◆上川あや
大項目の最後に、区の障害者雇用から知的障害者が一切排除されていることについて伺います。
この問題については、一昨年2月の一般質問でも取り上げ、知的障害者の職員採用について当時の総務部長より、区職員としての採用も視野に入れて検討を行っていくことは必要なことと考えますとの答弁を得ましたが、全く前進がありませんので再質問いたします。現行の障害者雇用促進法の前身は、身体障害者雇用促進法です。その名のとおり、身体障害者だけを支援する法律でした。
それが昭和六十二年六月の改正で身体の二文字が消え、知的障害者も支援対象に加わります。さらに、平成九年の法改正強化では、知的障害者も明確に雇用義務の対象に位置づけられ、今に至ります。つまり、身体、知的の種別なく障害者を雇用することこそが現行法の趣旨であり、区にも課された義務なのです。
ところが、特別区の障害者採用試験は身体障害者のみが対象であり、知的障害者は蚊帳の外です。区が裁量権を持つ嘱託職員等の採用についても同様で、知的障害者は一切お断りというのが現状です。そこで伺います。
第一に、知的障害者も法的な雇用義務の対象であることを区は認めるのでしょうか。区はその例外たりえるのかあわせて伺います。第二に、区は知的障害者の能力を見くびってはいないでしょうか。平成十九年度以降、毎年、知的障害者を事務職員として嘱託採用している横浜市が例年まとめている横浜市役所における知的障害者雇用レポート最新号では、冒頭、これまでの取り組みの結果はっきりしていることとして、知的障害者も事務的分野で力を発揮すると明確に書いています。また巻末にも、市役所における知的障害者の事務嘱託員の雇用は十分可能だと確信しましたと書いています。
実際、報告書を子細に見ますと、全ての知的障害者職員がパソコン入力を苦手意識なくこなしている様子がつづられ、また、郵送、庁内メールの仕分け、定例的なデータ入力など正確かつ迅速で、常に集中して業務に取り組む姿勢に驚いた、知的障害があって就労することの壁を実感した一方で、できることの多さに日々驚いていたなど他職員の弁も紹介されています。適切な採用選考と指導さえあれば力を発揮できる知的障害者も多いのです。
一方、世田谷区政から聞こえてくるニュアンスは、あくまでお荷物扱いです。採用しても足手まとい、財政負担をふやすだけ、事務戦力になどなり得ないと言わんばかり。この差は何なのでしょうか。
区は、知的障害者は事務職員として戦力になり得ないと一律に考えるのでしょうか、それとも適切な選考、そして指導があれば戦力にもなり得ると考えているのでしょうか、見解を伺います。最後に、今後の展望についてです。
一昨年の質問でも紹介したとおり、地方自治体による職員採用の動きは、既に、静岡、愛知、和歌山、滋賀、奈良などの各県に、また、仙台、横浜、名古屋、大阪、岐阜、松山など各市にも広がり、滋賀県、名古屋、松阪、津市等では正規職員とする例も出ています。区がこれまで実施してきた年数カ所、たった一、二カ月のチャレンジ雇用だけでなく、その先の受け入れ体制の強化、深化を図るべきであります。
嘱託・事務職員採用の試行などから、より安定的な雇用形態を目指してステップアップの道筋を描くことはできないのでしょうか。区がさきの答弁で語った、区職員としての採用も視野に入れて検討を行っていくことは必要との理念に基づき、どのように前進を果たすおつもりであるのか区の見解を伺います。
◎千葉 総務部長
私からは、三点の質問にお答え申し上げます。
まず、知的障害者も法的な雇用義務の対象であることを認めるのかという御質問でございます。
障害者の雇用につきましては、障害者の雇用の促進に関する法律に基づき、法定雇用率が定められており、国及び地方公共団体に係る雇用率は、二十五年四月からの現行の二・一%から二・三%に改定されることになっております。この法定雇用率は、雇用する労働者に占める身体障害者及び知的障害者の割合が一定率以上になるように義務づけられたものであり、民間企業、公共団体を問わず、一定程度の従業員数の事業主には雇用の義務づけがされており、区もその対象と認識をいたしております。次に、区は知的障害者の能力を見くびっていないかという御質問がございました。
区の障害者福祉計画では、障害者就労の促進を重点取り組みの一つとして位置づけておりまして、その一環として、知的・精神障害者の方々を対象としたチャレンジ雇用を平成二十二年度から実施してまいりました。本年度につきましては、知的障害者四名、精神障害者一名の方々を一カ月から二カ月の期間、保育園や図書館に臨時職員として雇用いたしております。
この間、業務内容になじめなかったケースもございますが、適する職務内容や勤務形態に個人差が大きいと感じております。しかし、受け入れ所属から、御本人にとって向いている業務、課題等が実感できたり、一定の期間働くことで自信につながったのではないか、また、受け入れた職場としてもともに働くことを通じ、業務に対する新たな気づきを得るきっかけになったなどの感想が寄せられております。次に、現行の知的障害者チャレンジ雇用の次のステップについての御質問にお答えを申し上げます。
平成二十二年からの三カ年のチャレンジ雇用では、延べ十一人、九所属で知的・精神障害者の方を受け入れてまいりました。この実践の中で、先ほども申し上げたとおり、区として新たに気づかされたことも多々ございます。チャレンジ雇用を今後進めるに当たっては、成功事例を少しでも多く積み重ねることが大切であると認識しております。
こうした取り組みの中で、雇用受け入れの手法、仕事の提供方法、望ましい勤務形態のあり方などにつきまして、さらに検討してまいります。以上です。
◆上川あや
再質問をいたします。
あともう一点、総務部長に伺います。
知的障害者の雇用についてです。雇用受け入れの手法についてさらに検討するという御答弁でしたが、これは現行のチャレンジ雇用から先のステップまでを検討する、つまりは臨時職員よりも上、嘱託、さらにその上まで検討するという展望を含んでいるんでしょうか、お伺いいたします。
◎千葉 総務部長
再質問にお答えを申し上げます。
区の雇用におきまして、チャレンジ雇用に取り組む中で、職務内容や勤務形態の多様化等につきまして、さらに前向きに検討してまいります。以上でございます。
◆上川あや
前向きにとおっしゃっていただいたんですけれども、いま一つ足りていないという念が拭えません。
再々質問いたしますが、そもそも知的障害者をすっかりとのけ者にしたこの職場が世田谷区役所です。これが世田谷区の最大の事業所です。これが、区が理念として掲げてきたノーマライゼーションに合致するのかどうか、もう一度お答えください。
◎千葉 総務部長
御指摘にありましたけれども、御案内のように、区でも二十三区さまざまなチャレンジ雇用を実施しておりますけれども、その中でも、世田谷区がほかの自治体に劣るというような状況にはないというふうに認識をいたしております。今後とも努力してまいります。以上です。