◆上川あや

次に、障害者の通勤、通学に対する移動支援について伺います。

まず、この質問の第一に、通勤や生産活動に移動支援を認めるよう求めます。
移動支援は、障害者自立支援法の施行後、地域生活支援事業の枠内に入り、その制度設計は区市町村の自由裁量に任されました。このため、千葉県我孫子市では移動支援の枠組みを根本から見直し、従来、国制度が認めてこなかった通勤、通学、生産活動にも派遣を認め、支給上限量の範囲内であれば自由に移動を選択できるよう制度を改めたといいます。区もこれに倣うべきです。

一方、当区の基本は、かつての支援費制度を横引きした制度です。区のノーマライゼーションプランはその基本理念に地域で自立した生活を継続できる社会の実現をうたっておりますが、区の現実は障害者の就労に移動支援はびた一文出さないという石頭です。
このため、昨年十月の決算質疑で、区内に住む筋ジストロフィーの女性が、移動支援があれば数分で移動できるはずの自宅と駐車場間のわずかな距離を、毎日数時間かけて、文字どおり数センチずつ路上をはって移動し、毎日通勤せざるを得なくなっている悲痛なメールを紹介し、区の再考を求めました。
ところが、区の答弁は、「検討する」ではなく、「検討課題とさせていただく」でした。近ごろ、保健福祉部が答えに窮するたびに連発する「検討課題とさせていただく」とは何を意味するのでしょうか。検討するべき課題ではあるが、棚上げとするという意味なのでしょうか。お答えください。

その上で、少しの移動支援さえあればまだ働ける区民納税者を毎日数時間、路上にはわせ、とことん苦しめて退職を迫り、結果、生活保護受給者に突き落とそうかとするかのような区の施策の硬直性は、かえって福祉予算の増大につながりかねないものと危惧します。この点、区長は、区の従来どおりの四角四面で冷酷な判断を正しい判断とお考えなのでしょうか。見解を伺います。

この質問の第二は、小学生以上の通学に対する移動支援です。
区は、支援費制度のころから区独自の判断で居宅からスクールバス等のバス停までの送迎を居宅支援サービスの延長として認めてきたと承知をしています。ところが、平成二十年八月ごろと本年九月の二度にわたり、都から区に居宅介護サービスでの移動支援は実施できないとの指摘がなされ、区は先ごろ見直す方針を居宅支援事業者に表明しました。
この問題については、昨日、他会派からも質問が出され、区も小学生の移動についてのみ、対応し、検討してまいりたいと答弁をしましたが、学びの場への移動支援の拡充は、本来年齢を問わず認められるべき障害者の権利です。この観点で、私からは昨年九月の議会質問以降、支援の拡充を繰り返し求めておりますが、区の答弁は相も変わらぬ「検討課題とさせていただく」でした。
区長は就学に対する移動支援の必要性について、どのようにお考えなのでしょうか。小学校を卒業して以降は、切り捨てもやむを得ないとお考えであるのかどうか、見解を伺います。

◎保坂 区長

障害を持っていらっしゃる方の移動支援について質問をいただきました。

障害者の移動支援は、区市町村が主体的に取り組む障害者自立支援法上の地域生活支援事業として、地域の特定利用者の状況に応じて支援を行っています。移動支援の拡充について、国の障がい者制度改革推進会議総合福祉部会において議論されていますが、同部会の骨格提言では、歩く、動くは、話す、聞く、見ると同様、基本的権利であり、自治体の裁量いかんで行う支援にはなじまないとの指摘がされているというふうに聞いております。
また、地域生活支援事業については、大きな地域格差が出ている現状から、すべての自治体で一定水準の事業ができるような財政面を含めた新たな仕組みが必要との指摘もされています。現在、こういった議論を踏まえて、世田谷区の中で障害をお持ちの方の移動支援について、とりわけ他会派のご質問にもありましたけれども、通学についても深刻な問題が生じていると認識をしています。
移動支援については総合福祉部会で議論されているとおり、保障されるべき基本的権利であり、国による財政面を含めたしっかりした手当が必要だと考えています。ただ、これまでの居宅介護サービスを、いわば使ってきたやり方ということに対して再三都の指導も入ったということで、こういった障害を持つ子どもたちが学ぶ権利、通学をする基本的な基盤については、これはしっかり守っていかなければならないというふうに考えています。
社会福祉協議会、ふれあいサービス事業、あるいは世田谷ボランティア協会など、地域コミュニティーの力にも働きかけて、通学についてはサービスが欠如することなく継続できるよう、できる限りの対応をしてまいりたいと思います。
詳細については担当部長から答弁いたします。

