日本帰国。
空港に向かうまでの2時間ほど、アムステルダム市内を歩く。
アンネ・フランクがナチスの目をしのんで暮らした旧居跡を通過。
本当はアンネの家も是非とも見学したいと思っていたけれど、今回は時間切れ。
旧居跡を取り囲むように見学者が長蛇の列を作っているのをながめるだけにする。
しかし、ここまできたことは無駄ではない。
アンネフランクの家と目と鼻の先に、ナチスドイツの迫害によって犠牲となった同性愛者を悼み、その悲劇を後世に役立てるためのモニュメント「HOMOMONUMENT」が見学できるのだ。
ナチスによる大量虐殺と言えばアンネ・フランクに象徴されるような、ユダヤ系へのホロコーストが第一に思い起こされる。
しかしユダヤ系以外にも、ロマ、障害者、政治犯や同性愛者らが、ナチスに手によって大量殺戮の虐殺されている。
アンネ・フランクの家に並んだ、アムスで一番高いという西教会の塔を背景に、運河に面してそのモニュメントはあった。
静かな水辺に映るモニュメント。
ガイドブックに紹介されることなく、普段は観光地として脚光を浴びることもないスポットであるが、アンネ同様、理不尽な迫害による犠牲者たちを悼むものである。
この地にモニュメントが設置されたのは、事実この地から多くの同性愛者が送り出され、また処刑されたという史実に基づいているのだという。
ナチスは彼らにとっての囚人を識別する印をそれぞれに付けた。
ユダヤ人にはイエロースター(黄色いダビデの星)、政治犯にはレッドスター、そして同性愛者にはピンクトライアングル。
ピンクのトライアングルは現在、同性愛者がそのプライドのシンボル、権利獲得運動の象徴としても用いるようになった。
過去の悲劇を後世につたえより良い方向に変えてゆく意志がそこにはこめられている。
今回、アムステルダムの最後に訪れたこのモニュメントにも、ピンクの石が敷かれ三角形をかたち作る。
アンネの家を見学しようと、多くの人々が列をなすすぐ脇に、同じく狂気に翻弄され犠牲となった人々を悼む場があることを知る人はあまりに少ない。
アンネフランクの過ごした部屋は、世界中から訪れる見学客のため傷みが激しく、その後改修されて当時そのもの面影が損なわれたともきく。
2つのスポットのそれぞれの変遷を知り、なんとも複雑な想いにとらわれた。
このモニュメントの見学を終え、歩き出すと前方にレインボーフラッグ。
多様性の象徴として多用されるレインボーカラーであるが、6色のレインボーは、特に性的少数者のプライドを象徴するものでもある。
屋根には「gay
& lesbian info」の文字。
ここは、地元ボランティアが中心になって運営している同性愛者のための情報発信基地Pink
Point がそこにある。
アムステルダムで唯一のお土産に、レインボーのマグカップを求めた。
数多い自由に入手できるリーフレット、フライヤーの中には、性的少数者の差別犯罪に対応した相談窓口の案内もある。
その運営は警察のプロフェッショナルによって行われている。
警察に勤務するゲイ、レズビアンがその中心になって活動しているのだという。
同性間の結婚が世界で始めて合法化された同国にあっても、偏見に根ざした犯罪はやはりゼロではないということをあらためて思う。
世界でもっとも寛容と思われるオランダ、その首都アムステルダムにおいても差別と人権をめぐる地道な取り組みが、まだまだ求められているようだ。
急ぎアムステルダムを後にする。
目指すは、夏本番の東京である。
◆ ◆ ◆
朝の成田空港に到着。
空港の気温計は既に31.7℃を示している。
冷夏のアムステルダムを発ってなんだかものすごい変化。
ジットリと生暖かい風に、帰国を体感。
海外でのネット環境が準備した通りには、なかなか構築できず仕事もたまっている。
時差ぼけ早く解消してがんばらなきゃ。