◆上川あや

平成24年度・世田谷区各会計決算認定、5件に賛成の立場から意見を申し上げます。

まず、「不正を許さない、透明性高い区政に向けた構造改革」が一向に進まないことについて改善の努力を求めます。
保坂区長は就任後、初めての定例会招集あいさつで、取り組んでいきたいことの第一に、「情報公開と区民参加の推進」を掲げました。
「情報公開の徹底は、金と時間がかからない行政改革の道具である。ふだんから監視、チェックを受けてこそ、予算の効率的な執行や行政組織の肥大化をとめることができる」とも語られました。
しかし、そのご発言から2年余、区の情報公開のレベルは上がったのでしょうか? また普段から監視とチェックを受けられる体制などできたのでしょうか? 私には、未だ何ひとつ、変化などないように思えてなりません。

先の総括質疑では、区の意思決定の最高機関「庁議」をはじめとした会議体の会議録等の公開手法、そのスケジュールについて問いましたが、区の答弁は「今年度から庁議における会議録を作成し、議事概要も整理しているが、どの部分までを公開していくのかについては引き続き検証中」などといったもので、公開の時期も手法もまったく明らかにされませんでした。
私から庁議の公開を提案してからすでに2年が経過します。2年間もかけていったい何をやってきたのか? 正直、待ち疲れたという思いです。

情報公開を巡っては、それを下支えする公文書管理手法の改革こそ、重要であると申し上げてきました。
年限が来れば「各部各課の都合で捨てられる」、あるいは「会議録等、本来重要な資料であっても、そもそも役所の都合で作らないで済む」などの現行ルールこそを見直していただかなければ、開示請求をしたところで文書がそもそも存在しないという「文書不存在」の欠陥は改まりません。
この点についても区長からは、「情報公開・個人情報保護審議会等で議論すべきではないか」とのご答弁を1年前にいただいたのですが、所管部の動向は?と言えば「笛吹けど踊らず」。この1年、審議会での検討も所管部での検討も全くないままでありました。この状況につき、区長に見解を伺うと、「改めて検討を急ぐよう指示をする」とのことでしたが、区長の言葉の軽さばかりが際立つ現状は改めていただかなければなりません。しっかりとした執行管理をお願いいたします。

また、区長が、招集あいさつの場でおっしゃったもう一点、行政が「日常的に監視、チェックを受けること」その体制づくりについても、その進捗がはかばかしくありません。
以前は熊本区長のもと学識経験者と区民委員による外部評価委員会が実施されてきましたが、これも平成22年度で終了し、「包括外部監査」も同年度で休止されたままとなっています。私からは都合5回、組織の不正を許さないために、第三者の調査を入れていゆく構造改革、区の公益通報制度の改革を求めてきましたが、区は一向に、組織の不正の告発を組織内部で秘密裏に処理できてしまう当制度最大の欠陥を改める姿勢を見せておりません。
現在、少なくとも都内8つの区において、弁護士等を置いた第三者通報窓口が調査等を担っています。区長が第三者窓口の報告を受けて適切な措置を講じなければ、弁護士等により事案が公表される制度をもつ区も複数あります。

世田谷区でも、こうした構造改革こそが必要なはずですが、先の補充質疑で伺った区長の見解は「課題を多く抱えている」という極めて「あやふや」なもので、「第三者が調査を行うかどうかを聞います」と重ねて伺って初めて「それも含めて検討したい」とお答えになりましたが、はたして区長はどこまで改革の意志を持つのでしょうか?
区長の述べる「検討」は、これまで幾度となく反故にされてきただけに、安心できないというのが正直な思いです。つのる不信を払拭できるよう指揮、監督の徹底を強く求めます。このことは今後も動向をチェックし、重ねて申し上げていきたいと思っています。

次に、進む高齢化、社会の多様化、その一方で広がる不寛容に的確に対処していただきたいということです。
区民生活の質疑で取り上げた通り、区が関わるスポーツイベント一つをとっても、高齢化と、それに伴う障害者の増加に、区の対応は追いついていないと感じます。
区内最大のスポーツイベント「区民体育大会」でも、現在34の競技がある中で、障害者に配慮した種目が1つも存在しないことが残念です。また、年齢別種目を設けている競技も34競技中16に留まり、選出される選手は、いきおい若い人たちに偏ってしまいがちなのではないかと感じます。東京オリンピック、パラリンピックが開かれる2020年、国内の高齢者の人口は3人に1人です。区が掲げるユニバーサルデザインをこの分野でもしっかり進めていただくよう改めて求めます。

性的マイノリティへの支援も重要課題です。この分野でも区教委の「有言不実行」は明らかであり残念です。
文教領域では特に、次の2点の改善を求めます。

第1に、当事者の児童生徒を支えるための実態調査が、これまでの前向きな答弁に反し、きちんと行われてこなかったこと。
第2に、2009年2月の本会議で区教委が述べた、性的マイノリティをめぐる人権について「保健の授業などを通し、科学的な知識を持ち、人間尊重、男女平等の精神に基づく望ましい行動がとれるよう児童生徒を指導してまいります」とのお約束がいまだ果たされていないこと、についてです。
性的マイノリティの子どもたちは全体から見れば確かに少数かも知れませんが、これまで繰り返しお伝えしたように、自殺念慮の割合も不登校の割合も、学校でいじめに遭う割合も極めて高く、命にもかかわる重要課題であることは各種の調査より明らかです。
また区教委は文科省からも、かかる児童生徒の教育相談の徹底を求められている立場です。これ以上、無為に時間を浪費することなく、しっかりとした実践を図っていただくよう改めて求めます。

また今月7日、京都地裁が国内で初めて、ヘイトスピーチと呼ばれる差別的発言について、その違法性を認め「人種差別撤廃条約が禁じる人種差別に当たる」とする判決を出しました。東京、大阪などでは、在日韓国・朝鮮人を標的に「殺せ」「叩き出せ」などと殺人、暴力を教唆するデモが続いており、国際的にも日本の人権意識が問われる事態となっています。区でも人種や文化などの多様性を尊重し共生する社会の実現に向けて、取り組みを着実に推進していく必要があると考えています。基本計画に配慮ある記述をするとともに、具体的な施策展開をあらためて求めます。

最後に、財政をはじめ諸条件の厳しい時代だからこそ、豊かな発想をもって区政の展開を行っていただきたいと思っています。
この春、二子玉川公園内に復元された区登録文化財「旧清水邸書院」の移築では、関係企業に区が役務提供を要請することで区として実質、建築費ゼロで、地域の宝を取り戻すことができました。
災害時およそ3000人の職員が参集する司令塔、本庁舎の水の確保についても、足元にある地下水に着目し、深井戸と浄水設備を整えることで1日最大5万人分の水の供給が可能となりました。先の都市整備領域の質疑では老朽化した梅ヶ丘図書館と背後の羽根木公園の斜面を「立体都市公園制度」を用いて合築複合化することを提案しましたが、かつての都市デザイン室がそうであったように前例の有無にとらわれず、既存の制度的枠組みのみに発想を奪われず、各課題に対し「どうすれば課題を克服できるのか」を軸に豊かに発想を膨らませてゆく構想力が大切だと思っています。そのことを最後に申し上げ、私の意見といたします。