◆上川あや

平成25年度世田谷区一般会計予算ほか4件に賛成の立場から意見と要望を申し上げます。

要望の第一は、区長が掲げる「情報公開の徹底」についてです。
区長は、就任後初めての招集あいさつで、取り組みたいことの第一に、「情報公開と区民参加の推進」を掲げました。また「情報公開の徹底は、金と時間がかからない行政改革の道具である」「ふだんから監視とチェックを受けてこそ、予算の効率的な執行や行政組織の肥大化をとめることができる」とも述べられた。ところがこの挨拶から2年、目に見える具体的対応は、何一つないままです。

おととし11月の一般質問で私からは、区の政策決定の最高機関「庁議」を公開してはどうか?―と区長に問いました。区長も「庁内で議論していきたい」と積極的に応じて下さったはずでした。しかし1年半、ここでも何の変化もありません。
業を煮やし所管部に確認したところ、1年半を経過して導き出された結論は「庁議にかかる案件名のみ開示する」という、救いようのないものでした。
「これが区長の掲げる情報公開の中身なのでしょうか?」と先の総括質疑で区長に伺うと「庁議の中で案件名だけではわかりませんので、議事要旨などを公開するよう新年度から改めて指示をしたい」というのがご答弁の要旨でしたが、遅きに失したうえ非常に後退した中身だと判断せざるを得ません。国が定めた公文書管理法は、「行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程、並びに当該行政機関の事務および、事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう」公文書を作成、保存しなければならないとしています。同法の趣旨にのっとった公文書管理手法の策定と実施は、区を含む地方自治体にも努力義務として課されているものです。また昨年秋の決算質疑での私の質疑に区長も同法の努力義務を区として負ってゆく考えを示したはずでした。つまり庁議の会議録も作られなければ全く道理に合わなかった筈。ところがここでも何一つ具体的な改善策は講じられないまま半年が過ぎています。

聞こえの良い口約束はもう沢山です。有言実行の具体的な実践を、言葉だけではないリーダーシップの発揮を区長に改めて求めるものです。
この件に限らず区長の前向きな答弁が、実際にはその後の施策展開に全く活かされていない事案は多いのでは?と感じています。所管部に下命はしても「笛吹けど踊らず」の実態を放置するようでは困ります。区長、副区長には答弁後の執行管理をしっかりとしていただきたい。このことは重ねて申し上げておきたいと思います。

第二に人権尊重の街づくりについてです。
先の区民生活領域の質疑では、区の男女共同参画の相談事業から男性が完全に排除されている現状についてその改善を求めました。
国の第3次男女共同参画基本計画には「男性相談の確立」が明記されておりますし、23区を見渡しても、既に約半数の11区がその男女共同参画事業で男性からの相談を受け付けています。こうした区では既に相談者の2-3割を男性が占める状態にもなっており、ニーズが無いわけではないことがハッキリしています。区は意図せず男性をその相談事業から締め出してきたといえるでしょう。「男女共同参画」の視点に立った対応を改めて求めます。

また文教領域の質疑では、区教育委員会が2度にわたり行った性的マイノリティの相談状況をめぐる教職員の調査が、揃いも揃って子どもたちの救済、支援に全く役立たない調査であることを取り上げました。区教委の調査は一部教員を対象とした匿名調査です。
その結果、小中とも性同一性障害の可能性のある「相談事例がある」と判った一方で、どの学校の児童生徒がどう苦しんでいるかも判らない、現場の先生やカウンセラーが対応できているかもわからない。性的マイノリティの6割以上が持つ自殺念慮、4人に一人が陥る不登校、2割が経験する自殺未遂や自傷行為、いじめの有無等々、大切なことは何一つ判らない調査です。しかもこれが2度にわたり繰り返されたのです。
先の文教領域の質疑でも指摘した通り、他県、他市では議員に言われるでもなく自主的に、性同一性障害にかかわる相談状況を具体的に把握する全学校対象の調査が実施されるなどしています。先の予算質疑での3度目のリクエストにして、ようやく区教委もその調査方法を改めてくださる方向となりましたが、他県、他市の教育委員会では自主的に行われている調査が、議員に何度その不足を指摘されなければ行えない、区教委の鈍重さはどこからくるのでしょうか? 今般、区教委は区長部局とともに子どもの人権救済の第三者機関をつくりその支援に乗り出すこととしましたが、区長に言われたから手伝います、という受け身の姿勢は是非改めていただきくよう求めます。

第3に災害対策についてです。
昨年10月の決算質疑では、世田谷区内の「急傾斜地崩落危険個所」が57か所と23区でワースト3に入る規模で多く、かつ、その多くが都の崩落危険度判定でいうランクのA――もっとも崩落危険性の高い急傾斜地であることを取り上げ、区の崩落防止対策の無策を改めていただきたいと申し上げました。その時点で区には「組織規則」にも同対策に関する記述が一切無く、質疑をしようにも担当部所すら定まらないという情けない有りようで、区の無責任体制も払拭するべきだと強く申し上げたのですが、その後も対策が取られないまま今日に至ります。
先の都市整備領域の質疑で指摘した通り、前回の質疑から半年経てもなお、区は同課題の担当部を決めておりませんでした。担当部をいつ、どの部に決めたのか?を問う私の質疑が出ることを察知した答弁2日前になって、区はようやく慌てて所管部を決めたのです。当然、所管部もありませんから予算要求もなく、他区で実施されているような斜面地崩落防止対策は、来年度の区予算にもないままです。今後、補正予算を組んででもしっかりと対応が図られるべきであることを申し述べておきます。

最後にセーフティネットの構築についてです。
アベノミクスの展開で従業員の解雇はますます容易なものとなり雇用の流動化が進展しようとしています。また新政権のもと生活保護にもメスが入り13年度から3年間で総額740億円、約7.3%の引き下げ方針が固まりました。さらに「障害者総合支援法」がこの春から施行となりますが、障害当事者を中心にまとめられたハズの「障害者総合福祉法への骨格提言」は実質骨抜きとなった法律です。障害者福祉に応益負担を持ち込んだ障害者自立支援法の問題点もそのまま引き継がれ、障害当事者や関係者からは失望と怒りの声があがっています。
こうした中、区には区民にとって最も身近な最後のセーフティネットとしての役割をしっかり担っていただかなければならないと考えています。
企画総務領域で取り上げた、従来、制度として導入されながらも区民に殆ど広報されず、また利用もされてこなかった「医療費窓口負担金の減免」、区内3か所の医療機関で実施されてきた「無料低額診療制度」の役割もますます重要になりつつあります。積極的な広報を改めて求めます。
また福祉保健領域の質疑で取り上げた人工内耳装用者の「聞こえ」を確保し続けるために必要となる体外機器の買い替え費用120万円の自己負担も、個人に負わせるにはあまりに重い負担だと感じます。区長は以前、他会派の質問に、「リーダーに求められる資質の三条件」として「人の話をよく理解する力」、「逆境や苦痛にさらされている人に対しての共感力や想像力」、それらを踏まえて「ためらわずに結論を出す決断力」の三点を上げられました。言葉を現実の施策に生かしてゆく決断力、しっかとした執行管理を改めて求めます。以上を申し上げて私の意見といたします。