◆上川あや

本会議に続きまして、区の動画広報から手話、字幕など、聴覚障害者への配慮が抜け落ちてきた課題について伺います。答弁に納得ができませんでしたので、再質問いたします。

区はまず、現在、手話も十分な字幕もないテレビ放送の改善について、平成二十五年度制作よりテロップをつけることで改善してまいりますとお答えになりました。また、手話も字幕もないインターネット配信についても、自動字幕起こし機能への対応について調査し、きちんと対応できるよう検討してまいりますと答えました。つまり、あくまでも文字情報で補えると考えているわけです。
しかし、京都外語大学で聴覚障害児の読み書き能力の向上について研究している河野美抄子氏は、論文の中で次のように述べています。聴覚障害児は聞こえにくさのせいで、音声コミュニケーションの機会そのものが少なく、あるいは質的に貧弱になり、言語の蓄積が十分ではなく、語彙や表現の問題や文法の問題を抱えるようになる。これがひいては認知や思考の発達といった点に影響し、三次的障害としての言語能力、思考能力の問題となっていく。語彙の少なさや偏り、文法操作能力の低さが書き言葉の習得をおくらせ、リテラシーの基礎が確立せず、思考の道具としての言語の役割をうまく持たせることができなくなる、これは難聴児の教育についての言葉です。
また、「聴覚障害者の実態知らない裁判官 裁判に手話通訳は不可欠」と題したネット上のインタビューの中で、当時の関東ろう連盟の理事長の野澤氏は、小学校五年ぐらいのレベルで言葉がとまってしまうことが耳の聞こえない人には多いとし、抽象的な思考力が育たないことが多いと、こちらはまた、聾者の日本語習得の難しさを指摘していました。
二〇一一年に改正されました障害者基本法では、手話は明確に言語だと規定をされました。第一言語は手話で、日本語の読み書きは苦手という方も多いのに、なぜ区は字幕を強いるのでしょうか。映像にはやはり手話も入れていくべきだと考えますが、いかがでしょうか。

◎小澤 広報広聴課長

動画広報は、これまでテレビ放映を主体として考えまして、広く行政情報を発信してまいりましたが、インターネットの動画配信サービスが広がりまして、また、コンテンツ機能の充実を初め、再生回数により効果の把握が簡便であること、制作経費がテレビ放映と比較して少なく済むことなどから、配信媒体が充実したことを含めまして、平成二十四年度にインターネットを通じて配信する動画に関する基準を定めまして、既存の動画配信サービスを活用して、さまざまな情報を提供しているところでございます。
今お話にありました「魅せます!せたがや」おいても、この考え方をもとに平成二十二年度よりインターネットの配信をするとともに、特別区広報番組として東京MXテレビで放映しておりますが、その際、これまで行っていた手話での対応がなくなりました。大変申しわけございませんでした。聴覚障害のある方が放送内容を御理解いただくということは大変重要であると認識しております。今後制作する「魅せます!せたがや」をテレビで放送する際には、手話を含めまして、聴覚障害者への対応を図ってまいりたいと考えております。

◆上川あや

また、答弁にありました自動字幕起こし機能、ネット配信のほうですが、現状では実用段階になっておらず、何を言っているのかわからないレベルだと、聴覚障害者の方々からは伺っております。ひどい誤訳のために、一時は字幕自動起こしを取り入れていた各省庁も、今ではこれをやめて、コメント欄にテキストを張りつけているところが多いそうです。こちらも見直していただく必要があると考えます。また、手話の挿入も安易に切り捨てるべきでないということも考えております。いかがお考えになりますでしょうか。

◎小澤 広報広聴課長

自動字幕起こし機能ですが、その機能を有効に活用する際には、音源が鮮明であって、また発言録が必要であること、そういったことがこの間の取り組みでわかってまいりました。現在配信している動画に関しまして、音源、そして発言録がそろっているものに対しては対応したところ、動画と字幕が完全に一致していることが確認できております。また一方で、発言録のみを登録した場合は、動画とタイミングが全く一致せずに、非常に見にくい状況であるということも確認できております。
こういった結果を踏まえまして、自動字幕起こし機能の有効活用や説明欄の活用、また、手話の挿入も含めまして、画像の状況、また、その内容により障害のある方にとってどのような手法で配信するのが効果的であるかを引き続き検討してまいりたいと考えております。

◆上川あや

続けて、区の意見提出手続、パブリックコメントについても伺います。

いわゆるパブリックコメント、区民意見提出手続の実施基準第七条には次のような記述が出てきます。意見提出の方法は、氏名、住所を明記し、郵送、ファクシミリ装置による送信、区のホームページからの送信でなければならない。つまり、文字に書き、あるいは入力をして、郵送、ファクシミリ、メールで送信しない限り、パブコメの正式の手続にはならないということです。
さきにお話ししたように、日本語の読み書きが不得手な聴覚障害者は少なくありません。また、文字を書けない、あるいは入力が難しい視覚障害者のことも全く考えていないというのがこのパブコメのルールです。
おととし3月の議会で私から、手話でも点字でも、あるいは電話でも御意見を頂戴できるようパブコメのルールを変えてくださいというお願いをいたしました。区からも基本のルールから変えていただけるような御答弁をいただいたんですが、二年たつ今も一向に改善はされておりません。これはどういうことなんでしょうか。配慮のない、障害者に対して排他的なルールをぜひ変えていただきたく思いますが、いかがでしょうか。

◎小澤 広報広聴課長

パブコメにつきましては、郵送、ファクシミリ、区のホームページからの提出が難しい方について、所管課に御相談いただく旨をパブリックコメントを実施する所管がホームページに記載するよう庁内には周知しておりますが、区民意見提出手続実施基準の改正であるとか、また、ホームページに掲載するパブリックコメントの概要の修正は行っておりませんでした。また、区民への周知も徹底しておりませんでした。こちらについてもまことに申しわけございません。基準を改正しまして、平成二十六年四月一日より施行してまいります。
今後は、障害のある方が円滑に御意見をお寄せいただけるよう、パブリックコメントの提出方法などの御案内の機会を設けるとともに、区のホームページやエフエム世田谷などを活用して周知に努めてまいります。また、受け入れの体制等を整えて、引き続きパブリックコメントの適正な運用を図ってまいりたいと考えております。

◆上川あや

前任者も約束したことを果たしていない、後任の方もきちんと引き継いでいない、まず広報広聴の基本姿勢としてどういった区民の方がいるかということの基本認識からきちんと掘り下げる必要があると思います。こうした認識について、部長はどうお考えになりますか。

◎宮崎 政策経営部長

今般のお話は本会議でも申し上げました、大変申しわけなく思っております。この対応につきましては、早い段階で善処したいと思っています。本当に申しわけございませんでした。

◆上川あや

三度目の抗議をしなくて済むように、しっかりと改善をお願いいたします。