●あや流!一期一会日記  〜 二度と来ないこの瞬間を大切に。 いっぽずつ歩んでいこう 〜

4月14日 ・ みんなの成果

都知事戦も終わり、久し振りに街頭活動に繰り出す。
朝から経堂、烏山、梅ヶ丘、下北沢、そして事務所最寄りの宮の坂へ、連続して一連の街頭活動をこなす。

多くの同じ立場の挑戦者が、一斉に街にくりだす今日。
ボランティアの方々は、朝6時から駅立ちの場所をとったり、資料の配布に各地で精を出したりと皆さん忙しい。


午前中、事務所から連絡があり、総務省から私の立候補届けに関する見解がでたとの報告。
束の間、事務所に顔を出しファックスに目を通す。

「立候補者が戸籍上と異なる性別を記載して立候補届け出をした場合、
戸籍通りに訂正するよう注意を促すべきであるが、これに応じない場合はそのまま受理せざるを得ない」

だそうである!

ファックスの文面を除きこみ私たちが喜びの悲鳴をあげる。
つまり、総務省は私の女性としての届け出を事実上みとめると表明したのだ。


この結果を受け急遽、夕方の駅立ち会場の下北沢にマスコミ各社が結集する。

マイクを握り、乗降客のみなさん、取材記者さんの前でよろこびのご報告。

声をあげ行動することで社会が少しずつ動いていることを実感する。
一歩ずつ、前進してゆくさまを多くのボランティアのスタッフと共感できたことを最高に嬉しく思った。


総務省の異例の見解表明について語り、これからの抱負をお話しする私の横で、
ノボリを掲げるスタッフが思わず涙ぐむ。
わたしの報告に熱心に耳を傾け、頷いてくれる人達も駅前ロータリーのここかしこに見受けられ、
思いが伝わったと感じた瞬間、わたしもつい涙声になった。


今回の画期的な総務省の見解は、何もわたし一人の成果ではない。
多くとともにあゆんできたその成果だと思う。
ナミダ目になっている彼女に声をかける。

「これは、みんなで勝ち取ったんだよね!!」

ともに歩み、これからの2週間を共に走りぬけようとしてくれているみなさんを私は誇りに思っている。
本当にみんなどうもありがとう!!
これからも、上川あやをどうかよろしくお願いいたします!m(_ _)m


4月13日 ・ 急遽大集合

今日は若竹さんと、車に乗り込みご挨拶まわり。
これまでマスコミ各社で取り上げて下さった記事をファイルし、いざ出発する。

当初、順調に走りはじめたものの、世田谷に多い細い裏路地と一方通行に阻まれ、
カーナビがあろうとも思うような挨拶まわりが難しい。

下北沢周辺では人の波に圧倒される。 歩く人の早さ以上のスピードで走ることも難しい。
コインパークに車を停め、徒歩で数ヶ所のご挨拶先へ。


Tシャツで歩く人も多い陽気のなか、喉を渇かし歩みを進める二人の女。
洒落たカフェや個性的な品揃えの多い商店街を、ちょっと目移りしながらも黙々と目的地を探す。
そしてごあいさつ。

「一連の活動が終わったらゆっくり買い物したいね」
「暑ぅ〜。冷たいビールのんだらサイコーなんだけど」

二人、苦笑しながらも次の訪問先へ。


夕方、どうにか事務所に帰着。
引き戸をあけると驚くほどの人だかり。座る場所さえ譲り合う必要があるほどの勢いだ。

事務所の強力助っ人、ニシオ君が緊急招集。電話をかけまくってくれたよう。
多くのボランティアの方々も急なお願いに嫌な顔ひとつせずお越しくださった。

そして、にぎやかに作業を進めてくださっている。
みんな本当にありがとう!!


