◆上川あや

初めに、エネルギーをたくみに使うまち世田谷の実現に向け、世田谷ガス田を有効活用せよというテーマで質問してまいります。

世田谷区内にもガス田がある。しかも既に掘削は終えていて、そこから産出されるガスは、日夜使われることもなく大気中にどんどん放出されている。そんなうそのような話が今世田谷区で現実に起きています。
東京下町を含む南関東一帯は、国内最大の天然ガス埋蔵地域として知られています。いわゆる南関東ガス田と呼ばれるものです。
これは地下深くに眠る水、かん水と呼ばれる太古の海水にメタンが溶け込んだ水溶性ガス田という形で存在しています。その可採埋蔵量は三千六百八十五億立方メートル、国内の年間ガス消費量の約四倍という膨大な資源量です。従来世田谷区は、その埋蔵地域から外れると見られてきましたが、各地で大深度の温泉掘削が進む中、従来の想定を超えたガスの埋蔵が明らかになってきました。

二子玉川の地下千七百メートルを掘削した山河の湯は、都内最大級の揚水量を誇る温泉です。そのお湯は前述のかん水をくみ上げたものです。
都に確認したところ、山河の湯のガス水比は三分の四、つまり温泉水一に対しその一・三倍のガスが出ています。しかも、成分の九十数%が都市ガスの主成分であるメタンです。これは、都市ガス器具がそのまま使えるほど高純度のガスであることを意味しています。
区の環境保全課によれば、山河の湯の揚水量は、一日平均百十五立方メートルです。ガスの産出量は、単純計算でその一・三倍、百五十立方メートルにも及びます。これは一リットルのペットボトルにして十五万本分という大変な資源量です。ところが、現状では毎日これが捨てられ続けている。これは大変大きな無駄だと考えます。また、メタンはCO2の二十一倍の温室効果を持ちます。つまりむやみな天然ガスの放出は環境の汚染源でもあるのです。これらは積極的に改善するべきです。
そこで伺います。

第一に、区内産天然ガスの活用に向けた区の評価についてです。
この天然ガスを活用する方策として、電気と熱を同時回収できるコージェネレーションプラントがあります。
環境省もその温泉への設置費用に二分の一の補助を出すなど後押しをしています。山河の湯のガス産出量があれば、二十五キロワットの電力と三十五キロワットの熱を一日十九時間安定的に回収できると専門家の方から伺いました。このプラントの導入でメタンの放出はゼロとでき、エネルギーを安定的に回収できるほか、年間七百二十九トンもの温室効果ガスの削減効果が生まれます。これは杉の木五万二千本分、森林面積にして東京ドーム十六個分のCO2吸着量です。この効果を区はどう評価するでしょうか。
また、エネルギーが無駄に失われている現状を、エネルギーをたくみに使うまち世田谷を標榜する区長はどう評価するでしょうか。あわせて見解を伺います。

続いて、天然ガスの利活用を阻む規制を突破せよという見地から伺います。
これまで述べてきたように、区内には既にガス田があり、安定的なガスの産出もあります。コージェネの技術も確立されています。しかし、その活用には壁があります。天然ガスの活用には、鉱業法に基づく鉱区の設定が不可欠である一方、当区を含む都内五十一の区市町は、地盤沈下の抑制を目的とした都の申請により、昭和六十三年以降、鉱区禁止地域に指定されています。このため、たとえ少量の温泉随伴ガスといえども、その利活用は一切できなくなっています。この壁を超えるために考えられる方法は次の三つです。

