◆上川あや

初めに、視覚障害者の就労支援策としてのはり・きゅう・マッサージサービス事業について伺います。
この事業は、高齢者の健康維持、障害者を介護する家族のリフレッシュを目的に、区が準備する十八の区立施設を会場に、世田谷区視力障害者福祉協会の施術者から、はり・きゅう・マッサージサービス、いわゆる三療サービスを受けていただくというもので、特に就労が困難な視覚障害者の就労支援策にもなっています。

質問の第一は、はり・きゅう・マッサージの国家資格取得者を圧迫する無資格マッサージ店等を放置しないことについてです。

先月公表された国民生活センターの統計によれば、同センターに昨年度寄せられた健康維持や疲労回復を目的とした器具を使わない手技での医療類似行為に関する相談は千二百六十五件と過去最高を記録、何らかの症状が出たという相談も二百五十七件と過去最高を記録しました。うち約八割は医療機関を受診し、三割以上が三週間以上の治療が必要な重傷だったといいます。
これらトラブルの背景にあるものとしてセンターが指摘したのが、国家資格がなくても施術のできる医療類似行為の存在です。
医療類似行為のうち、はり師、きゅう師、あんまマッサージ指圧師、柔道整復師の四種は国家資格ですが、それ以外の違法な無資格マッサージ店がリフレ、ソフト整体等さまざまな名称で乱立しています。
これらの一部が健康被害までを生み、有資格者の就労を圧迫してきた事実もあるのですが、区は、視力障害者協会からのたび重なる取り締まり要請にもかかわらず、一切動いてきませんでした。
無資格マッサージ店のリスクに警鐘を鳴らし、保健所に正式に届け出のある正規の施術所を積極的に案内するなど適正化に取り組む自治体も現在ではふえています。区も積極的に対応するべきと考えますが、いかがか。区の見解を伺います。

第二に、区の十八の施設を会場に、視力障害者福祉協会に委託し行われてきた事業、はり・きゅう・マッサージサービスの堅持、充実を求めます。
前述の無資格マッサージ店の乱立に加えて、伝統的には視覚障害者の職域とされてきたはり・きゅう・マッサージの業界に晴眼者、目の見える方の進出が目覚ましくなっています。
厚労省の統計、衛生行政報告例によれば、既に昨年度、都内に登録のあった三療の有資格者は六万八千三百九十一人、このうち、目の見える晴眼者は実に八五%を超えるまでになっています。さらに、二十二年度から二十四年度にかけ、新たに都内で登録された有資格者は千六十四人、このうち視覚障害者は四十五人とたったの四%です。
視覚障害のある方がこの職域でもいよいよ劣勢に立たされる中、区が視力障害者協会に委託し行ってきた三療サービスの役割はますます重要なものとなっています。区として、同事業の堅持、充実を求めますが、いかがか。区長の見解をお伺いいたします。

質問の第三は、同事業に携わる視覚障害者に移動支援が支給されないことについてです。
私からは、2010年9月の一般質問翌10月の決算質疑及び翌11年の決算質疑で繰り返し、就労、経済活動への移動支援の解禁を求めてまいりましたが、区は検討課題と述べたままたなざらしとし、一切支給してきませんでした。
このため、つい先ごろも、区立老人休養ホームふじみ荘で区の三療サービスに携わり帰路についた視覚障害者の方が、ふじみ荘前の歩車道の分離さえない危険な道を時折迷ったように立ちどまりつつ、つえをつきながら一人、本来乗るべきバス停と反対方向に歩いていく姿をふじみ荘に勤める方が発見して仰天し、そのまま環八に突っ込むのではないかと慌てて自転車で追いかけて呼びとめ、道案内までし、事なきを得たといったトラブルも起きたばかりです。
この施術者の方は、ふじみ荘を出た後、人にぶつかり方向がわからぬまま歩くことを強いられていたということですが、区の委託事業に協力して連日繰り返されるこうした命にかかわるリスク、不安を区はどのように考えているのか見解を伺います。

また、区が開催する職員研修会、ガイドヘルパー講習会に御参加いただく視覚障害者の方には、区は謝礼も払いつつ、移動支援もまた認めてきたといいます。これも経済活動の一つで、区の言うことには矛盾があると考えますが、いかがか。説明を求めます。
さらに、区議会事務局を通し、当区を除く都内二十二区、二十六市の支援状況を確認したところ、当区のように視覚障害者の三療サービスに何らかの支援を行ってきた団体が十区五市あり、このうち七区一市は世田谷区同様行政の側で会場を準備、さらに、その会場に至る移動支援まで認めてきた自治体が三区ありました。こうした一連の対処こそ、障害者差別解消法が義務づける合理的配慮ではないのでしょうか。区の独自施策、緊急介護人派遣事業での移動支援も当然認められるべきと考えるが、いかがか。見解を伺います。

この質問の最後に、同事業で区が準備する会場内での障害者サポートについて伺います。
従来、区が提供する施術会場には、区とシルバー人材センター間の契約により施術者支援のためのシルバー人材が派遣されてきましたが、その仕様書の内容からは、会場内での金銭の授受はサポートしない、つまり、目の見えない方々がお札もコインも確認し、おつりを渡し、管理をしなければならない。
また、針がたとえ落ちたとしても、目の不自由な方のかわりに探したり、拾ったりのサポートさえしない。施術者がなれない会場で歩くべき方向に迷っても、誘導案内さえも行わない。このため、目の不自由な方が横になっている利用者を間違って踏んではならないと、床をはうように移動することを迫られるといったひどい状況が繰り返されてきました。
区は何を考え、このような全く配慮の足りない冷酷な契約で済ましているのでしょうか。即刻改善を求めます。見解を求めます。