私も夜のご挨拶先へ。

事務所に戻りがてら、帰路に就くボランティアの方とすれちがう。
温かな笑顔に接し、身体も軽くなるように感じる。

《 せっかくのお休みをごめんなさい 》

温かい気持ちをありがとう。
疲れをみせず、笑顔をみせてくれるボランティアの方たち。
わたしも負けずにがんばらなくちゃ!だよね。


4月3日 ・ 桜の咲く街で

昼過ぎ。 雑誌社の取材をお受けする。
数日前に突然の打診があったこの取材。 記者さんと写真家のお二人で宮坂の私たちの事務所にいらっしゃった。
取材の趣旨について簡単にご説明いただいたのち、実質的な取材がスタート。
これまでのライフヒストリーのご説明に1時間。 そして事務所内での撮影。
一通りの話を終え、請われて野外撮影に。

春の陽光を求め、事務所からほど近い世田谷八幡宮へ。 桜はすでに満開に近い。
境内脇のゆるやかな坂。 満開の枝ぶりの下で和やかに撮影を終える。
宮の坂のカフェで取材を続行。
家族の理解について、どうして今のような活動をはじめたのか…
家族の話になるとどうしても涙腺が緩む。 ともかくも泣き笑いの2時間半。 やっと取材を終える。

夕方、一人でご挨拶まわり。 4時ごろ遅めの昼食をとる。
豪徳寺駅から北側に延びる山下商店街。 いつもお客様で混みあい忙しい様子の飲食店。
これまでにも何度か店頭をうかがいつつ、ご迷惑をおかけしたくないからとご挨拶を控えてきたお店があった。

《今日のこの時間ならご迷惑にならないかもしれない…》

入店すると、お客さんはチラホラ。 食事を終え、ご迷惑にならないよう手短にご挨拶をさしあげる。
「上川あやと申します。ご挨拶が遅れて申し訳ございませんでした。 これからまたお騒がせしてご迷惑をおかけします」

「あらあら (と、知っていらっしゃるふう)。 ホントにきれいね〜。 体に気を付けてがんばってね!」

この豪徳寺の街で、最初にお力を貸してくださったケーキ屋に立ち寄る。
マスターが、お店に入るなりやわらかな微笑みで迎えてくれる。
「がんばってるんだって? 話は聞いているよ」

このところ街角でいろいろな方にお声をかけていただくことが多くなった。

「がんばってな」  朝、事務所の戸を開けていると、自転車を止めお声を下さる男性。
「応援しています」  駅のホームで握手を交わしてくださった男性。
「こんな遅くまでやってるの?」  商店街の裏路地で店主さんが声をかけてくださる。
「大変だろうけど、僕は応援しているからね」

夜半すぎまで事務所で作業している私たちに温かな差し入れを届けてくださる方もいらっしゃる。 どの方も温かく本当にありがたい。 頭が下がる思いだ。
皆さんのお気持ちを無駄にしないよう頑張ろう!
切にそう思った。


3月25日 ・ 奮起

今朝は街頭活動がない。 区役所へ届け出の事前審査に向かう。

待ち合わせをした区役所まえの広場にはすでにマスコミが数名いらっしゃる。
これまでにお付き合いのあったマスコミ関係者を中心に今回の区役所訪問はお知らせしてあった。 届け出に向かう10時近くには、テレビ局、制作会社、通信社、新聞社など15名近くにマスコミが膨らんだ。

区役所まえの広場で、マスコミ各社の取材を受ける。
届け出に必要な戸籍謄本の性別欄、提出書類の性別欄を指差し、区役所を背に撮影、インタビューを受ける。

事務所の同行者も含めて20人近い陣容で乗り込む。


区役所に入ると、選管に向かう我々の前に広報担当者が。 候補者と事務所の者を除いて、審査中の取材は遠慮してほしいという。

マスコミを審査する部屋に入れる入れないの押し問答が20分つづく。
若竹さんが、ひとつひとつ相手側が渋る根拠を問いただし、その斬り込みが功を奏し、結局全員のマスコミが審査会場をする部屋に入ることができた。 問題が発生したら退出してもらうとの条件つきで…。

