◆上川あや

私からは、性的マイノリティーの子どもたちへの区教委の支援策について伺います。
本日は、この分野における区の有言不実行について問いたいと思います。

一つ目は、児童生徒を支えるための実態把握です。
この件については、2010年10月の議会で要望し、前向きな御答弁もいただいて以降、四回質疑しています。この間、区教委も二度の調査を実施したと聞いていますが、中身は一部教員へのサンプル調査でした。苦しんでいる生徒が誰かもわからない、自殺念慮や不登校の有無もわからない、ただ悩んでいる生徒がいたことだけが確認されました。結局、当初の答弁から三年たつ今も支援に役立つ調査結果はありません。
この点を指摘した本年3月の質疑では、定期的に実施している健全育成にかかわる調査や指導主事の学校訪問の機会を捉え、性的マイノリティーにかかわる悩みを持つような児童生徒がいないか、また、相談を受けているかどうか、受けている場合にはどういう対応をしているか、全校で調査したいとの御答弁でした。
では、その後、調査が進んだのかと所管課に問いますと、これから調査票を検討しますと、三年前に戻るかのような御答弁で、拍子抜けでした。
一体どうなっているんでしょうか。いつまでに全校に対し、悩める生徒を特定でき、具体的に手だてができる調査を実施してくださるのか伺います。

◎橘 教育指導課長

性同一性障害など性的マイノリティーの子どもたちに対する支援などにつきましては、委員お話しのとおり、学校や教育委員会がその実態を把握いたしまして、丁寧な対応をすることが重要であると考えております。
教育委員会では、さまざまな人権課題のより適切な対応を図るために、学校長と心理の専門家、それから学識経験者などによる人権教育推進委員会を設置いたしまして、平成二十三年度、二十四年度に教員を対象といたしまして、女性の人権、障害者の人権、自分の性別への違和感、交際している男性からの暴力などの相談を児童生徒や保護者から受けたことがあるかということについてアンケート調査を実施いたしました。また、昨年度、教育相談室におきましても、実際に性に対する違和感などの相談もございました。
教育委員会といたしましては、既に性同一性障害に関する学校対象の調査を実施しております埼玉県や高知県などの調査内容を参考にいたしながら、推進委員会におきまして、今年度から区立小中学校全校を対象といたします調査を実施する方向で検討しているところでございます。

◆上川あや

しっかりお願いいたします。

第二に、子どもたちへの教育です。
2009年2月の私の議会質問に対し、区教委は、性的マイノリティーをめぐる人権について、保健の授業などを通し、科学的な知識を持ち、人間尊重、男女平等の精神に基づく望ましい行動がとれるよう、児童生徒を指導してまいりますとお約束になりました。2010年10月の質疑にも、例えば性的少数者にかかわる道徳の教材等を作成し、それをもとに、各学校において学級担任と養護教諭が連携して指導を進めることができるよう検討するとの御答弁がありました。
ところが、当初のお約束から四年半、今なお教育実践はないままです。区教委も一昨年度から人権教育推進委員会をつくり検討してきたと言いますが、その後も経過は検討、検討、また検討、牛歩戦術に遭っているのかと思いました。
区教委では、二十三年度、二十四年度とも各二回、試行的な授業実施を行い、その振り返りを研修会などで共有してくださっているということなんですが、私が求めているのは試行実施ではありません。全校での教育実践です。その進捗についても、担当課に伺いますと、なお保健体育で扱うか道徳で扱うかすら決まっていないとの御返答で、驚きました。当初のお約束から五年が過ぎた来年度には本格実施をしてくださるくらいでなければ、私はお約束はうそだと思っていますので、いつ、どのように全体実施をなさるのかお答えいただきたいと思います。

◎橘 教育指導課長

教育委員会では、性同一性障害など性的マイノリティーへの理解を人権課題の一つと捉えておりまして、人権教育推進委員会におきまして、児童生徒への性同一性障害などについての指導内容、方法の充実を図るための研究や協議をしてまいりました。
委員お話しのとおり、その取り組みの一環といたしまして、平成二十三年度、平成二十四年度と各二回ずつ授業実践を行いまして、その結果を小中学校の校長会や人権教育担当者研修などを通しまして、区立学校全校に周知を図っているところでございます。
性同一性障害など性的マイノリティーに関する学習につきましては、男女の性にかかわる観点からは保健体育、性同一性障害に対する差別や偏見をなくすという観点からは道徳に位置づけて実施しているところでございます。
区立小中学校におきましても、自分自身が性同一性障害ではないかと悩んでいたり、家族や学級のほかの児童生徒に受け入れられるかどうかと不安に思っていたりする児童生徒がいることも考えられることから、今年度は性同一性障害など性的マイノリティーに関する授業を昨年度よりも拡大して実施するとともに、その授業を区立学校全校に広く公開し、また、参加を呼びかけながら、児童生徒の性同一性障害や性的マイノリティーについての理解を深めてまいりたいと考えております。

◆上川あや

その後も経過を見てまいりますので、しっかりお願いします。

最後に、相談支援体制の強化を求めたいと思います。
二〇一〇年四月、文部科学省は、性同一性障害のある児童生徒への教育相談の徹底とともに、医療機関との連携を求める通知を全都道府県教育委員会に発し、世田谷区教育委員会にも届いております。昨年一月には性同一性障害の診断と治療とガイドラインが学会で改訂されまして、思春期の性別違和感を持つ子どもへの第二次性徴抑制のホルモン療法が可能となりました。実際、小学生にもこの適用例が出始めました。また、中学生ではまたガイドラインに基づいて外科手術をして、法的解明を実際に行って、高校受験に備える例も出ているんですね。
この間、区教委には専門家を入れて対応力の強化を図る必要があると求めてきましたが、ここでも非常に対応は鈍い。実態調査で具体的な児童生徒が出てきたときに、区教委は子どもたちの医療と変化、そして法的に対応できるんでしょうか。改めて対応力の強化を求めますが、御答弁いただきたいと思います。

◎橘 教育指導課長

性同一性障害のある人にとって、自分らしく生きることで社会から受け入れられなくなることを恐れ、悩むことが多くなることから、何よりも家族や学校、友達から理解されることが大切であると考えております。
今年度、校長を対象とした研修に加えまして、学校に配置されている区任用のスクールカウンセラーを対象として、性同一性障害など性的マイノリティーに関する研修を行うなど、相談支援体制の充実に取り組んでおり、実態調査の結果、児童生徒や保護者から相談があった場合には、校長を初めとする教職員とスクールカウンセラーが連携して相談支援を進めてまいります。
教育委員会といたしましても、委員お話しのとおり、医療に関する対応も必要であることから、必要に応じて保健所や各支所の健康づくり課、関連する医療の専門家など関係機関と相談をしながら、教育指導課の指導主事、総合教育相談室の相談員、心理の専門家などが連携いたしまして、学校や該当の児童生徒の相談や支援体制の強化に努めてまいります。

◆上川あや

もう質問しなくて済むように、安心できる体制を早急に整えてください。