◆上川あや

これまで、手話がわからない聴覚障害者に対する世田谷区の情報保障は、東京都聴覚障害者福祉事業協会に区が要約筆記者派遣事業を委託する形で行われてきました。しかし、この都のセンターから派遣される手書き文字による要約筆記者、また、パソコンを用いた要約筆記者による情報保障では、盛り込まれる情報量が話し言葉に比べて格段に少なくなるという問題がありました。話の枝葉やニュアンスの多くが抜け落ちてしまう、書き起こしが味気ない箇条書きだったりする、要約というよりも省略に近い、不満だけれども無料だから仕方がない等々、関係者からは非常に残念な評判を伺っています。
一方、先の総括質疑で取り上げましたパソコン文字通訳であれば、その場で話される内容全体を耳の不自由な方に伝えることが可能です。健常者と同じ情報をなるべく伝えていくという平等性の観点からは、聴覚障害者への要約筆記者派遣事業においてもパソコン文字通訳が選択できるようにコミュニケーション支援事業の幅をぜひ広げていくべきだと考えますけれども、この点についてはいかがでしょうか。

◎山本 障害施策推進課長

お話しのように、区では、協会に委託いたしまして要約筆記者を聴覚障害者の方へ派遣しております。要約筆記には、講座の内容などを手書きによって聴覚障害者の方に示す方法と、パソコン入力の方法がございます。現状の要約筆記では、一分間三百字程度の話し言葉、手書きではおよそ六十から八十、パソコン入力では百から百二十文字に要約してお伝えしていると伺っております。
お話しのパソコン文字通訳につきましては、話し言葉の八〇%から九〇%を入力することが可能であることから健常者とほぼ同様の情報を得られ、今後の聴覚障害者の社会参加の促進や情報保障に有効であると認識しております。聴覚障害者の日常生活を支援する観点から、パソコン文字通訳の導入につきましては、実施しているNPOなどの活動内容を把握し、障害者団体からのご意見も伺いながら検討してまいりたいと考えております。

◆上川あや

最後に、携帯電話などの移動体通信機器を利用した遠隔情報保障について取り上げます。

このシステムでは、話し手の声をワイヤレスマイクと携帯電話を通じて音声を文字にかえる通訳者がいる遠隔地に送ります。次に、音声を聞き取った通訳者がパソコンに入力し、文字情報としてインターネット経由で送り返します。最後に、聞き手は、携帯電話やパソコンで入力された文字情報を受信、表示することで話し手が語った内容を確認することができます。この一連の作業をほぼリアルタイムに行えるという利点があります。
これまでのパソコン文字通訳が通訳者の会場入りを必要としたのに対し、この遠隔システムでは携帯電話を利用することで通訳者が遠隔地から耳の不自由な方々をサポートできるようになり、同行、同席が不要になるという利点があります。この利点を生かしますと、外部の情報保障者が入りにくい学校の教室などでも字幕サポートが利用できますし、役所や銀行の窓口などの外出先でも高密度な情報を得られることになると思います。テクノロジーも進歩していますので、こうした遠隔情報保障も区の要約筆記者派遣事業にぜひ組み込んでいただきたいと考えるんですけれども、いかがでしょうか。

◎山本 障害施策推進課長

お話しのパソコンと携帯電話を利用して障害者の方へ講演会や説明会の内容を手元の携帯端末に送る遠隔情報保障でございますが、こちらは聴覚障害者の方々への日常生活の利便性の向上に有効であると考えております。パソコンを利用しての遠隔情報保障につきましては、今後新たな情報通信機器の情報や実施しているNPO団体の活動内容の情報収集に努め、区民福祉の向上に向けた検討課題とさせていただきたいと考えております。

◆上川あや

ご協力ありがとうございました。緊急時でありますので、早目にお話しくださいとお願いして時間が余りまして、これで終わります。