結局のところ、審査が始まってしまえば必要な記述の訂正を除き至ってスムースな展開。(あのゴタゴタは何の為だったのだろう…)
な、なんと性別が空欄のままの肝心の届け出書式もすんなりと受け取られた。

《ちょ、ちょっとこのままでいいの??》

聞けば既に都の選管を通じ、総務省に照会中であるという。
公職選挙法には、候補者の性別について明確な規定はないが、戸籍上の性別によらない届け出は前代未聞とのこと。
結論が出しだいお知らせくださるとのことだけれど…
どうなることやら。。。


どうしても性別記載が必要であれば、女性として臨む。
男性としての記載が強制された場合にも、取りやめることはしない。
それでも抗議の意志はしっかり表明するつもりだ。


◆◆◆


午後もふりつづく、あいにくの雨。 街頭活動は、地元豪徳寺。
マイクを握って、元気に活動を始めた。
残り少ない街頭活動に、ボランティアスタッフさんたちも気合いが入っている。

これまでの雨の中でのこうした活動では、チラシを受け取ってくれる確率は格段に落ち、濡れてふやけたチラシがたくさん残ってしまうのが通常だったのだけれど…
これまでの常識を上まわる早いペースでチラシが受け取られていく。
両手が埋まっているにもかかわらず、傘を握るその指にチラシを挟んでお持ちになる方も多くお見かけした。

「がんばれよ!」 ガッツポーズを見せてくれる男性。
「応援していますよ」 微笑みを返してくださる方々。
拍手をしながら改札を出てくる女性もいらっしゃった。
「前にももらってます。がんばってくださいね」 といった反応も多く頭が下がった。


とつぜん 「稜線」 を越え、視界が開けたかのような状況に正直ちょっと驚いた。
夜の活動に間に合うようにと用意してきたチラシが雨の日の昼間の活動であらかた無くなってしまった。

スタッフからの補充を待ち、休憩をしようと立ち寄ったカフェ。
柔和なマスターが声をかけてくださる。 「出るんですってね」
温かいココアとあわせて、マスターのやわらかな笑顔にホッとした気分になる。


◆◆◆


夜。千歳船橋。

街頭で活動の準備を始めると、目の前に車が停まる。
見れば、サラリーマン区議Aさんが降りてくるじゃないですか!!

「はじめまして。 これからこの場所で街頭活動をさせていただくつもりの上川あやと申します。 よろしくお願いします!」 名刺を差し出す。
頭をさげる私を横目に、Aさんからは自己紹介もなく、名刺を出すつもりもないらしい。
「ここでやるの? 僕もこれからここでやるんだよ。 どこか別のところでやってくれない?」

「ふたり同時というのも何ですので、交代ということでお願いできませんか?」

「別にいいんじゃないの」 すでにAさんの視界に私は入っていない。 そのまま準備を始めている。
話し合いは不成立。致し方ない…準備を済ませ、私はマイクを握り話しはじめた。


数分、私の様子を眺めるAさん。そしてAさんも拡声器を使って話しはじめる。
高架下の改札前に両者の声が反響する。何をいっているのか聞き分けるのは困難な状況だ。
乗降客は驚いた様子で改札から出て私たちを見比べている…

《なんだかメイワク》

急ぎ、わが 「ご家老」 に電話をすると 「先方のスタッフに代って」。

Aさんのチラシを配布しているスタッフの方に携帯をお渡しする。
「ご家老」 は15分交代を提案したようだが…
先方のスタッフの方に結論をお伺いしても、判断はAさんに仰がない限り決まらないという。
Aさんはマイクを持ったまま話し続ける。


ややあって、到着した電車から一群のひとが降りてきたら、その都度交代することを提案される。
提案にそって始めてはみたものの、登り降りの激しいラッシュアワーで、正確に平等を期するのは難しく、乗降客の小波と大波の線引きがアイマイな取り決めゆえ、うまく噛み合わない。

