★パソコン文字通訳の活用が進みました。
70代では人々の約半数が難聴者となります。しかし補聴器は遠くの音をきちんと拾えず、手話の分かる人も少数。上川は、話し言葉を文字に置き換える「パソコン文字通訳」の活用を提案。2012年の「障害福祉施策シンポジウム」で同通訳が本格導入され、以降、活用イベントが増えました。
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◆上川あや
本日は、区の主催事業における耳の不自由な方々に対する知る権利の保障、情報保障について伺います。
まず端的に伺います。区の新年度予算案で手話通訳や要約筆記者等、聞こえに不自由のある方々への情報保障が予算化されているイベントはどれくらいあるでしょうか。手話通訳、要約筆記等情報保障の手段別にその数を、また、保健福祉部以外に所管するイベントがそのうちどれだけあるのかも含めてお答えいただければと思います。
◎藤野 保健福祉部長
現時点で把握できている範囲でございますが、手話通訳者派遣が三十六件、要約筆記者派遣が五件、手話通訳者と要約筆記者の両方を予定しておりますのが五件でございます。所管の点についてでございますが、保健福祉部以外が所管するイベントは三十一件となっております。
◆上川あや
情報保障の手段が手話通訳に偏っておりますし、要約筆記が非常に少ないというのが気になりました。また、この二つの方法以外の手段が想定されていないというのも課題だと私は思います。障害者手帳の有無にかかわりなく、耳の不自由な方々にできるだけ知る権利を保障していこうと考えますと、区の現状は非常に足りない部分が多いのではないかと私は考えます。
問題の第一は、情報保障の行われるイベントそのものが極めて限られている。その上に、手段が手話通訳に偏っていることです。無論、手話通訳は大切な手段ですし、その必要性は疑うところではありません。しかし、聴覚障害者とされる方々のうちでも手話がわかる割合は一般に一〇%台と言われていますので、現状の区の情報保障というのは、聴覚障害者に限って見ただけでも、その一部に対応したものでしかないと思うんですね。
また、第二に区の現状は、難聴者の存在、特に手帳の取得につながらない高齢難聴者の方々をほとんど無視していると感じます。
四十代以降、私たちも程度の差こそあれ、だれでも聴力は衰えていくそうです。結果として、七十代以降、半数が難聴者ということだそうです。これを当てはめると、国内に難聴者は一千万人以上いるとも言われていますし、世田谷区にこれを置きかえると六万人弱という計算になります。
加えて、高い技術レベルの補聴器の処方ができる認定補聴器専門店というのは非常に限られていまして、区内には四店舗しかありません。つまり、逆に言うと、大多数の高齢者が耳に合わない補聴器をつけたり、つけなかったりして暮らしているということで、当然のことながら、こういった高齢者に手話はわかりません。ところが、こうした数万人いる高齢者に対する区の情報保障の手だてというのがないんですね。そう考えると、今後は聴覚障害者はもちろん、より広く難聴の高齢者も視野に入れたユニバーサルな情報発信というものをそれぞれの部課で心がけていただく必要があると私は考えています。そこで、本日はユニバーサルな情報発信を図っていく有力なツールとして、パソコン文字通訳というものを提案したいと思っています。
パソコン文字通訳というのは、文字どおりパソコンで文字を書き起こして通訳するものです。パソコン要約筆記と呼ばずに文字通訳と呼ぶことが多いのは、パソコン入力なら、要約するのにとどまらず、話し言葉すべてを入力表示、つまり、通訳することが可能だからです。
一方、従来のOHPやノートを使った要約筆記は、人は一分間に三百文字話すそうですが、これを五分の一の六十文字に置きかえて書き起こす必要があります。当然内容は要約をする必要がありまして、話の枝葉はどうしても落としてしまわざるを得ないということで、できるだけ健聴者も耳に不自由がある人も平等に情報を発信していこうと思ったら、パソコン文字通訳のほうが優位性が高いと私は思っているんですね。
また、パソコン文字通訳は文字表示であるために、電子表示ですから、字にくせがなくて読みやすい。また、会場の音声をマイクで拾って電話回線に流すと、通訳者がその会場にいる必要もないということで、私が伺ったグループは、東京の会場にいながら沖縄の会場の文字通訳をしていらっしゃいました。さらに、スクリーンに映し出す以外にも、携帯端末などに文字を送ることが可能で、必要とする方に的を絞って情報提供もできるというすぐれものです。
以上のように、パソコン文字通訳、使い勝手が非常によいスキルなんですが、区内でこの人材も育っているのに、世田谷区の取り組みは非常に遅いんですね。
先月五日、ようやく地域整備課のユニバーサルデザインフォーラムというところで、初めてこの文字通訳を入れていただいたと伺っているんですけれども、当日の状況や評判はいかがだったでしょうか、お聞かせください。
◎板垣 都市整備部長
今お話がありましたように、先月の二月に開催しましたユニバーサルデザインフォーラムにおきまして、ユニバーサルデザインのサービスを実践されている企業の方から、視覚や聴覚、身体に障害のある方に対する接客のマナーやサービスについて講演をしていただきました。その際、聴覚に障害のある方のために、講師の話を伝える手話通訳とともに、プロジェクターに接続したパソコンを使用し、講演内容を逐次スクリーンに提供するパソコン要約筆記、今のお話だとパソコン文字通訳というほうが正しいかもしれませんが、それを試行したところでございます。
従来の手話通訳とともに情報量が多いパソコン要約筆記を利用したことによりまして、情報が複数の手段で得られたことから、フォーラム参加者には好評であったと理解しております。
◆上川あや
ご答弁ありがとうございます。ご好評ということで意を強くしました。
既に板橋区では、平成十四年からパソコン文字通訳を活用した生涯学習事業を行っているそうで、現在のところ、区と区内五大学で共催している高度な内容の連続公開講座、また、教育委員会が主催する生涯学習講座のすべてでこのパソコン文字通訳が入っているんだそうです。
所管課に電話して伺ったところ、当初は耳の不自由な方に情報を保障しようという発想だったんだそうですが、今では健常の受講者を含めて理解を助けるツールとして定着しているそうでして、耳の不自由な方だけではなく、聞き取りにくかったときなどに理解を助けるツールとして評判もいいそうで、特にアンケートでは高齢者の方に評判がいいそうです。
こうした事例を参考に、世田谷区でもぜひ積極的な導入を図っていただきたいと考えるんですけれども、いかがでしょう。
◎藤野 保健福祉部長
お話しのパソコンを活用した通訳も含めまして、手話がわからない中途失聴の方、高齢者の方に有効であるというふうに考えます。区といたしましても、新しい手段、それを使える団体等について、各所管に十分情報を周知して、聴覚障害者に限らず、高齢者なども含めて情報保障を一層進めてまいりたいと考えております。
◆上川あや
この問題は、保健福祉部の問題だけではありませんで、事務を所管するすべての課がどういった区民がいるのかを想定して、ぜひ踏まえていただきたい配慮だと思いますので、それを踏まえて、これからの進展を期待して待ちたいと思います。以上で終わります。