◆上川あや

平成二十六年度世田谷区一般会計予算外五件に賛成する立場から意見と要望を申し上げます。

第一に申し上げるのは、議会で口にした約束はぜひ守っていただきたいということです。
さきの補充質疑で取り上げたとおり、二年前の予算委員会で提起した区内の戦争体験者の声の映像資料化が全くスピードアップされておりません。同時に取り上げた区内に残る戦争遺跡の活用についても全くの手つかずです。どちらも二年前、区長から前向きな御答弁をいただき、その場では感謝の念すら抱いた案件なのですが、所管部の対応は笛吹けど踊らずで、二年間全くの放置です。
実現困難な課題ならいざ知らず、比較的改善が容易な課題まで放置をされるのはどういうことなのでしょうか。この件に限らず、区長の前向きな答弁、発言が、その後の事務改善につながらない事案は多いのではないでしょうか。

区長が初めての定例会招集挨拶で掲げた情報公開と区民参加も経過は同じだったと捉えています。区長はこの挨拶で、情報公開の徹底は金と時間がかからない行政改革の道具でもあります。ふだんから監視、チェックを受けてこそ、予算の効率的な執行や行政組織の肥大化をとめることができるとも語られた。ならばと、同年十一月の一般質問で私からは、区の政策決定の最高機関、庁議を公開してはどうかと区長に問いました。
区長も庁内で議論していきたいと積極的に応じてくださったはずでした。
しかし、御答弁の九カ月後、所管部に検討状況の報告を求めると、慌てて二十三区の状況を調査し始めました。一年半後、検討状況の報告を求めると、庁議にかかる案件名のみ開示するという救いようのない回答で、驚き、あきれました。これが区長の掲げる情報公開の中身なのでしょうかと直後の予算審議で伺うと、案件名だけではわかりませんので、議事要旨などを公開していくように指示したところと区長が答弁を返し、これでようやく具体策の検討にエンジンがかかったようですが、事ほどさように言いっ放しで指揮、監督の行き届かない事案が多過ぎます。私はリップサービスを求めてなどおりません。実行を求めているのです。

また、教育委員会でも言行の不一致は繰り返されてきました。特に深刻であるのは、自殺念慮等が高いこと、不登校の経験割合等が高いことが指摘されている性的マイノリティーの子どもたちの相談状況・実態把握調査で、従前の答弁に反し、性的指向を切り捨てた調査が行われたという事実です。子どもの痛みに寄り添おうとしない不誠実な対応の連続に不信感が募るばかりです。
区教委は子どもたちに約束は守りましょうと教えているのではないのでしょうか。しっかり約束を守っていただかなければ困ります。今後もその答弁の履行状況を注視し、必要とあれば六回目も七回目も質疑してまいります。約束を実行してください。

第二に指摘したいのは、区民の多様性への理解はまだまだ足りていないのではないかという点です。
区は昨年、条例化した基本構想で多様性の尊重をうたいました。その多様性には性別、国籍と並び障害の有無も明記されておりました。また、区のユニバーサルデザイン推進条例の前文も「すべての人がその個性及び能力を発揮することができ、自由に様々な活動に参画し、自己実現をすることができるよう、すべての人にとって利用しやすい生活環境を整備していく」とその意義を語りました。
ところが、企画総務領域の質疑で取り上げたとおり、多様な区民の区政参加を下支えするべき広報広聴の取り組み自体に障害理解が決定的に欠けていると感じざるを得ません。区がMXテレビで放映してきた広報番組「魅せます!せたがや」に手話や字幕の挿入等、耳の不自由な方への配慮は全くないですし、区の重要な政策決定に対するパブリックコメントの実施要領も、文字を書き、あるいは入力し、提出することのみを正式手続と定めています。文字を書くこと、入力することの難しい障害者等の存在を想定していないのです。
何より事態が深刻なのは、これらはいずれも私からの議会質問によって一旦は事態が改善された、あるいは改善が約束されたサービスであるということです。議会からのチェック、関与が弱まると、途端に所管部は無配慮に戻ってしまう、こういうことでは困ります。多様性に配慮したルールの再検証、その明文化、周知の徹底を改めて求めます。しっかりと取り組んでください。

第三に、思い込みを柔軟に改めていきましょうということです。
総括質疑では主に高齢化で足腰が弱ってしまうロコモティブシンドローム、通称ロコモに対応した道づくりを取り上げました。ロコモの背景には、骨粗鬆症、変形性膝関節症、脊柱管狭窄症の三大疾患があるとされ、これらの症状を一つでも持つ人は四千七百万人に上ると見られています。区内にも数十万人がいる計算です。こうした方々の共通点はスムーズに歩き続けることが難しいということ、こうした方々に求められている道づくりは休み休み歩ける道づくり、ところどころで座って休める道づくりです。
ところが、従来の道路整備では、歩道にベンチを置くことはむしろ御法度と考えられていた経緯があります。近年、世田谷でもバス停ベンチの設置等が求められ、変化の兆しが見られるようにはなりましたが、これはむしろバス通りへの例外的な措置であって、全体的なベンチの整備にかじを切るものとはなっておりませんでした。
さきの質疑では、三鷹市で平成十八年度より始まったベンチのあるみちづくり整備計画を紹介しましたが、三鷹市では広い歩道のある幹線道路では百メートルから二百メートル置きに、河川沿いや遊歩道では五十メートルから百メートル置きに、また、歩道のない生活道路でも、市民の要望に応じて柔軟にベンチを配備する計画で、全市的にその整備に取り組んでおります。
区でもこうした計画的な整備が不可欠だと考えます。二十七年度からの次期ユニバーサルデザイン推進計画では、しっかりと目標あるいは指標を定め取り組んでいただくよう求めます。

最後に、平和を守る取り組みについてです。
近年、これまでにないほど隣国との関係が悪化しています。戦後の繁栄を下支えしてきた平和憲法も、正当である手続、憲法改正を経ずして骨抜きにされるのではとの懸念が高まっています。
こうした中、世田谷では平和資料館を新たに整備する計画ですが、展示施設の大きさはこれまでと同等、その内容を充実させる具体的な施策もなく、単なる器の移しかえに終わるのではと懸念をしています。
区のこの分野の無関心を象徴するように、さきに申し上げたとおり、戦争の悲惨さを次世代に伝えていく新たな取り組みは極めて低調と言うべきです。また、区教委の教育ビジョンに平和教育の「へ」の字もないありさまです。
平和を守り抜くためには、不断の努力で市民の意識を高め、戦争を許さない世論をつくることが鍵と考えますが、昭和六十年八月、国の内外に向けて平和都市を宣言した世田谷区政の機運は三十年を経てしぼんでいるのではないかと感じざるを得ません。今こそ原点を見詰め直し、しっかりと取り組んでいきましょう。そうお願い申し上げまして、レインボー世田谷の意見といたします。