「さきほどもう2回、降りてくる人の波があったんですけど…」 やんわり抗議をしてもAさんは 「そうぉ?」 とつれない。
どうしてもお互いの認識が少しずつズレる、何だか険悪な雰囲気になってしまった。

《だから時間で交代しようっていったのに…》

「今日は二人の街頭活動が重なっております、配布物が二種類ございますがどうか誤解のないように」
何度も繰り返している。 「私の話している間はそちらは配るのやめてください!」

誤解ってどういうこと? たちと一緒に混同されたくないって聞こえるんだけれど…

納得いかない気持ちを込め、できるだけ通る大声で堂々と街頭に立つ。
予定をかなり越える時間まで街宣して事務所に戻った。
「あまく見られちゃなんねぇ(ハシタナイ?)」 という気にさせられた一件だった。


◆◆◆


今日は父の誕生日。 ごめんなさい。 落ち着いたらお祝いしようね。

弟が友人たちの前で、私の願いが成就するようこれまで伝えてこなかった事情も話したという。
「うちの姉をどうかよろしく!」。 そう言ったのだそうだ。 (ToT) m(_ _;)m
我が家は家族総出で応援してくれている。 母も友人たちに全ての事情を話したという。
「立派じゃない!応援するわよ!!」 との声。

わが事務所に下町のママさんパワーが炸裂する日も近い…?


3月22日 ・ 私が生まれ変わった街

午後、活動の地としてははじめて、千歳烏山へ向かう。
私が最初に暮した世田谷は、北烏山だった。
馴染み深く、引っ越した今も私の大好きな街だ。


千歳烏山では、自分らしく生きるために実家を出て、はじめて女性として暮した。
女性として社会参加を望んでも、住民票の性別が男性であるため家探しに苦労したあの頃。
何件目かの不動産屋で数時間、泣きながら家を借りたいと訴えた。

「私たちに偏見はないつもりですが…大家さんが何というか…」

同情した不動産屋さんの力で、なんとか借りた小さなちいさなアパート。
今思い起こしても、決して条件のいい物件ではなかったと思う。
それでも当時の私には、選択の余地などほとんど無かったのだ。

たった12平米のアパート。
ドアをあけた瞬間の私の口から出た言葉は「たったこれだけ?!」だったことを思い出す。
毎日、小さな電気コンロで自炊し、コインランドリーに通った。

あの頃の私が抱えていた大きな不安、そしてささやかな希望を思い出す。
…あれから何年も経つ今も、この街は私を、どこか甘酸っぱい気持ちにさせる。


マイクを握り活動を始める。
商店街から流れるアナウンスと、電車の音、そして私の声が交差する。
黄色いバンダナをつけたスタッフが熱意をこめてチラシを配布してくれている。

「誰もがその尊厳を守られ、自分らしくいきられる社会を!」

私が自分の経験を通し、掲げるこうした願い。
自分らしくあろうとアガキ続けた歴史をきざんだ街に立つ。
そしてカムアウトして街頭でマイクを握る自分。思いも新たに声に力がこもる。

差別や偏見を恐れず堂々と行動してゆこう!
自分たちだけでなく、だれにとっても暮しやすい社会であるように!!


いま、懐かしい街角にたち、その思いをまた新たにした。


3月21日 ・ ESP

今日は、朝から地元商店街の皆さまのもとへのご挨拶に精を出す。
心強いエスパー氏(仮名)とともに商店街をまわる。

不思議な能力(ESP:超能力)をもつ?エスパー氏。
紛失した鍵のありかを電話で言い当てるとスタッフに評判の人物である。

事務所を開いたご報告と、今後の活動でご迷惑をかけることに対するご挨拶として、地元の方々をまわる。
その力強い援軍としてご協力いただいた。
本当に本当に感謝のひとことである。m(_ _)m

お声がけのきっかけ、誠意のあるご挨拶の態度、要点を押えた説明に周囲への目配りと気配り、etc.。
ごあいさつって本当に奥が深いと実感する…心がけるべきものが数多く詰まっている。
ごあいさつは、ちいさなこころくばりの集合体だと思う。
さまざまなことをお伝えくださったエスパー氏に深謝です!

