◆上川あや

続いて、清掃工場を災害時の非常用電源とする工夫について伺います。

区は現在、第三庁舎に七十二時間賄える容量のオイルタンクと発電設備の設置工事を進めています。また、各避難所にカセットボンベ式発電機を備えるとしています。しかし、都が九月に公表した地域防災計画修正素案では電力の復旧を被災後七日以内としており、なお数日間の空白があるとわかります。また、複数の発電所が同時罹災した場合、電圧低下により首都圏の電力ネットワークの維持が困難になる、工業用水が被災した場合、タービン冷却水の調達が困難となり、発電能力が落ちてしまう等、従来想定されていなかったリスクも指摘されています。
一方、区内の千歳清掃工場には一万二千キロワットもの発電能力があります。これは区内全世帯の約七%、三万世帯を賄える大出力です。また、清掃工場は平素より水や燃料が備蓄されている施設です。自治体が持つ最大の電力、熱の供給源でもあります。さらに、東日本大震災の被災地でも、津波の影響を受けた施設以外、清掃工場のシステムは健全なものが多かったとされ、独立電源さえあれば、直ちに運転再開も可能だったとされています。結果、清掃工場は設備インフラをやや拡大するだけで、防災拠点の自立した中心施設になり得るというのが日本機械学会の見立てです。こうしたポテンシャルを積極的に区の災害対策にも生かしていくべきと考えます。
また、今月初めには、都の停電リスク回避の方策として、都庁と副都心地下のガス発電設備とを結ぶ送電線の敷設が大きく報じられましたが、将来的には区でも清掃工場と区庁舎等とを自営線で結ぶことで、同様のライフラインの強化が可能になる可能性があります。その実現には電気事業法の特定供給の許可要件の緩和等も必要となりますが、既に国の行政刷新会議でもこの件は取り上げられており、区としても積極的にその活用に向け動いていくべきと考えますがいかがでしょうか、区長の見解を伺います。

◎保坂 区長

上川議員にお答えいたします。

清掃工場の発電能力を非常災害用の電源ということで活用できないかという質問をいただきました。実はこの間、昨年来この清掃一部事務組合が運営をしている二十三区内の清掃工場で、これは売電事業をしているわけですけれども、東京エコサービスから世田谷区の小中学校にも東京電力より安く供給しているということがありますが、しかし、実はもっとできるんではないかということで拡大するように求めてまいりました。結果、先月でしたが、八十八カ所から百四十九カ所、約倍にふやすという報告がなされ、提案がなされ、約二倍の供給量になって売電収入も二十一億円というふうになるというふうになってまいりました。
ご提案の災害時の非常用電源についても、清掃一部事務組合、そしてこの電力の事業に詳しい担当者とも現在話をしております。現状は、質問の中にもあったように電気事業法の中での制約で、いわゆる自営線、送電線を敷設する場合に相当の費用がかかる等の問題、維持経費もあると。あるいは、災害時にその上下水が破断された場合には一日程度しか運営できない、あるいはごみそのものが収集できないと燃やすものがなくなるというようなこともあります。
しかしながら、清掃工場は、東京都や区の地域防災計画上、大規模救出救助活動拠点に指定されていて、災害時には他府県から救助救出チームが滞在する防災拠点とこのように位置づけられていることから、災害時における清掃工場の活用については、この清掃工場内に、清掃工場の発電とともにその敷地の中に、例えば非常用電源の発電施設を置くなどのことも含めて、現在投げかけているところです。
また、区は資源エネルギー庁に対して、いわゆる一般家庭への電力自由化を先行モデル実施できないかということを投げかけております。同庁によれば、三月十一日の大震災以後の自治体の要望は、そのほとんどが災害時のいわば規制撤廃ということでありまして、例えば柏市で大型商業施設がある、ここはもう電源が物すごく豊富にあったけれども、道一つ隔てたマンション街には供給できなかったというところを災害時には通してくれというような要望が幾多寄せられていると聞いております。
ですから、世田谷区が要望している電力自由化の中で、より緊急度が高いものとして議員ご指摘の点も実現すべく、清掃工場電源に着目しながら進めていきたいと思います。