◆上川あや

初めに、オープンソース・ソフトウエアの活用について伺います。
まず、言葉の説明をいたします。オープンソース・ソフトウエアとは、ソフトウエアの設計図に当たるソースコードを、インターネットなどを通じて無償公開し、誰でも改良、再配布が行えるようにしたソフトウエアです。今、その導入が自治体でもふえています。

現在、区の業務用パソコンは六千五百台に上ります。その統合ソフトにはマイクロソフト社の有料ソフト、オフィス2003が標準装備されています。しかしそのライセンス期限は来年の四月まで。以後はセキュリティー更新プログラムの提供も受けられなくなります。その後も庁内文書の閲覧性と安全を確保するためには、同社の後継ソフトを大量購入するのが最も簡便な策となりますが、そのコストは億単位と膨大です。
一方、会津若松市では二〇〇八年秋以降、この統合ソフトを国際標準規格の無料のオープンソースに切りかえることで千五百万円ものコスト削減効果を生んでいます。また、一昨年、山形県、徳島県も同じオープンソースの全面導入を決め、それぞれ一億円以上のコスト削減が見込めるとしました。
実際、会津若松市にも視察に伺いましたが、その導入コストは、担当課の人件費を除けばeラーニングの教材費四十万円にすぎないとの話です。また導入から四年半、大きなトラブルもなく移行できていると言います。さらにその導入は、大阪府箕面市、愛知県豊川市など全国六十もの自治体に広がり、海外でもフランス、ブラジル、デンマーク、シンガポール等の政府機関で採用されています。
そこで伺います。

初めに区長に伺います。
有料統合ソフトのライセンス切れまで一年二カ月です。この状況を踏まえ、オープンソースの導入も一つの選択肢として比較検討すべるべきと考えますがいかがでしょうか、見解を伺います。
第二に、現状、区の統合ソフト更新計画にオープンソースは含まれていないとのことですが、どのような計画か、また、どれだけコストをかける御予定かお答えください。
第三に、会津若松市並みに一五%の業務用パソコンにマイクロソフト社のオフィスを残しつつ、オープンソースを区の標準ソフトにするとして、削減されるソフト購入費はいかほどになるのかお答えください。
第四に、所管課に伺うと、現状の有料ソフトを切りかえた場合、電子メール、予定表等、グループウエアの後継を別途考える必要が出てくるといいます。従来の発想では、アウトルックの関連ソフトを単体購入することになるとのことですが、この部分も、徳島県が独自に自治体向けに開発し、無償公開しているオープンソース「Joruri」で事足りると考えますがいかがか。そのコスト削減効果とあわせてお答えください。
第五に、他区にもオープンソース導入検討の動きがあると聞いています。御説明をお願いいたします。
第六に、他県、他市で導入できて世田谷区で導入できない理由はないと考えますが、区の見解はいかがでしょうか。区が考える利点、課題とあわせてお答えください。
第七に、会津若松市では、オープンソース導入の利点として、経費削減のほかに次の三つを挙げています。一、国際標準規格であるオープンドキュメント採用による電子文書の適正化、二、オープンドキュメント及び無償ソフトの採用による利用者の利便性向上、三、オープンソース活用による地元産業の振興であります。区としてそれぞれどう評価するのか伺います。

◎保坂 区長

上川議員にお答えします。
オープンソース・ソフトウエアについてお尋ねをいただきました。
この電算経費の問題については、なかなか電子政府という言葉が、森内閣のころでしょうか、かなり登場しましたけれども、実はITゼネコンというような言葉もあって、国の機関そのものも、例えば法務省でもどれだけの電子予算を使っているのか省としても把握できない、そういう状況がございました。
そこで、就任以降さまざまな見直しをかけ、そしてクラウド化、仮想化などの新しい技術を活用した手法の見直しも現在進めているところです。
二十四年度、二十五年度で合計七億円を超える削減効果を上げているところであります。
今の御提案ですけれども、従来のものと比べて使い勝手などの検証、他の自治体に実際に行かれたというお話がありました。これを担当所管に調査させて、一定の調査の後、効果が見込まれるようであれば導入していきたいというふうに考えています。
以上です。

◎宮崎 政策経営部長

私からは、オープンソース・ソフトウエアの関係につきまして、徳島県や会津若松市などの例の取り組みの内容を踏まえて、更新計画、それからコスト、削減されるソフト購入費、さらには、会津若松の件でございますが、電子文書の適正化、利用者の利便性向上、地元産業の振興等についての評価、さらには、区が導入に向けての課題、導入の他区における検討状況、これらについて一括してお答え申し上げます。

最初に、御質問のありました事務用パソコンの更新計画でございますけれども、引き続きマイクロソフト社の統合ソフトを採用いたしまして、今年度より順次行っているところでございます。更新に要するコストでございますけれども、事務用パソコン一台当たりの価格ですが、文書作成や表計算などのソフトに、職員間の情報共有システムを加えた統合ソフトの費用を合わせまして八万円程度となる見込みでございます。
次に、六千五百台の八五%に対しまして、オープンソース・ソフトウエアを採用した場合ということですが、文書作成や表計算などのソフトに係ります削減効果は約一億三千五百万円、さらに職員間の情報共有システムを徳島県が採用しております「Joruri」などの無料ソフトに置きかえた場合の削減効果ですが、約五千五百万円、総額にいたしまして一億九千万円ほどの購入経費が削減できるということが試算上は成り立ちます。
次に、各区の詳細のオープンソース・ソフトウエア導入検討状況でございますが、現時点におきまして把握はできておりませんが、特別区におけます電子計算主管課長会というのがございまして、そちらのほうでも、このオープンソース・ソフトウエアの話題が上がっているということでございます。
オープンドキュメント形式の採用によります電子文書の適正化につきましては、国際標準規格であることから、中長期的な電子文書の保存等の適正化につながるものと認識をしております。
オープンドキュメント形式の採用による利用者の利便性向上でございますが、区では現在、マイクロソフト社の形式に加えまして、無償で閲覧可能なPDF形式によります情報提供に努めておりますが、オープンドキュメント形式を追加すれば、さらにその利便性は向上するものと考えられます。
オープンソース・ソフトウエアの活用によります地元産業の振興に関しましては、このオープンソース・ソフトウエアを用いました国際標準規格に準拠しましたシステム開発を自治体が発注することによりまして、大小さまざまな事業者が広く参入することが見込まれます。地元産業の育成につながる可能性があるものと認識をしております。
一方で、庁内に現在あります財務会計システムとマイクロソフト社の統合ソフトとの連携を前提とした業務システムがございまして、それらが問題なく動作するかに留意する必要がございます。また、オープンソース・ソフトウエアの多くはインターネット上のボランティアによって維持されている側面があるため、中長期的なサポートの継続性には特に慎重な検討が必要となります。今後、オープンソース・ソフトウエアを試験的に導入するなど、業務への適用可能性について検証を進めてまいります。以上でございます。