◆上川あや

世田谷区のトイレの表示について伺います。

世田谷区が平成十八年三月に策定した世田谷区視覚情報のユニバーサルデザインガイドラインでは、トイレの案内サイン、ピクトグラムについて、世田谷区では男子と女子の色による区別は行わないことを基本とすると明記しています。主に色覚障害の方への配慮からつくられたというこのガイドライン、色に頼り過ぎないというコンセプトから、明るい色と赤の組み合わせが色覚障害の方にも比較的見分けやすい組み合わせであるにもかかわらず、男女のトイレ表示は一律黒と、色を排除しています。この策定から五年、実際、この男女同色のトイレ表示が区内の施設にふえているんだと思います。

すると、先日、知的障害のあるお子さんを持つお母さんから、トイレのサインが男女同色ではわからないというご相談を受けました。知的に障害がある場合、抽象的な図案だけでは理解させることが難しい、逆の性別のトイレに入ってしまうと大きな問題にもなりかねないということのご懸念で、それはそうだろうと私は思いました。
念のため、ほかの知的障害のあるお子さんのお母さんにも伺ったところ、やはり青が男、赤が女と、多くの子どもたちは図案ではなくて色で自分の入るべきトイレを覚えているというお話でした。こうしたお話を伺って思うに、男女同色の世田谷区のガイドラインということだけでは、一向に知的障害のある人たちに対して優しくないと考えるんですけれども、どうでしょうか。

◎市川 地域整備課長

委員ご指摘の世田谷区視覚情報のユニバーサルデザインガイドラインは、平成十八年三月当時の政策経営部広報広聴課と生活文化部文化・国際・男女共同参画課及び都市整備部街づくり推進課の三課でまとめたものでございます。このガイドラインの中のデザインにおけるユニバーサルデザインの項目にトイレのピクトグラム――いわゆる図記号でございますが――に関しまして、世田谷区では男子と女子の色による区別は行わないことを基本とするとの記載がございます。
当時はトイレのピクトグラムの表示につきましては、色覚障害のある方など色による識別が困難な方々に対する配慮や男女共同参画社会の実現に向けた取り組みにより、特定の例による性差別を一つでもなくすことが求められ、日本工業規格、いわゆるJIS規格の形を用い、着色しないことだというふうに思われます。
しかしながら、施設営繕所管からは、トイレ施設の整備に際して、男性用と女性用の区別はサインの表示だけではなく、壁面や床面などの色を工夫するとともに、施設によっては関係者からの意見をお伺いするなどして配慮していると聞いております。

◆上川あや

所管それぞれが配慮しているということだけでは困るんですね。ピクトグラムを同色にするというのなら、それを補完する配慮について明記をするのがガイドラインのあるべき姿だと思います。
問題はこれだけではありません。視力が弱い人たちの団体、弱視者問題研究会が、弱視者およそ五十名を集めた結果として、どのようなトイレ表示がわかりやすいのかを取りまとめ、二〇〇六年のロービジョン学会というところで学会報告をしています。その抄録を拝見すると、その提案の第一が、トイレサインの男性は青、女性は赤という色分けになっていました。
今回、この研究会の方に世田谷区の視覚情報のガイドラインではトイレのサインが男女同色なんですよというふうに申し上げたところ、ええっ、わかりにくいと一言で絶句されてしまったんですね。やはり区が標準とするトイレサインは、弱視の方にも優しくないんだなと思ったんですけれども、このあたりはいかがですか。

◎市川 地域整備課長

世田谷区視覚情報のユニバーサルデザインガイドラインは、多くの情報をわかりやすく伝達することが求められる中、区が発行するポスターや印刷物、ホームページ、案内板などが、だれに対しても見やすくわかりやすいデザインや、さまざまな配慮が不可欠となったという認識のもとに、平成十八年当時に取りまとめました。
ガイドラインの記載内容といたしましては、JIS規格を含むユニバーサルデザインについて、特に注意すべき点を要約し、活用しやすいように具体的な配慮や工夫など基本的事項を掲載いたしました。
本ガイドラインも策定後五年が経過しております。また、ホームページのJIS規格も先般改定されましたので、現在、改定を視野に入れておるところでございます。
今後ともユニバーサルデザインに配慮した、だれにでもわかりやすいサイン整備を目指してまいります。

◆上川あや

愛知県の大府市や、あるいは神奈川県の相模原市でも、一たん男女同色にした後に、利用者の実態調査を行って混乱が見られるということを報告していまして、障害者や高齢者に対しても優しくないということで、これを改めているんですね。こういった情報も参考に、ぜひ柔軟な発想で改善してください。

問題はこれだけではありませんで、視覚情報の世田谷区のガイドラインですと、誘導サインの表示位置を、壁につける場合には地上百八十センチ以上、天井からつり下げる場合には高さ二百十センチ以上にするべきだとしています。人込みでもわかるようにということを書いているんですね。
一方、先ほどの弱視者問題研究会の研究結果の抄録を見ますと、次のように記述されています。弱視者はサインに近づかないと見えません。せっかくのサインが設置位置で台なしにならないようにしたいです。トイレ入り口横の壁にお願いします。中に入らなくても見えるところです。目の高さ(床面からおおむね百六十センチ)にお願いしますとしています。ここでも世田谷区のガイドラインは弱視者の困難に対して非常に配慮が薄いと思うんです。この高さもしっかり明確化するべきだと思いますが、いかがでしょうか。

◎市川 地域整備課長

委員お話しの視覚情報のユニバーサルデザインガイドラインに記載していますサインの位置の高さにつきましては、目的までの施設案内、この場合はトイレになりますが、そこまで誘導するためのサインでございます。そのため、施設までの誘導や方向などを示すサインでございますから、人込みの中でも認識できる高さが必要でございます。そのために、壁に取りつける場合は床面から一・八メートル以上、また、天井からつり下げる場合は床面から二・一メートル以上の空間を確保した上で設置する旨を記載しているものでございます。
トイレの入り口につきましては、男性用、女性用の別がわかるように、壁面や床面などの色を工夫しながらサインとあわせまして、ユニバーサルデザインに配慮した整備を行うよう啓発してまいりたいと思います。

◆上川あや

いろんな方々に優しいということのコンセプトだったと思うんですけれども、結果を見ると、非常に色覚障害の方に配慮していることはわかりますが、ほかの問題が抜け落ちてい過ぎますね。これはしっかり改善してください。それで、啓発にとどまらず、しっかりと明文化することが大切だと思うので、その結果を私はチェックしたいと思っています。よろしくお願いします。