◎保坂 区長

上川議員にお答えいたします。
はり・きゅう・マッサージサービス事業、視力障害者協会に区が委託して行ってきているこの事業についてのお尋ねをいただきました。
当事業は、高齢者及び障害者を介護する家族に対し、はり・きゅう・マッサージを施術することにより、高齢者の健康を保持、増進し、介護者のリフレッシュを図ることを目的としております。同時に、区は、視力障害者福祉協会にこの事業を委託することで、視覚障害者に就労の機会を提供、視覚障害者の福祉増進と生活の安定を図るなど大変重要な役割があると認識をしております。
今後も、委託先である視力障害者福祉協会とも十分な意見交換を行い、当事業を着実に行っていくとともに、引き続き、かなり厳しい状況を御指摘いただきましたので、事業の周知を図り、安定的に利用者数の確保、増加が図れるように努めていきたいと考えます。

◎金澤 保健福祉部長

引き続き、視覚障害者のはり・きゅう・マッサージ事業の御質問に順次お答えしてまいります。
まず、無資格マッサージ店について、区として対応すべきという御質問です。
あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律に基づく施術所を開設するには届け出が必要であり、区では、事前の計画段階で相談に応じるとともに、開設後十日以内に施術所開設届を提出していただいております。
一方、このような届け出を要しないマッサージに類するサービスを提供する事業所も区内には多数あるものと認識しております。今後、保健所とも相談し、資格の有無に関する注意喚起等について、区民の健康を守る立場から、どのような方策がとれるか検討してまいります。
視覚障害者の就労支援を行う所管といたしましては、有資格者による施術所をPRすることが重要であると考えております。引き続き、はり・きゅう・マッサージ事業をPRしてまいります。

続きまして、視覚障害者の移動中の命にかかわるリスク、不安について、区はどのように考えているのかという御質問です。
区は、世田谷区ユニバーサルデザイン推進計画を策定し、誰にとっても利用しやすい生活環境の整備を進めております。
視覚障害者の移動については、誘導用ブロックの設置、改修等により、安心して移動できる歩行空間の整備に努めてまいりました。
しかしながら、ただいまふじみ荘での事例を伺い、移動に際しての視覚障害者のリスクや不安について改めて認識したところでございます。特に狭い道や交通量の多い道路上においては危険が大きいことから、移動中の安全確保は重要な課題であると考えております。

次に、区が開催する職員研修会の講師には移動支援を認めているのに、経済活動に移動支援を認めないのは矛盾しているという御質問でございます。
区は、障害のある方の社会参加や余暇活動の充実を促進するため、移動支援事業を実施しております。しかしながら、通勤、営業活動など経済活動のための外出につきましては、当事業は利用できないこととしてきました。
御指摘いただいた区の研修会等で講師を務める場合ですが、講師としての御活動は御本人の職業でないことから、ただいま申し上げた経済活動とはみなさずに、移動支援を認めているものでございます。

続きまして、区の事業に協力する視覚障害者の移動支援を認めるべき、区の独自施策緊急介護人派遣事業での支給も考えられると思うがどうかという御質問でございます。
国は、視覚障害者が移動する際に利用するサービスである同行援護において、経済活動を行う際の利用については介護給付を算定できないとしています。一方、お話にあった移動支援事業は、地域生活支援事業に位置づけられ、自治体の裁量の範囲が大きくなっていることから、自治体の判断によって独自に対象を広げることが可能です。
しかしながら、地域生活支援事業には、国、都からの補助される割合が平成十九年度の六七・八%をピークに低下し、二十四年度は三三%となるなど、財政上の課題もございます。地域生活支援事業である移動支援事業において、経済活動を行う際の利用を区が直ちに認めることは難しいのが現状でございます。
お話しのとおり、障害者差別解消法が公布され、社会的障壁の除去のための合理的配慮が求められることとなりました。今後、基本方針の取りまとめや省庁ごとの対応指針が示される予定ですが、御提案いただいた緊急介護人派遣事業等による支給につきましても、区の事業に協力する方の安全に配慮する視点も踏まえ、今後改めて検討したいと存じます。

続きまして、はり・きゅう・マッサージ事業の会場内で施術者へのサポートがない、仕様書を改善すべきという御質問でございます。
はり・きゅう・マッサージの会場において、施術者は利用者から施術料の一部として利用料を受領しておりますが、大半の会場では、その受け渡しを受け付けに従事する方が見守り、支援してきたものと認識しております。
しかし、この対応は、受け付けに従事する方の善意に基づくものであり、仕様書へ明記されておりませんでした。そのため、一部の会場において御指摘のような事態も発生したものと認識しております。
今後、事業を円滑に実施していくため、施術者の状況を踏まえ、必要となる内容を仕様書へ明確に記載することを考えております。
今年度につきましては、会場内での施術者の誘導、利用料の受け渡しの見守り等について受け付けを行う事業者に依頼し、来年度からは仕様書の記載内容を改めた上で、委託契約を行いたいと考えております。以上です。