◆上川あや

今月より動き出します世田谷区がけ・擁壁等防災対策方針について伺います。

区では、崖や擁壁の崩壊から区民の生命と財産を守ることを目的に、世田谷区がけ・擁壁等防災対策方針を今月中旬に策定する方針です。現行案を見ますと、擁壁の改修、築造がえを検討している区民や、崖や擁壁の崩壊に不安を抱いている区民を支援するために専門家の派遣制度を構築し、平成二十九年度からの派遣を目指すとしています。
ところが、その評価点検の結果、崖や擁壁が危険だとわかったとしても、それを安全にするための整備費等の助成は一切出さない方針だということです。つまり、専門家がチェックをして危険は知らせるけれども、あとは全額自腹でお願いねというのが世田谷区の対処です。果たしてそれが実効性ある方針と言えるのでしょうか。

この春、私が議会事務局を介して二十三区を調べたところでは、都内では既に山の手エリアを中心に九つの区に崖地、擁壁の改修費助成制度がございました。新宿区、台東区、北区では高さ一・五メートル以上から、また、その他の区でも二メートル以上から民有の崖、擁壁に改修費助成を出すとしています。また、新宿区や大田区では、建築基準法上の道路に面した擁壁にも改修費助成を行いまして、災害の発生時に避難路、また輸送路となる道路の安全を確保する策を講じております。

ところが、当区は区道の安全確保にすら改修費助成を出さないという方針だそうです。
道路を管理する土木部に確認したところ、区道沿いの崖、擁壁に危険個所があることは既に確認もされているということでした。どのような調査結果なのか、そこに民有地は含まれていないと言えるのか、確認を求めます。

◎田中 土木計画課長

世田谷区の区道沿いにある危険な崖、擁壁でございますが、平成九年度の道路防災総点検において、当時の点検対象道路の主要な区道百九十八路線、延長百二十五キロメートルのうち、明らかに擁壁が含まれている六十五路線の延長約五十六キロメートルについて点検を実施いたしました。その結果、今すぐに対応しなければならないものはないものの、早期に改修等を行うことが望ましいものとして、要対策箇所が七カ所、監視を行う箇所が十六カ所ございました。
平成二十八年度現在、要対策箇所の擁壁は三カ所撤去されたため四カ所となってございますが、そのうち民有地の擁壁は三カ所ございます。また、監視を行う箇所につきましても現在十二カ所ございまして、そのうち十一カ所が民有地でございます。

◆上川あや

つまり、大半の危険な箇所は民有地であって、区は直接手を出せないということでなんですね。
今回区に、一般的な崖、擁壁等の改修経費はどれくらいかかるのかということの説明を求めたところ、平均的な擁壁として高さ三メートル、延長十メートルのL字型擁壁を築造する直接工事費だけでも約百八十八万円、これに古い擁壁の解体費用、仮囲い費、電力給排水の仮設費や運搬費、人件費等、現場に応じた諸経費を足しますと、四百万円から五百万円に膨れ上がることも珍しくないという御説明でした。この認識に誤りはないでしょうか。

◎並木 防災街づくり課長

お話しのように、土木工事積算標準単価等を参考に、平均的な擁壁として、高さ三メートルで鉄筋コンクリート造のL型擁壁を築造した場合、躯体工事費や仕上げの工事費など、材料費、労務費、直接経費などの直接工事費を計算いたしますと、長さ一メートル当たり約十八万八千円となります。延長距離が十メートルですと、直接工事費だけで約百八十八万円となりまして、その他に共通仮設費、現場管理費などの諸経費及び消費税がかかってまいります。
工法や既存の擁壁の状況、解体費用、くい工事などの有無によりまして新設や補修の費用は大きく異なってまいりますが、こうした現場に応じた追加工事を加味した場合、費用が四百万円、五百万円になる場合もあると考えております。

◆上川あや

これだけ多額な経費がかかるのに、区は民有地に対して支援をしないんですね。非常におかしなことだと思います。崖、擁壁の改修費を全額個人が負担するという現在考えているスキームでは、その金額が大き過ぎて危険が危険なまま放置されることを危惧いたします。
道路管理をする土木部としましても、防災街づくり担当部のほうに改修費助成を制度化していただいたほうが所有者に改善のお願いがしやすくなると考えるのですけれどもいかがでしょうか。

◎田中 土木計画課長

道路法では、道路管理者は道路の構造に及ぼすべき損害を予防し、または道路の交通に及ぼす危険を防止するため、道路に接続する区域を条例で定める基準に従い、沿道区域として指定することができるとされています。区では、条例で道路の沿道区域を定めており、その範囲は道路に隣接して高擁壁がある場合は、その擁壁高さの一・五倍とし、最大二十メートルでございます。
沿道区域内にある土地、竹木、または工作物が道路の構造に損害を及ぼし、または交通に危険を及ぼすおそれがあると認められる場合、その土地等の管理者は損害を予防する義務がございます。また、道路管理者である区は、その土地等の管理者に対し危険を防止するための必要な措置を講ずべきことを命ずることができます。
こうしたことから、例えば土地等の管理者が道路の危険防止のため擁壁等を改築するに際して多額の費用がかかる場合があることから、委員お話しの助成制度を活用することによりその負担が軽減され、ひいては道路の危険防止につながる可能性があることは想定されます。

◆上川あや

ならば、やはり改修費助成は出すべきだと思います。区がアドバイザーを派遣する以上、危険が確認されたその個所については、たとえそれが民間宅地で接道面でなかったとしても一部助成を出して応援するべきだと私は考えます。また、最低でも公共施設や避難所等につながるような道路沿いの危険な崖、擁壁については確認されていますので、これにしっかり支援しないのはおかしいと考えます。いかがですか。

◎並木 防災街づくり課長

現在、東京都は人工崖の調査を行っておりまして、その調査を受けて、平成三十年度以降、人工崖における警戒区域、特別警戒区域の指定を予定しております。
区といたしましては、引き続き擁壁等の所有者に適切な管理を要請していくとともに、来年度より運用を始める予定の専門家派遣制度や土砂災害特別警戒区域の支援を行う中で、区民や議会からの御意見、他の自治体の取り組みなどを参考にしながら、道路を含む崖、擁壁等への工事費助成を含め、実効性のある方法を検討してまいります。

◆上川あや

ぜひお願いします。専門家を派遣して、この崖は危険だよとアラートの火をつけるだけつけて肝心な消火に手をかさないというのは非常におかしいことですので、ぜひ現方針策定までに改めていただくように最後に求めまして、私の質問を終わります。