区の公用車の一部に、エンジン音もなく、また車両の接近を知らせる、人工音の搭載もないままに、公道を走り続けている車があることについて伺います。

今回、ガソリン車以外の公用車で、人工の接近音の搭載がない車がないか区に確認したところ、5台が該当するとのことでした。
その全てがリースとのことですが、その駆動方式と車種、年式のそれぞれをご報告くださいますか?

議員の皆さんには、ぜひタブレットからパネルをご覧いただければと思います。1枚目の画像がその電気自動車、アイミーブとなっています。


公用車アイミーブ ※クリックすると拡大します

 
公用車アイミーブ

 
「ああ、区役所周辺でよく見る車だね」という方は多いのではないでしょうか?
こうした電気自動車や、低速で走るハイブリッド車は、モーター駆動であるためにエンジン音がありません。
そのため、歩行者が車の接近に気づきにくく、事故の危険が高まるとの懸念が以前より多くありました。
特に音を頼りに歩行時の安全確保を図る視覚障害者の方々からは「身の危険を感じる」との声が多く、国ではこの間、検討組織を立ち上げ、エンジン音にも似た「車両接近通報装置」の搭載を義務付けた経緯があります。

新型車は2018年3月から、継続生産車も2020年10月から義務化されましたが、区ではそうした義務化を経た以降も、音の出ない既存不適格の車を、なお運行しつづけてきたことになりますよね?
車両の接近音を後付けする製品も過去にはあったのに、今では生産終了になっています。なぜ後付けできるうちにしてこなかったのか?
また、2年前のリースへの切り替え時、車種の変更も可能だったのにしなかったのも何故でしょうか?

悪意がなかったとはいえ、直進時の安全対策を欠く車での走行です。
それらの運行状況もご報告くださいますか?

非常に頻繁に走らせてきたことは明らかですが、このままで良いとは思えません。

ここで2つ、大変興味深いレポートをご紹介します。

1つは「ハイブリッド車が視覚障害者の路地横断時の安全性や安心感に及ぼす影響」と題したレポートで、今回これを手掛けた慶応大学教授ともやりとりさせて頂きましたが、その一部データからご紹介します。

同調査は、単独歩行する視覚障害者が「路地を横断する際」どのような情報を手がかりに歩行し、どんな困難や不便さを感じるか、また車の音をどの程度利用しているのかを明らかにするため行われたもので、今回のリスクを考察する上ではうってつけのレポートです。

単独歩行が可能な視覚障害者、121名から回答を得た結果として――

路地の横断時、車の確認には「音を手がかりにしている」方が92.6%と圧倒的。
路地では車に気づかず危険な経験をしたことがあるとの回答も83.5%と大多数。
また、静かな場所でも危険な目にあったとの回答も32%と高く、路地で車等にぶつからないかどうか不安に思っている割合も52.1%と過半数に達しました。
いかに視覚障障害者の安全確保に「音が出ること」が重要か?は明らかです。

では、アイミーブの音に気づけるのかどうか――?

こちらも大変興味深いレポートがあるのでご紹介します。

次のパネルをご覧ください。
これは現在も、国土交通省のホームページで公開されている「ハイブリッド車等の静音性に関する体験会の結果報告について」というレポートです。


ハイブリッド車等の静音性に関する体験会の結果報告について ※クリックすると拡大します

 
ハイブリッド車等の静音性に関する体験会の結果報告について

調査の概要 ※クリックすると拡大します

 
調査の概要

 

被験者は15名の視覚障害者を含めた40名。
半数の20名ずつを、前方から車が来る人、後方から車が来る人とに分けて並べ、発進音と接近音のそれぞれが聞こえたら手を挙げていただくという実験が行われました。

その結果は、次のパネルを見ていただくと一目瞭然で、停止後の発進音の実験では、アイミーブが一番下の列になりますが、前方からの発進だろうと、後方からの発進だろうと殆ど手が上がらない。
車の発進音が小さすぎて気づけないのです。


停止後の発進音 ※クリックすると拡大します

 
停止後の発進音

 

次のパネルは、「低速走行の実験」で、こちらも一番下の列がアイミーブですが、接近音、通過音ともに気づけた人は殆どいない。
前から来ようと後ろから来ようと、走行音に気づけないのです。


低速走行の実験 ※クリックすると拡大します

 
低速走行の実験

 

ところが、区はこのアイミーブ5台に、安全確保に必要な人工音もつけずに15年間、頻繁に走らせてきた。
これが安全第一の公用車の運行といえるのでしょうか?
区のご見解はいかがですか?

加えて区内の道路の大部分は、歩車道の分離がありません。
区に確認したところ、区道の総延長、約1095キロのうち分離のない区道は930キロと大部分を占めています。
このようにデータを並べていきますと、どう考えても、接近音を出せないアイミーブを、区がそのまま運行し続けることには問題があると思うのです。
よって、速やかに、その運行をやめるべきと考えるのですが、区のご見解はいかがでしょうか?