この出会いをきっかけに、温かな人の輪がひろがってゆくことを切に願う。


ごあいさつの帰り道、さきほど挨拶を交わした方が微笑みを返してくださる。
その温かさに胸がいっぱいになった。

豪徳寺のみなさん、山下のみなさん、 上川をどうかご指導ください。宜しくお願い致します。


3月20日 ・ たったひとりの駅立ち

朝の豪徳寺街宣は、他の立候補予定者とかち合って、急遽下高井戸に変更となった。
今朝の街頭宣伝はひさしぶりの小人数だった。事務所に泊り込んで参加してくれたスタッフを含めて3人。
そのスタッフが街宣会場から会社に直接出勤し、ボランティアの方と二人きりでの街宣。
小人数ながら予定したチラシを全て配布することができた。

途中、現職の区議会議員の女性が自転車で現れてご挨拶する。
先だって区議会での傍聴の際にもご挨拶をさせていただいた。
とても感じのよいこの議員さんに、私はとても好感を持っている。


午後2時すぎ。
事務所からひとり梅ヶ丘に向かう。 自転車にメガホンとチラシを積み込み、裏路地をさまよう。 そして着いたところは、なぜが地元の豪徳寺駅。 我ながらその方向オンチに驚いた。 私は地図の読めない女(?)である。

やっとのことでたどりついた梅ヶ丘駅には、私ひとり。
ひとりで街頭に立つ候補者も多いことを思えば珍しい事ではないはずなのに、一人きりでのスタートをほんの少し躊躇する。
一緒に活動してくれる仲間のありがたさをあらためて思った。


街宣中、驚いた顔で友達が降りてくる。 羽根木公園に観梅にきたのだという。
「どうしたの? 何してるの?」
これまでの事情を簡単にお話すると、とても驚いた様子。
無理をいって30分ほど、ビラ配りを手伝ってもらった。

「みんな自分の事情言わないのにスゴイね」
「なんだか感動した。応援する」

夕刻迫るなか、観梅に向かう友人を見送った。


夜、経堂駅での街頭活動に友人、スタッフの知人が相次いで参加する。


今日は20:00から初めてのボランティアミーティング。
今日突然の呼びかけにも関わらず、10人近いボランティアの方が参加してくれた。
4年ぶりにたずねてくれた友人もあった。
広かって行く人の輪を大切にしたいと思う。

行動をはじめて身に染みること。
活動の看板はともかく多くの人の協力でこの活動は成り立っている。
たくさんの熱意とそれぞれのスキル。
みんなの助けがあって、今の私がいる。


3月14日 ・ 新宿二丁目にて

夕刻より新宿街宣。
花の金曜日とはいえ、18:00の新宿中通りは人通りもまばらだ。
効果を考えれば、人通りの増える夜の時間帯での活動が望ましいけれど、
山の手線の内側での拡声器の使用には制限が厳しいとのことで、18:00からの2時間を活動にあてた。

今日もボランティアスタッフの応援を得て、この地で二度めの活動を開始する。


新宿2丁目はセクシャルマイノリティに優しい街。
ちまたでは、マイノリティである人たちが、この街ではマジョリティでいられる。
それぞれのありようを認め合える空気がある、この街には自由な空気がある。