◎藤野 保健福祉部長

障害者の通勤、生産活動に対する移動支援についてご答弁申し上げます。

障害者が地域で自立した生活を送る上で、移動支援は重要なものと認識しております。しかしながら、障害者自立支援法の個別給付で移動の介護が認められているのは、重度訪問介護、行動援護、同行援護など一部に限られております。一方、移動支援事業は、区市町村が実施する地域生活支援事業に位置づけられており、国が一律に実施する自立支援給付と異なり、国、都の負担割合がそれぞれ二分の一以内、四分の一以内とされております。事業開始時の平成十八年度には、国、都からの歳入が事業費に対し約四分の三であったものが、平成二十二年度には五割程度にまで低下しております。
事業費の推移を見ますと、平成十九年度歳出決算額が約九千二百万円であったのに対し、平成二十二年度歳出決算額は約二億四百万円と、この三カ年で二倍強にふえております。
なお、二十三区の実施状況を見ますと、特段の事情により例外的に対応している場合を除き、就労を事由として通年の移動支援を認めている区はございません。
国の障がい者制度改革推進会議総合福祉部会の議論では、労働行政や教育行政との役割分担や、財源をどう考えるか、障害者雇用給付金や介護保険、教育など関連分野の財源を調整する仕組みの検討が必要であるとの指摘がされております。こうした状況にありますことから、区といたしましては、通勤や生産活動への移動支援について、平成二十四年通常国会に提出される予定の仮称障害者総合福祉法の議論など、国の動向を踏まえ検討を行う必要があると考えております。

続いて、小学生以上の通学についての移動支援でございます。
区では、通学移動支援については、保護者の病気や冠婚葬祭などの突発的な事由の場合に、例えば病気が回復するまでの三カ月程度と期限を区切って認めておりますが、通年での通学につきましては認めておりません。なお、区教育委員会におきましては、通学の安全確保等の観点から、肢体不自由児の特別支援学級への就学のための通学支援を小学校二校、中学校一校で実施しております。
居宅介護サービスにおける不適切な移動サービスに対する東京都の実地検査での複数年における指摘を踏まえますと、障害児の障害状況や家族の生活実態等を総合的に判断し、通学への移動支援について検討が必要と考えております。具体的には、現在策定中の第三期障害福祉計画の中で通学などへの移動支援について検討し、対応してまいりたいと存じます。

◆上川あや

区長に一点、再質問いたします。

障害者の就労に関する移動支援についてです。
この問題については、事前の質問通告でも区長に問いただしますよと明確に明記をしたんですけれども、区長は答弁を避けられました。もう一度伺います。

少しの移動支援さえあれば、まだ働ける区民の納税者が毎日数時間、路上にはわせられ、とことん苦しめられて退職を迫られていると。こうしたことになると、結局のところ、福祉予算がふえるのではないですかということを聞いているんです。個別の個人の事情を勘案して就労に対する移動支援を部分的にでも認めている区は八区あるそうです。世田谷区は、この四角四面で冷酷な判断を正しいと思っているんでしょうか、区長の見解を伺います。

◎保坂 区長

過去のやりとりの中で、筋ジストロフィーなどの障害で、非常に移動が困難で短い距離を非常に苦労されて移動されているという話を聞きました。まず、その当事者の、障害をお持ちの障害当事者の立場に立って考えるという意味では、先ほどは子どもの話をしましたけれども、区として、財政の状況は大変厳しいということの中で、制度を設計するときに、すべてのケースについて取り組むとなるとこれだけの財政が必要だという発想から、どうしても慎重に検討というような答弁になると思うんですが、他の区でやっているということですから、それもきっちり見せていただいて、どのように個人に即して支援をされているのか、そういう障害当事者の立場に立って、四角四面とおっしゃいましたけれども、少し丸くしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

◆上川あや

もう一点、保健福祉部長に再質問させていただきます。

これも質問通告に明記をしたんですが、お答えがありませんでした。これまで答弁で繰り返されている「検討する」という言葉と「検討課題とさせていただく」、この「検討課題とさせていただく」という意味がわかりません。改善するべき課題だが、その改善は無理。だから棚上げにするということなんでしょうか、答えてください。

◎藤野 保健福祉部長

「検討させていただく」ということと「検討課題にさせていただく」ということを必ずしも明確に意識的に使い分けをしているということではございません。ましてや、棚上げにするということでもございません。
どちらにしても、比較的短期間、あるいは簡易に着手できる課題と、時間がかかり、検討のステップも多く踏まなければならないものがあるという意味での差は出てこようかと思いますが、今回、そういうご指摘も受けましたので、答弁の際には気をつけてご答弁申し上げたいというふうに思います。この間、特に意図的に答弁したものではございません。以上でございます。