◆上川あや
初めに、谷埋め盛り土に関して伺います。
2008年6月の区議会で、区の震災対策には重大な落とし穴があるとしまして、谷埋め盛り土について伺いました。世田谷区は、武蔵野丘陵の南端部に位置しています。丘陵地を宅地造成する場合には、起伏ある地形を切り盛りして平たんにならすことが一般的で、以前の谷状の地形の多くは盛り土によって隠されてしまいます。これが谷埋め盛り土ということです。盛り土が十分に締め固められ排水機能が確保されていれば問題はないんですけれども、それが不十分であったときには、その上の宅地が滑動を起こす、つまり地すべり災害を起こすということが問題になってきました。
阪神・淡路大震災では、大阪~神戸間の丘陵地二百カ所の住宅地が崩落しました。中越地震でも地震後、専門家が危険宅地と判定した個所が一千カ所を超えたそうです。また、ことしの七月、地盤工学会というところがまとめました「地震時における地盤災害の課題と対策―二〇一一年東日本大震災の教訓と提言―」、この本にも次のような記述が出てきます。
東日本大震災では、仙台市だけでも、主に谷埋め盛り土と関連した擁壁の崩壊により八百を超える宅地が深刻な被害を受けて危険宅地と判定され、さらに千二百を超える宅地も被害を受けて要注意宅地と判定された。過去の震災を振り返ると、実に谷埋め盛り土宅地の被害が多いのです。そして、こうした谷埋め盛り土は区内にもかなりの数あると見られているんです。
ここでパネルを提示します。資料提供協力
(京都大学防災研究所斜面災害研究センター釜井俊孝教授)これは二〇〇六年の一般質問でも使ったパネルです。地盤災害研究の第一人者、京都大学防災研究所の釜井俊孝教授から資料提供いただいたものです。この地図の中にある赤い部分、方々ありますが、これは何かといいますと、地震時に変動する可能性が極めて高い谷埋め盛り土ということです。下に見える帯状の部分が多摩川、下に見える赤いエリアが田園調布の東側の駅前住宅地です。黒いところが自由が丘の市街地で、上の大きな赤い部分、この上には駒沢公園、広域避難所がございます。
ということで、多摩川以北、そしてこの駒沢公園と田園調布を結んだ以西が世田谷区ということで、いかに地震時に滑動する住宅地が世田谷区内に多いかということがここからは一目瞭然です。
前回の質問の結果では、都と区で調整の上で、二十二年度末、昨年度末までにハザードマップを公表して取り組んでいくとしていましたが、ハザードマップの公開はございません。現状どうなっているのか、ご報告をお願いいたします。
◎男鹿 拠点整備第一課長
ご質問のハザードマップの公表は、国の宅地耐震化推進事業に基づくものですが、この事業は、昨年度開催された国土交通省の事業仕分けにおいて抜本的見直しになりました。このため国は、この結果を踏まえて、住民との合意形成等の課題に対応した事業促進に直結する指針等の作成に着手するとともに、有識者を交えた制度のあり方の検討を準備する予定にしておりましたが、東日本大震災の復旧、復興の対応により、そのスケジュールが大幅に遅延していると聞いております。ハザードマップ作成などの事業は都が行っており、都はこの制度の抜本的見直しの結果を踏まえた作業をするため、作業を中断していると聞いております。
◆上川あや
作業の中断をただ手をこまねいて見ているということでは非常に困るんですね。災害はいつやってくるかわからないわけですから、今からでもでき得る対策はとるべきだと私は考えています。
谷埋め盛り土の滑動、地すべりを防ぐかぎは、初めにも申し上げたとおり、地盤固めと水抜きにあるそうです。ハザードマップ作成のための一次スクリーニングのデータは区ももう既に持っているのですから、そのデータを区としてのリスク回避行動にしっかり生かしていただきたいと考えます。区ではこの間、都市型水害対策として雨水浸透を強力に推し進めてきましたが、こうした谷埋め盛り土宅地にまで見境なく雨水の浸透枡設置助成を出してきたのは、私は問題だと思っています。公金を使って区民の財産でもある宅地とその家屋を余計危険な状態にさらしてきたという可能性も否定できません。今後のハザードマップ完成の見通しは未知数だそうですけれども、最低限、調査の終了までの間、こうした宅地への雨水浸透枡の助成は凍結をするべきと私は主張いたしますが、見解はいかがでしょうか。
◎五十嵐 土木計画課長
新潟県中越地震等の際に、谷埋め盛り土等の大規模盛り土造成地におきまして、地下水等により地すべり的変動が発生しまして、がけ崩れや土砂の流出による災害が生じたことは承知しております。一方で、雨水の浸透は治水対策としての雨水の流出抑制や緑の育成に必要な地下水の涵養などの効果が期待できます。
先ほどの答弁にもありましたが、国や東京都では抜本的な見直しを予定しているとのことですので、当面の間、区といたしましては、従来どおり、地形や地下水の状況等から雨水浸透施設の設置助成が適当か判断してまいります。あわせて、今後、谷埋め盛り土につきましては、抜本的な見直しの進捗状況を踏まえつつ、関係する指針や検討状況等を考慮に入れ、国や東京都との連携調整を図りながら、区民の生命、財産を守るという基本姿勢にのっとりまして、区としてどのような対応をとり得るのか、引き続き検討してまいります。
◆上川あや
安易な模様眺めになることがないようにしっかりとお願いいたします。