上川あや
国土交通省に確認をしたところ、特殊地下壕対策事業というものが現在まだありました。ただ、お話を伺うと、平成二十八年度まで採択されたものということで、二分の一の補助率で、地方公共団体の負担分のうち八割については交付税が措置をされるということで、実質負担一割なんだそうです。ただ、これは期限が切られていますので、悠長にやっている場合ではないですし、利用者の安全もかかっていますので、しっかりやっていただきたいというふうに思っております。
あともう一つです。防空ごう関係で教育委員会と総務部がまとめたデータを見たんですけれども、例えば成城四丁目の不動坂、また、成城の一、二丁目境の病院坂にも防空ごうが以前確認されているんですが、現況については不明となっているんです。危険があるかどうか、防空ごうの位置を確認しているのに不明の状態というのはどういうことかなと、都市整備の方々にはしっかり考えていただきたいと思っています。とにかく安全を保つこと、そして戦争の歴史をしっかりと伝えていく努力を改めて求めて、私の質疑を終わります。