「私はトランスジェンダーの上川あやです。戸籍の性は男性です!」

ちょっと驚いた様子の人達。
この街では、トランスジェンダーであることが珍しいのではない。
この街でこうした街頭活動の行なわれることが珍しいのだ。

周囲の反応はやっぱり明るくてポジティブ!
チラシがドンドンはけていく、
途中どうにかチラシを車で補充。
路上に膝をついて折り込むスタッフ。

「がんばって!」と通行人から声がかかる。
「噂は聞いてたよ〜」なんて反応も多い。
私たちの取り組みに対し、この街の反応は格段に高いと実感する。


活動の様子をみていた、一人の若者が声をかけてきた。

「上川さんは、自分がどうありたいのか分かっていてうらやましいです」

自分の心のありようが、女性であるのか、男性であるのか、ハッキリできずとても苦しいという。

「どこにも自分の居場所がないと思ってきたんです」

わたしがかつて抱えていた不安。
誰にも言えずにきた不安。
そのころの気持ちを思い出し、胸が傷む。

「これまで誰に分かってもらえなかった」
一言ひとこと言葉を繋ぐ。赤く目を腫らして。

「事務所に遊びにおいで。もう一人だと思わなくていいから」
まわりのスタッフも一緒になって励まし続ける。
うるんだ瞳のまま、何度もお礼を繰り返し、最後に笑顔を見せてくれた。


深夜。バーンキラオで食事。
資金の不足、実際に一緒に動いてくださるスタッフの不足…
状況は予断を許さないところにきている。

今も周囲の仲間たちは、まさに寝食を削ってこの活動に関わっている。
それでもやるべきタスクに比べ、私たちの組める体制も、割ける時間も、あまりにも不足している。

必死にがんばろうと思う。そして自分の至らなさを痛く反省する。
まずは自分自身がもっともっと変わることが大切だと思う。

一緒にこの春を伴走し、駆け抜けてくれる人を切望している。
知事選、衆院補選も予定されている。
今月26日までしか、世田谷での街頭活動はできない。


来週から1日3回街頭に立つことにする。


3月13日 ・ 私

今日は午後から街頭活動を開始。
今朝はいくぶん多めの睡眠をとることができた。
わが家のアイドル、うさぎの「うさちー」は近ごろかまってもらえず、甘え方がはげしい。飼い主の勝手で、本当にゴメンね。
不憫な子である…。

小春日和。オモチャの待つベランダにうさぎを解き放ち、私はパソコンに向かう。次の日曜日は「事務所開き」。
案内を急いでこれまで知り合った方々にお送りした。


午後3時。
経堂駅の南口は、真っ直ぐな道が正面に伸び、商店が連なる。
マイクを握り、話しはじめる。

訴える以上は、ぜひ関心をもっていただきたいと考えている。
聞き手にとって一番インパクトのある内容は、私の心の傷に直接触れる部分である。
私は街頭に立ち、戸籍上の性が 「男性」 であることも率直に話している。

「頑張ってね」。
温かな言葉を掛けてくださる人。慈悲ぶかい笑みで応えてくださる方…
周囲の方々と気持ちが通じた瞬間、私の緊張の糸はいちいち、プツンと切れてしまう。
何度も、なんども涙声になり、時には言葉にさえ詰まる始末…


街頭活動を始めた当初、少しずつ平気になって慣れていくと想像していたカムアウト。
実際には、自分の心のフタを開けて、自分の魂をわざわざ揺さぶり、日々覗きこみ、確かめている現実がある。
…カムアウトを繰り返し、かえって涙もろくなってしまった。

「なぜ女の子に生まれてこなかったのか?」

保育園児の私が周囲に口にしたこの疑問は、今も続いている。
痛みが消え去ることのない傷。
私にとってこの痛みは、緩和されることはあっても一生続くものだと思う。


「人間の太さが見えていいんじゃない?」

笑い上戸、泣き上戸の私を、友人は、こんなふうに評論した。
駅前で涙を流し、それでもマイクをもつ私を、見苦しく感じる人もあるだろう。
それでも私は、無理に自分を演出して格好よく見せようとは思っていない。

