◆上川あや

続きまして、区の施設と政教分離の原則について伺います。

最高裁で過去に政教分離に関し出た違憲判決は二つありました。一つ目は、九七年のいわゆる愛媛玉串料訴訟、二つ目に、二〇一〇年一月のいわゆる砂川政教分離訴訟というものです。砂川政教分離訴訟の最高裁判決には、実は合憲と違憲の二つがありました。といいますのも、この裁判には北海道砂川市が無償で土地を提供した二つの神社が絡んでいたからです。合憲とされた前者は、神社が鎮座する土地の所有権を市が神社側に無償譲渡したもので、譲渡は、公有地に神社が鎮座するという違憲状態の解消に向けた行為と判断されて合憲となりました。一方で後者は、市が町内会に無償で貸し付けた土地に鳥居と集会所、さらには集会所内にほこらが建てられて、その状態を放置したことを特定の宗教に市が便宜を図っていると一般人の目から見て判断されてもやむを得ないとされて違憲とされました。

一枚目のパネルなんですけれども、これは区立公園内に建っている鳥居を写したものです。


弁財天 ※クリックすると拡大します

弁財天

この一月、新たに地域風景資産にも認められた石井戸の愛宕山、別名大蔵の愛宕山とも呼ばれるスポットで、区立大蔵運動公園の西の端の国分寺崖線の下にあるスポットです。鳥居の奥には水の神様、弁財天のほこらが二つ祭られ、さらにその奥には山岳信仰で知られる御岳山から勧請された、その名もミタケサンと呼ばれるほこらが建っています。
この地に参りますと、ほこらには榊にお供えのお酒、また、さい銭箱までもが設けられていて、信仰が今に息づいていると感じます。また、毎年二月、実際、御岳山から神職である御師の方を招くなどしてミタマガエという神事も行われているそうです。
こうした地域の文化はぜひ大切にしていただきたいんですが、一方で気になるのがさきに紹介した違憲判決です。
同判決に照らせば、こうした状態での放置には違憲の疑いも出てくるのではないでしょうか。信仰の自由をぜひ守っていただきたいということと、政教分離を同時に満たしていただくためには、区がこの土地を氏子さん側に無償で譲渡する、あるいは有償で貸与するなどの対策が必要ではないのかなと思うんですけれども、いかがなんでしょう。

◎大橋 公園緑地課長

区立大蔵運動公園の西側部分の用地でございますが、都市計画公園拡張用地として昭和四十一年に東京都より譲渡を受けた土地でございます。委員からの御指摘等につきましては昭和四十一年以前からこの土地にあったものであり、現在、地元住民の有志によりまして年二回の清掃とお参りが行われていると聞いてございます。確かに現地にはさまざまな史跡等が現存してはおりますが、このような地元の住民活動の状況等から判断しますと宗教性も薄く、公園を管理する所管といたしましては適正に管理を行ってまいります。

◆上川あや

適正に管理を行ってまいりますというんですけれども、違憲の疑いを払拭し切れずに放置しているから適否を欠くと言っているんです。鳥居とほこらと氏子の三点セットがある以上、これは宗教施設に違いないと思うんですけれども、違憲性を払拭し切れるんですか、部長、答えてください。

◎男鹿 みどりとみず政策担当部長

私も大蔵運動公園の管理事務所に二年ぐらいいまして、ちょうどそこの前の橋については私が設計して監督したもので、現地には相当行っていると。やっぱりその状況の中で、私としては宗教性の感じは余り感じられなかったということで、地元有志の方々が宗教団体とは思えず、宗教性が薄いということから違憲であるとは思っておりません。

◆上川あや

今のは部長の私見ですよね。

時間がないので次に参りますけれども、二つ目のパネルに移ります。


瘡守(かさもり)稲荷神社 ※クリックすると拡大します

瘡守(かさもり)稲荷神社

これは、瀬田四丁目にある瘡守稲荷神社の写真です。神社の写真なんですが、御注意いただきたいのはこの左側なんです。左側に公園管理事務所の看板が立っていて、「かさ守稲荷広場」と書かれています。調べますと、この神社は江戸時代の創建で、性病や皮膚病に御利益があるとされて立派な鳥居が三本建っていますし、狛犬が二基、手水鉢と、奥には立派な社殿が建っています。
どういうことなのかといいますと、この施設は世田谷城址公園がそうであるように、民地の借り入れでつくられた区の公園施設の一環ということなんです。今回、所管部から境内借り入れの契約書も見せていただきましたが、参道の敷石部分、通りはそのまま抜かれておりますし、社殿そのものの土地も借り入れ契約から除かれていますが、三つの鳥居も手水鉢も狛犬も公園の中に建っております。戦後、政教分離の原則によって境内地につくられた浅草公園は消滅しているんです。こういう境内をくぐらなきゃ公園に入れないというのは適正なんでしょうか。

◎大橋 公園緑地課長

委員から説明のありましたかさ守稲荷広場を初め、区内には神社の敷地を借りた広場が合計七カ所ございます。いずれにいたしましても、戦後の公園不足により児童遊園として設置し、今現在管理しているものでございます。
土地につきましては神社から無償で借用しており、借用に当たりましては、借用部分を神社が所有します施設等の占有する部分を除いてございます。また、施設等の維持管理も神社が行っていることから、現在の区の管理に特に問題があるとは考えてございません。

◆上川あや

違憲か合憲かしっかりチェックするようにお願いして、私の質問を終わります。