◆上川あや
初めに、当区の裁判員制度参加者への支援が皆無であることについて伺います。
まず、最高裁公表のデータから裁判員の負担を見てまいります。裁判員制度の施行から今月二十一日で五年半が経過しました。ことし三月末までに四万九千四百三十四人の市民が裁判員や補充裁判員を経験し、六千三百九十六人に判決を言い渡しました。ことしの第一・四半期、判決があった事件の審理日数は平均九・三日で、制度が始まった二〇〇九年の三・七日から約二・五倍へと延びました。この間、証人数の平均も一・六人から三・四人に、評議時間の平均も六時間三十七分から十二時間二十三分へと倍増しています。また、死刑が求刑された事件の評議時間は、五年間の平均で実に三十時間四十五分に達しました。
こうした負担増を敬遠し、裁判員候補者に選ばれたものの辞退する割合、辞退率もまたふえています。裁判員制度の始まった〇九年、その割合は五三%でしたが、ことしは九月末時点で六三・九%に達しました。こうした状況下、裁判員の負担を軽減する行政の工夫や努力はなお一層求められていると言えますが、当区の支援策は皆無、都内でも最低レベルです。
例えば介護が必要な高齢者、障害者と、それを介護する御家族への区の対応を見てみましょう。
当区では、高齢者等への介護保険サービスも障害者福祉サービスも制度運用には一切手をつけず、利用上限月額やサービス支給量の上限枠もそのまま、裁判員となり介護の手が足りなくなろうと別枠は一切認めません。利用上限の範囲内で一割の自己負担はもちろん払っていただくし、その枠を超えれば全額が自己負担です。減免は一切ありません。乳幼児の保護者に対しても同様です。区立保育園全園で一時保育の対象とはなりますが、その料金はしっかりいただくし、減免は一切認めないという貧しさです。一方、中央区や文京区では、要介護高齢者、障害者御本人が裁判員になる場合でも、裁判所に赴く外出介助、移動支援は時間制限なく無料で提供されます。当人を介護する御家族に対しても、居宅介護、短期保護等が時間制限なく無料提供されます。乳幼児等の保護者に対しても、必要な一時保育は時間制限なく無料提供されます。これら充実した支援で介護、子育てにかかわる方々はもちろん、要介護高齢者や障害者御自身も裁判員になりやすい制度的基盤が整えられています。
これらを含め、都内では何らかの助成、減免制度を持つ区が十七区に広がります。負担軽減策を一切持たぬ区は、当区を含め六区しか残らず、当区の無策は明らかです。これだけ無配慮でありながら、当区の職員が裁判員になれば日数制限なく有給休暇を認められるというのですから驚きます。何という待遇の格差でしょうか。当区も中央区、文京区などと同等に区民に対する支援策を充実させるべきと考えますがいかがか、区の見解を伺います。
◎田中 高齢福祉部長
私からは、裁判員制度に参加する要介護高齢者、障害者本人や、介護者、乳幼児の保護者などへの支援について御答弁いたします。
裁判員制度は、国民が裁判に参加することによって裁判の内容や手続に国民の視点や感覚が反映され、司法に対する理解が深まり、信頼が高まることを期待して、平成二十一年度から始まっております。裁判員に選任された方へは、裁判の一カ月半前までに日程の連絡があり、裁判自体は三日程度で終わることが多いと説明されておりますが、選任手続などを含め数日から一週間程度を要するようでございます。
現在、高齢者や障害者とその介護者、またお子さんの養育を担っておられる方が裁判員として参加される場合には、地方裁判所で行っている近隣保育所の紹介やガイドヘルパー、手話通訳の手配などの支援のほか、介護保険や障害福祉、緊急保育などのサービスを御利用いただくことが可能でございます。
区民の皆様に安心して裁判員制度に参加していただくためには、こうした裁判の利用についてさらなる周知を図ることに加え、議員御指摘のとおり、自己負担への配慮など区としての支援策が必要であると認識しております。
今後、地方裁判所や他区の支援策について内容や具体的な手法などを改めて調査を行った上で、対象とするサービスの種類や利用方法、支援の対象者、PR方法等を具体的に検討してまいります。
以上でございます。