◆上川あや
本日は、LGBT当事者の一人としてお伺いいたします。
同性カップルを排除し続けている区営住宅三条例についてです。
まず、制度の基本、区営住宅の本来趣旨が軽視をされているように思いますので、再確認をいたします。
国土交通省は、区営住宅を含む公営住宅について、憲法二十五条、生存権の保障の趣旨にのっとり、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的として、住宅に困窮する低所得者に対し、国と地方公共団体が協力して低廉な家賃で供給する住宅と定義をしております。区営住宅もこの生存権保障の考え方に立つものということでよいですか。
◎岩渕 住宅課長
御案内のとおり、国土交通省は、公営住宅につきまして、憲法第二十五条、生存権の保障の趣旨にのっとり、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的として、住宅に困窮する低額所得者に対し、国と地方公共団体が協力して低廉な家賃で供給する住宅と説明しております。
世田谷区営住宅も条例第一条、趣旨の中で「この条例は、公営住宅法に基づく世田谷区営住宅の設置及び管理について必要な事項を定める。」と規定してございまして、委員お話しのように、憲法第二十五条に定める生存権の保障に立つものでございます。
◆上川あや
区営住宅が生存権保障の取り組みであるということが確認できました。
次に、生存権保障の対象外とできる区民にはどういった方々がいらっしゃいますか。
◎岩渕 住宅課長
憲法第二十五条には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」とございます。生存権は全ての国民に保障されているものであり、対象外となる区民はないものと認識してございます
。
◆上川あや
おっしゃるとおりです。生存権は区民に限らず全ての人に保障されなければなりません。当然同性カップルもその例外にはなり得ません。
ところが、現在の区営住宅では、現に住宅に困窮し、一定の収入以下という他の要件を満たしていても、入居申請すら認められない門前払いのグループが二つ存在をしております。一つは、暴力団員、もう一つは、人生をともに歩む伴侶、パートナーが同性である方々です。前者は暴力を理由に、後者は愛するパートナーの性別を理由に排除をされております。それぞれ何を根拠に門前払いとされるのか御説明ください。
◎岩渕 住宅課長
暴力団員につきましては、現在、区営住宅管理条例の第五条、資格要件の中で、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律、この第二条第六号に規定する暴力団員でないことが要件の一つとなっております。これは全国的に、公営住宅において暴力団員による不正行為等が多発していたため、平成十九年に国が、公営住宅における暴力団排除についてという通達を出し、これを踏まえて平成二十年に本条例を改正したものでございます。
同性パートナーにつきましては、現在、本条例第五条資格要件に婚姻を届け出をしないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者という事実婚の規定がございまして、この規定の中で同性パートナーを取り扱うことができないかというようなことも検討いたしましたが、同規定の表現は、民法の婚姻制度の概念を前提としているものであることから、同性のパートナーを事実婚に含め、解釈するということは難しいとの結論に至り、今回の区営住宅管理条例等の一部改正の御提案に至ったものでございます。
◆上川あや
生存権保障の取り組みでありながら、暴力団員は排除ができる、その理由は何でしょうか。
◎岩渕 住宅課長
先ほど御答弁申し上げました公営住宅における暴力団排除についてという国の通知の中で、公営住宅における暴力団排除の理由が述べられております。
その一つ目は、全国的に公営住宅において暴力団員による不正行為等が多発している状況であること、二つ目は、暴力団員を公営住宅に入居させることによって、公営住宅制度そのものに対する国民の信頼を揺るがすこと、三つ目は、国及び地方公共団体の補助等により、低廉な家賃で提供された公営住宅に暴力団員が入居する結果として、不当な利益を受け、暴力団の維持存続に利用されるおそれも生じるということでございます。
◆上川あや
同性カップルに類似の暴力性、反公共性などあるでしょうか。
◎岩渕 住宅課長
同性カップルの方々に暴力団員の一種の暴力性、反公共性はないものと認識してございます。
◆上川あや
当然のことです。つまり区として、同性カップルを区営住宅から遠ざけなければならない理由は何らないと。生存権も当然他の国民と平等に保障するべきと考えているが、条例の規定がネックになっているからそれを変えたいと、そういうことですね。
◎岩渕 住宅課長
今御説明いただいたとおりでございます。
◆上川あや
現代医学は同性愛を異常とはしておりません。同性愛も異性愛と等価値の正常な性のバリエーションにすぎないとしております。ところが、実際上は差別を受けている。異性愛ならフルセットの権利を手にし、同性愛では生存権を含め何ら権利が得られない。我が身に置きかえて、それら全てを奪われる区民の方々の痛みがおわかりになるでしょうか。
G7で同性カップルを認めない国は、ついに日本ただ一国になってしまいました。オリンピック憲章も同性愛者に対する差別を明示的に禁止しております。同性カップルを認める法律は現在の台湾、または香港、マカオでも上程をされており、日本はこの分野ですっかり後進国になり果ててしまいました。
この間の議論では、区民がまだまだ理解をしていないのではないかですとか、区民が受け入れているか調査をするべきと求める意見までもが上がりました。区民の理解が進むことは望ましいと思います。しかし、区民の理解の程度と本来平等でなければならない権利のそんたくとを結びつける議論には賛同などできません。区民の平等と偏見の程度とは本来別の議論であるからです。
性的マイノリティーを受け入れているかどうかの設問を他のグループに置きかえて考えてみましょう。精神障害のいる御家族を同じ区営住宅に受け入れられますか、ハンセン氏病の患者を受け入れられますか、おわかりになるとおり、全くあり得ない議論なんですね。副区長、こういった議論、どのようにお考えになるでしょう。
◎板垣 副区長
区といたしましては、差別や偏見をなくしていく人権問題に対しましては、行政が率先して取り組んでいく必要があると考えております。そういう意味で、今回の区営住宅管理条例の改正もその取り組みとして提案したものでございます。
基本計画に掲げました多様性の尊重の政策にしっかり取り組んでまいりたいと考えております。
◆上川あや
おっしゃるとおりです。
区民の平等を保障しなければなりません。公権力が偏見の程度に流されることなどあってはならないことです。生存権の保障に例外などない、そのことを改めて申し上げまして、私の質疑を終わりといたします。