◆上川あや

続いて、同性パートナーの権利、尊厳の回復に向けてと題して伺います。

昨年六月二十六日、アメリカ連邦最高裁は、結婚は男女に限るとしてきた連邦法の結婚防衛法を、法のもとの平等を定めた憲法に違反すると断じ、その無効を宣言しました。これを機に、連邦政府は同性同士の婚姻を公に認め、その権利を異性間の婚姻と同等に扱う方針を示しています。現在、同政府は婚姻で得られる法的権利について、全法令の見直し作業を進めておりますが、連邦会計検査院が公表したデータによると、結婚状態にあることを前提に得られる法的権利を定めた連邦法は、二〇〇四年時点で実に千百三十八件に上り、いかに多くの法的権利が同性カップルから奪われてきたかがこの数字からも明らかです。
また、連邦法におけるこうした差別が人々の偏見、差別を下支え、助長する原因ともなってきました。全米ではこの判決を機に、同性カップルの権利の平等をめぐる訴訟が活発化、八十件以上の訴訟が起こされ、十二州で同性婚支持の判決が下っています。同判決から一年半のうちに同性婚を認める州は一気に十州もふえ、今後もこの傾向は続くと見られています。
また、欧州議会も、一九九四年に欧州共同体内における同性愛者の平等な権利に関する決議を可決しています。同決議には、全ての市民は、性的指向にかかわりなく平等な処遇を受けるべきであることを確認すると書かれ、二〇〇二年には同性間パートナーシップの登録に関する法整備がEU全加盟国に勧告されました。現在、同性同士の婚姻を認める国は八カ国、パートナーシップ法など準婚姻制度を持つ国も十カ国に上り、残る加盟国も同性パートナーの円滑な入国、居住を認めるまでになっています。

現在、婚姻に性別を問わない国は、悪名高い人種隔離政策アパルトヘイトを廃止し、新憲法で明確に同性愛者差別を禁じた南アフリカ共和国、南米のアルゼンチン、ブラジル、ウルグアイの三カ国、アジア太平洋のニュージーランドを含め世界十七カ国に上り、準婚姻制度を持つ国はさらに二十カ国前後に上ります。本年七月には、国連が全職員に同性結婚を認めたことが広く報じられました。
先進七カ国、いわゆるG7中、同性同士の婚姻を全く認めない国は日本ただ一国しか残らない状況で、先般、国連の自由権規約委員会からも差別解消を求める勧告が出されました。
こうした中、青森市内に住む女性カップルがこの六月、婚姻届を提出し不受理となったことが報じられました。不受理の理由は、憲法二十四条の婚姻は両性の合意のみに基づいて成立の条文に合致しないためとされましたが、憲法学者の間からは、両性の合意のみの文言は、家長の許可がなければ結婚ができなかった過去の風習に異を唱えたものであり、同性結婚を認めないなどとは全く言っていない。同性の共同生活を法的に保護しても憲法二十四条に違反しないというのが通説との反論が出ています
同性愛者も他の国民と変わらず納税義務を果たし、この町に暮らし、社会に貢献する存在です。性的関心が同性に向かうことは現代医学において異常ではく正常な性のあり方で、WHOも日本の厚生労働省も同じ見解をとっています。性的指向を理由とした婚姻差別というものは不条理であり、当然に平等が保障されるべきと考えます。

そこで以下、区長に問います。
第一に、同性愛者が家族を持つ権利、その社会的承認や諸権利の平等を区長はどのように捉えるでしょうか。彼らは婚姻に伴う全ての権利、保護を生涯剥奪されてしかるべき市民なのでしょうか。
第二に、区としてできることがあるはずです。欧米では、多くの自治体が独自に同性パートナーの登録認証制度を運営し、市内の病院、刑務所での面会権、学校に通う子の情報を同性カップルの両親で得る権利を認める等、さまざまな便宜を図っています。区でも第一歩として同性間パートナーシップの名義的な届け出を受け付ける等、できる方策を検証、検討していただけないでしょうか。あわせて区長の見解を問います。

◎保坂 区長

上川議員にお答えをいたします。

まず、同性パートナーの権利、社会的承認や諸権利の平等についての考えをお尋ねになりました。
世田谷区基本構想では、多様性を認め合い、自分らしく暮らせる地域社会づくりということを掲げております。あらゆる差別や偏見をなくしていく取り組みが重要であると考えています。その実現のためにも、性同一性障害、同性愛者の方々などいわゆる性的マイノリティーに対しての偏見、差別は解消すべきものであり、諸権利の保障という視点からも、議論や制度改革が進められるべきであると認識をしております。
同性間パートナーシップにつきましては、議員御指摘のアメリカやヨーロッパ等海外の動向は、私は必ず日本国内の制度の見直しにつながってくるだろうと認識をしています。同性間のパートナーシップをめぐり、社会的に認知され、差別のない社会を実現していくことを目指したいと私は考えています。このことにつきまして、法整備の課題もあると思いますが、区民に御理解いただくような啓発がまず第一歩として必要ではないかと認識をしております。

次に、そのために自治体としてできることがあるはず、区としてできる方策についてのお尋ねがございました。
同性カップルの存在を区として認める方策を検討できないのかというお尋ねに対して、これまでにも区は、セクシュアルマイノリティーの方々の人権尊重という視点から、例えば申請書類の性別記載事項を削除するなど、改善に取り組んでまいります。
セクシュアルマイノリティーの方々への人権保障と差別をなくすためにも、広くセクシュアルマイノリティーの方々が直面する課題などを理解し、多様性を認め合うことが必要です。区としても、性的指向による差別を払拭するために、さまざまな啓発や理解促進の取り組みを行うことがまずは自治体としての第一歩であると認識をしております。
同性カップルの存在を区として認める方策はないのかと、御提言を頂戴いたしました。
基本構想、そしてさらに具体的にセクシュアルマイノリティーの差別の解消ということをうたった基本計画の内容を具体的に実現するために、自治体としてどのような取り組みが必要なのかという観点から、所管部には国内外の自治体の取り組み事例などを調査、参照して、研究、検討するように指示し、対応を立てていきたいと考えております。