私には訴えたいことがある。それが一番大切だと思っている。
小さな声をきちんと聞いてくださる方もいる。
それを一番ありがたいと感じている。


3月9日 ・ 場のエネルギー

午後、二子玉川で活動開始。

今回は 「トランス☆プロジェクト」 の俳優さん、月嶋さんと悠くんも合流くださった。 これまでにもご参加いただいているボランティアの方々を含め、総勢9人で街頭活動。 週末は活動の仲間がグンと増えてとても心強い。

約1時間半、冷たい風に吹かれつつ駅前にたつボランティアの方たち。
見通しのよい日向でマイクを握る私の前方に、日陰で黙々とチラシを配っている二人が見える。

「本当にありがとう。寒いところでごめんなさい」

みんなに勇気をもらっている私を実感する。がんばらなくちゃ。
声に力が入る。


夕方、下北沢に移動。目指すはピーコック前である。
冷え切った身体があたたまる間もなく下北沢に到着。
駅前で食べる温かいおうどんが嬉しい。一息ついて活動再開。

時と人がゆるやかに流れるピーコック前。活動も順調だ。


街頭活動をはじめて、ちょっと不思議が感覚を覚えるようになった。

気持ちを込めてマイクを握る。
スタッフみんなが熱心にチラシを配布してくださる。
すると場のもつエネルギーが凝縮され、熱するように感じるのだ。
そして、かならずそれに呼応するようにチラシ配布の勢いがましてゆく。

熱意は伝わるものだと思う。

これからも話術を磨くのでなく、誠実にお一人おひとりにお話する気持ちで、この思いを伝えていきたいと思う。
初心わするるべからず、である。



3月8日 ・ 運命の赤い糸?


午後。下北沢で街頭に立つ。
買物客、行楽客の行き交う南口。チラシ配布の多い場所だけに行き交う人々のガードが固い。
声を尽くしているつもりでも早足に通り過ぎる人の波。抗うことは難しい。

北口のピーコック前に移動。
ノンビリと行き交う人々。駅とビルに挟まれた空間にマイクの声がひびく。
歩行者の多くは地元の人達らしくラフな生活者スタイル。

ボランティアの人達の積極的な応援を得てチラシ配布の勢いがグンと増す。
改札を挟んだ両側で別々の時空間が広がっている、下北沢はそんな不思議な街だと思った。


夕方。 週刊SPA 『パトが行く』 の取材。

取材申し込みメールはある日突然やってきた。
事務所にいた第一発見者から歓声があがる。 スタッフ一同でほんとうにそのお申し出を喜んだ。

パトちゃんこと、Patrick Bommarito さんは、外国籍でゲイ、そしてパワフルHIVポジティブを標榜している。 マイノリティとしての要素を多重に抱え前向きに活きている。

元気で温かく、やさしいパトちゃん。初めてゆっくりお話して大好きになった。
繊細で心配りのできる人。そのポジティブな姿勢には、見習いたいところがたくさんあると思った。素直に尊敬できる人だと感じた。
共感できる部分も多く意気投合してとっても盛り上がる。
お店の人から退出を促されるまで二人、とめどなく話し続けた。


写真撮影では、パトちゃんの黒いパンツになぜか一筋の赤い糸が。
「あ〜、運命の赤い糸だ!」
パトちゃんの包容力にすっかり気をゆるし、私もついつい無邪気になる。
お互いの小指に赤い糸を結んでニコニコ。とっても楽しく撮影した。

