◆上川あや

初めに、基本構想、基本計画について伺います。

さきの五常任あわせ報告で、世田谷区基本構想(素案)並びに基本計画(検討状況)が配付され、説明を受けました。しかし、その記述を見る限り、人権上重要なエッセンスが抜け落ちていくのではないかと危惧しています。
基本構想(素案)が九つのビジョンの筆頭に、個人を尊重し、人と人のつながりを大切にすると掲げたことは、人権尊重のあらわれとして評価をします。その記述の多様性という言葉にも、共生の理念が含まれていると受けとめ、歓迎しています。しかし、同素案が個人の尊厳を尊重し多様性を認め合うエッセンスとして挙げたのは、年齢、性別、国籍、障害の有無のわずかに四つです。基本計画(検討状況)の書きようも、これにDVと虐待防止、成年後見をつけ足した程度です。計画年度の十年、二十年を見通して、これで十分とは決して言えないのではないでしょうか。
経済、社会のグローバル化が進展する中で、外国籍住民に占める永住者の割合も大きくふえています。東京で結婚するカップルの十組に一組は既に国際結婚です。彼らの二世、三世が身近な住民にも地域の学校にもふえ続けている今、日本国籍イコール日本人という単純化も通用しなくなっています。
一方で、特定民族への差別をあおる言葉の暴力、ヘイトスピーチが今注目を集めています。東京、新大久保では、朝鮮人を叩き出せ、殺せなどと、排斥と暴力を呼びかけるデモが続き、先日国会でも話題となりました。殺せなど、殺人と暴行を教唆する宣伝の連続は、ナチスによるユダヤ人迫害、アフリカ、ルワンダのツチ族大虐殺の前段にもあったものとされ、重大犯罪を誘発しかねず、正当な表現活動を著しく逸脱した行為です。
こうした人種差別、民族排斥の動きが顕在化している今、この問題に眼をつぶることは、当該民族の区民を傷つけるのみならず、社会全体の安全をも脅かすことにつながりかねません。国籍のみ挙げる対応では不十分です。基本構想、基本計画ともに、配慮ある記述を求めます。

第二の論点は、性的マイノリティーの人権についてです。
一昨年六月、国連人権理事会は、性的指向や性自認に基づく差別や暴力、つまり、同性愛や両性愛、性同一性障害等に対する差別や暴力の撤廃を求める決議を可決、日本政府もこれに賛同いたしました。オバマ大統領もこの一月、二期目の就任演説の中で同性愛者の権利を強調し、その権利は黒人や女性の人権と並ぶ公民権であると位置づけました。南アフリカ共和国も、かつてのアパルトヘイト、人種隔離政策の反省に立ち、全ての差別を廃絶する見地から、性的マイノリティーへの差別を憲法で明確に禁じています。日本の法務省も、人権擁護の重要項目に性的指向と性同一性障害を明確に掲げている今、区の基本構想、基本計画もこの論点を避けるべきではないはずです。
以上二点について、決して軽視をしない、素通りをしないということについていかがお考えになるのか、見解を伺います。

◎田中 基本構想・政策研究担当部長

私からは、基本構想、基本計画について、人種、民族差別を認めない文言が必要ではないか。また、性的マイノリティーの人権にも一定の配慮をという二点について、あわせてお答えをいたします。
人種、民族の違いによる差別のない社会、性的マイノリティーなど、誰もがありのままに暮らせる社会を築いていくことは、人権にかかわる重要な課題であると認識しております。こうした課題は基本構想審議会の議論の中でも取り上げられました。人種、民族については、国籍や民族などの異なる人々が互いの文化的な違いを認め、理解し合う多文化共生の観点から、また、性的マイノリティーについても、今後を見据えての人権にかかわる議論の中で発言がなされてきたところです。
御指摘の二つの観点は、具体の例示として挙げてはおりませんが、多様性という言葉の中に包含して議論されてきたと認識しており、基本構想(素案)の中でも、個人の尊厳の尊重や多様性を認め合うといった表現で反映してございます。
今後、人種、民族差別を認めないことや、性的マイノリティーの人権を守ることについてどのように取り組んでいくのか、一人一人が多様性を認め合う社会の実現に向けて基本計画、実施計画も含めた枠組みの中で総合的に検討してまいります。以上でございます。

◆上川あや

基本構想、基本計画の今後についてなんですけれども、個人にとって選択し得ない属性によって安全を脅かされる人たちがいる。また、個人の尊厳が著しく脅かされて傷つけられる人たちがいる。こうしたことを、当事者の立場に立って物事を考えていただきたいんですね。こうした経験がない人たちが陥りやすいのが事なかれ主義、自分のことではないと他人事意識によって処理をするトカゲの尻尾切りだろうと思っています。
現に東京では、先ほど申し上げたように民族差別、排撃を呼びかけるスピーチが行われています。性的マイノリティーの多くも、自分の本当のことを黙って苦しい思いで暮らしています。当事者の立場に立って、ぜひ考えていただきたいということで、多様性という文言に含めて終わりにするというのではなくて、積極的に考えていただきたいと思います。