◆上川あや
初めに、最重度全身性障害者に対する区の在宅介護支給、ホームヘルパー派遣サービスについて伺います。
一昨年6月の私の議会質問に対し区は、一日二十四時間の在宅介護、ホームヘルプを現に入れている方々に対し、区の要綱の支給量基準の最大値、月五百二十七時間、一日十七時間で介護支給が打ちどめにされているケースがあることを公に認め、その人数は区が把握する範囲で十七人に上ることを明らかにしました。また、区が二十四時間の公的介助保障に向け努力すると、当事者団体との折衝の際、繰り返し述べてきたことを認め、その方針に変更がないことも明らかにしました。
さらに、今月二十日、朝日新聞が報じた政令市、中核市、県庁所在地、二十三区を対象とした重度訪問介護に関する調査結果によると、一日二十四時間、月七百四十四時間以上の介護支給を認めていた自治体は二六・八%と、全体の四分の一に達しました。ところが、当区では、一日二十四時間の介護を現に入れている方々に対しても、実態に即した介護支給は認められておりません、このため、命をつなぐケアワーカーの確保に連日多大な自己負担を強いられるケースも生じており、事態の速やかな改善が不可欠となっています。そこで伺います。
第一に、区が志向する二十四時間の公的介護支給を行わない、あるいは行えないのはなぜなのか、それが財政的なものであれば、その根拠を示していただきたいと思います。
昨年十二月の大阪高裁のいわゆる石田訴訟控訴審判決では、一日十八時間を下回る介護支給決定は違法である旨を認定、明示した上で、石田さんに一日十八時間の公的介護を給付すると和歌山市の財政に一定の影響はあると考えられるものの、証拠上、具体的にいかなる支障が生じるか明らかでないとして、和歌山市の主張を退けました。
つまり、財政状況を理由とした公的介護給付の切り捨ては安易に許されないと判示されました。この判決に照らせば、区が二十四時間の介護支給決定をしないのであれば、二十四時間介護支給することによって、財政運営上、いかなる支障が生じるのか証拠を示し、説明する責任が世田谷区にはあるはずです。
国は今年度より重度訪問介護の国庫負担基準を引き上げています。国庫負担基準を超える市区町村に対しても補助制度を恒久化し、区費による持ち出しは四分の一に抑えられています。このような状況下で、なぜ二十四時間の支給決定がなされていないのか、実態に比べ不足する支給量決定が多いのか説明を求めます。
◎藤野 保健福祉部長
重度の障害者の在宅介護に関してご答弁申し上げます。
初めに、二十四時間の公的介護を行えない財政的根拠でございます。
国は、全国の市区町村の支給実績の九割程度をカバーできるよう国庫負担基準を設定し、給付費の上限を定めております。区における最重度全身性障害者が利用する重度訪問介護を含むホームヘルプサービスに係る介護給付費の額は、平成二十三年度の決算額で十九億四千八百八十九万円となっており、基準額の十四億三千三百五十九万円を大幅に超えております。基準額を超えた部分につきましては、今年度から補助制度により基準額の二分の一までの額が補填されることとなりました。補助対象額における区の負担割合は四分の一となっておりますが、これは自立支援法の介護給付費における市区町村の負担割合と同等のものでございます。
今後、区の介護給付費の額が基準額と補助対象額の合計である二十一億五千三十九万を超える場合には、超過する額についての区の負担割合は四分の一から四分の三へと三倍に増加いたします。来年度の区の介護給付費の積算額、おおよそ二十一億七千万強となっておりますが、この合計額を超える可能性が高いと判断しており、区の財政負担の増加が見込まれると考えております。介護給付費における国庫負担額が自立支援法に定める国の負担割合に見合う額となるよう、国に対し国庫負担の基準額撤廃を求めてまいりたいと存じます。続いて、実態に比べ不足する支給量の決定についてでございます。
区では昨年度から、一日二十四時間の介護を入れながら地域で生活している最重度の全身性障害の方に対し、本人の状況から支給量増が必要と認められる場合に、最も多い方で区の支給量基準を超える一日二十一時間の支給決定を行ってまいりました。また、入浴等に際し二人介護が必要な場合には、二人目の介護者の時間数を加え支給決定してきております。
今後、親族による介護が見込めず、自分で意思を伝えることが困難なことに加え、医療器具を二十四時間監視する必要があるなど、常時介護サービスを必要とする筋萎縮性側索硬化症の方などにつきまして、一日二十四時間の支給決定も当然あり得るものと考えております。国は、平成二十五年四月の障害者総合支援法の施行に際し、附則第三条の中で常時介護を要する障害者等に対する支援のあり方について、法施行後三年を目途として検討を行うこととしております。
区といたしましては、国の制度が整うまでの間は、自費で二十四時間の介護を入れている方への支給量増について、本人の障害の状況や生活実態、介護状況などを勘案し、今後も支給決定を行ってまいります。