ともかくとっても、とってもパワーをもらえる対談だった。
詳細は今月末以降の週刊SPAをお楽しみに。 ぜひご覧くださいね。


3月7日 ・ 今日もこの街にいて


春先のまだ冷たい雨がふりつづく朝。

下高井戸で予定した 「駅立ち」 を急遽豪徳寺に変更した。
荷物に傘をもつ乗降客にメイワクにならぬよう、ご挨拶をこころがけ、チラシの無理な手渡しはしない。

改札から、先日立ち話をした少年がはにかみ笑顔で近づいてくる。
「おはようございます、今日もがんばってくださいね」

優しい一言に冷えきった指先に力がよみがえる。

私はこの豪徳寺から活動をスタートさせた。
少しずつすこしずつ、知っている人が増えてゆく。

この街で最初にカムアウトしたのはケーキ屋さんのマスターだった。
当初、困惑気味だったマスターも、今では顔を合わせるたび、やさしく微笑みかけてくれる。

「どうだ、がんばってるか?」

活動帰りのささやかな時間、このケーキ屋さんで過ごすことが多くなった。
私たち女性メンバーの密かな野望は、このお店のケーキの全種制覇だ。

余寒きびしくも、人との出会いがあたたかな早春。

昨日、梅丘を出発するバスのガラス越し、親指を立て「が・ん・ば・れ」 とエールを下さる女性がいた。
次の梅丘での活動予定は水曜日。 また会えたら嬉しく思う。
エールのお礼をお伝えしたい。


3月4日 ・ 勇気


7:30。経堂駅北口で活動開始。
仕事を控えているボランティアの女性が今日も千葉からかけつけてくれた。本当にありがとう…!

経堂駅は女子学生が多い。 試験期間らしくノートやテキストを手にしたたくさんの学生さんたちが駅から流れ出る。
冷たく埃っぽい突風が吹きすさぶ。 駅舎をでる彼女らの黄色い声がひびく。

「おはようございます!」 の呼びかけに 「おはよ〜」 と手を振る彼女らは屈託ない。
すかさず 「これ読んでね!」 とチラシを手渡した。

果たして学校についた彼女たちはどんな話をするのだろう…。

街頭活動をはじめて感じたことのひとつは、学生さん、特に女子学生の感度の良さだ。
土曜日雨の二子玉川で握手を求めてきたのも、日曜日の下北沢で声をかけてくれたのもそんな彼女たちだった。


17:30。 梅ヶ丘では初めての街頭活動。
数年ぶりの友人が突然目の前に現われて驚いた。封筒を手わたし 「がんばって!」 と声をかけてくれる。
彼女らに見守られ、街頭活動を開始。 友人の前のほうがなぜか照れくさい。

駅前ロータリー。 パン屋さんの前に陣取り、マイクを持って話しはじめる。
乗降客はけっして多くないけれど、チラシを手にとる人の確率は高い、買い物客の反応が特にいい。
「チラシをください」。 背後のパン屋さんが声をかけてくれる。
お母さんに促された女の子が「がんばってください」と温かい飲物を差し入れてくれる。
駅前でチラシを手にし、温かい飲物を買って戻ってきてくれたらしい。 温かな思いやりに思わず涙声になって訴え続ける。


「わたしも配っていい?」
じっと見守ってくれていた友人がひとこと声をかけてくれる。
ちいさな一言に、たくさんの想いが詰まってる。

ありがとう。ありがとう。


カムアウトは自分の心のカサブタをいちいち剥がす作業だ。
無理解な反応も多く痛みもともなう。
それでも一連の活動を始めていちばん勇気をもらったのは私かもしれない。
傷つくことを恐れているだけでは感じることの難しかった、人の心の美しさ、あたらしい人たちとの心暖まる出会いがそこにある。


3月3日 ・ 出会いはほんとうにいろいろ


人生いろいろ。
励まされたり、冷笑されることもあったり…。

商店街をまわりながら共感を得られた喜びの光も 心をえぐる刃も 共に心に突き刺さる。
正直に話す事でかえってくる反応は人それぞれ。
いろいろ考える。

初対面で性器の形状を問いただす人、ヘラヘラ笑いの止まらない人、説教をはじめる人…。
そして、励まそうと握手をしてくださる方。

1軒いっけんをカムアウトして廻るご挨拶って究極のカムアウトだと思った。
初対面の人達への連続訪問カムアウトって私が日本で初めてなのではなかろうか…。

ちょっと自慢 (^-^;)