一つ目に、温泉井戸の所有権を区に移し、みずからコージェネレーションプラントを運営すること、非営利組織による自家用開発なら鉱区設定の回避が可能です。

二つ目に、鉱区禁止地域の指定の解除、変更を都に働きかけること。都は、正当な理由があれば、鉱業法二十四条に基づき、鉱業権設定に異議を申し立てることができます。また、温泉井戸の掘削は、都の自然環境保護審議会の許可をそもそも得る必要があります。さらに、温泉法に基づく都のくみ上げ量の指針を超える温泉井戸の掘削を都はそもそも許可しません。加えて、当該申請に係る掘削が公益を害するおそれがあると認めるときも都は掘削を不許可とできます。また、ガス利用を目的にくみ上げを行ったとしても、ほぼ同量の温泉水をくみ上げる必要があり、その水処理にはガスの価値以上の下水道料金が発生します。このため、都内でガス利用をメーンとした採掘は、そもそも経済的にペイしません。
以上の理由から鉱区禁止地域の指定を解除したところで、都が恐れるくみ上げ量の増大や地盤沈下につながるおそれはそもそもありません。温泉随伴ガスは積極的に活用していくべきで、区は堂々と指定の解除、変更を主張するべきです。

三つ目に、ガス資源の有効活用に向けた特区申請です。既に宮崎県は、温泉随伴ガスの有効活用に向け、規制緩和を求める特区申請を国に提出し、規制の一部緩和をかち取った上、プラントも動かしています。区も積極的に動くべきと考えます。
以上、規制緩和に向けて積極的に動くお考えがあるのかどうか区長にお伺いいたします。

◎保坂 区長

上川議員にお答えいたします。
世田谷ガス田の有効活用という問題提起をいただきました。
温泉とともに発生する天然ガスの主成分がメタンガスであり、二酸化炭素の二十一倍の温暖化効果があると言われていることから、メタンガスの排出を抑制することは、地球温暖化対策として重要であると認識をしています。
区内の温泉施設で発生をしているメタンガスの多くは大気中に排出されている現状を考えると、ご指摘のように、天然ガスを利用したコージェネレーションと言われる排熱利用による高効率のエネルギー供給システムについて、温暖化対策として有効な試みだというふうに考えられます。一方、東京都内では、地盤沈下防止のために、鉱区禁止地域に指定されていて、現状の制度のもとで天然ガスの有効利用ができないとも言われています。
区内の大深度地下からくみ上げている温泉施設、ここでは多くのメタンガスを現状ではただ大気中に放出していることから、合理的また現実的に考えれば、他の温泉施設でコージェネレーションなどに利用されていることを考えると、鉱業法の適用や許可の対象であるのかどうかを見定め、国や都の見解とあわせて、その実現可能性を検証したいと思います。
温泉に伴う天然ガスの利活用は、温暖化対策として重要であると考えております。まずは、法や条例の枠組みからその可否を考えていきます。自然エネルギーをたくみに使うまちづくりに当たり、私たちの身近な日常に目をやり、創意と工夫をもって、環境負荷を下げ、また経済コストを削減することにもつながるプランとして注目し、検討を進めたいと思います。

◆上川あや

まず、区長に再質問させていただきたいと思います。
区内産天然ガスの利活用に向けての区長のご答弁でしたが、既存の法令、また条例を踏まえての可能性の検証ということだけでは、私は全く不十分だと考えています。さきの質問で申し上げましたとおり、都の規制に行き過ぎがあること、また、都と国のその枠組みに拘束性があって、実際にぼんぼん有害とも言えるガスが放出をされている現状、これは大きな問題であって、区や都の動きをそのまま下敷きにして様子見をするということだけでは全く足りません。区長として積極的に発信していくお考えがあるのかどうか、改めてお伺いいたします。

◎保坂 区長

再質問にお答えします。
議員ご指摘のように、新たに掘削するものではなく、現に温泉をくみ上げている中にこういったガスが含まれていて、そして日々これが大気中に放出されているという現状が地球環境にも負荷を与え、またそのエネルギーの利活用という点でも問題があるという認識は、全くそのとおりだと思います。これに当たって、鉱業法などの規制によって、このいわゆる現状の規制に該当するのかどうかも、積極的にこの都のほうにも確認をしたいと思いますし、また、合理的に考えれば、おっしゃっていることの意味はそのとおりだと思いますので、これらの都やあるいは環境省などの政策も確認をした上で、現状がこのままでいいとは思っておりませんので、必要な努力をしたいと思います。

◆上川あや

ありがとうございます。