具体的な成果

★手話通訳者派遣の回数・時間数制限が撤廃されました。

 

区の手話通訳者派遣事業には都内11区にはない回数制限、時間数制限が医療関係への派遣に対してすらありました。
上川はこれを障害者差別解消法が禁じる「使いにくい制度」だと批判。2017年度以降、これら制限は撤廃されました。

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◆上川あや

通告に基づき質問します。

初めに、区の手話通訳者派遣制度から利用上限枠の撤廃を求めて伺います。
当区の手話通訳者派遣制度は、個人への派遣に回数制限、時間数制限を課しています。聴覚に障害のある区民が社会の大多数を占める日本語の話者とコミュニケーションをとろうとするときに、区がその回数と時間に一々制限を加えること自体、極めて不当で差別的。この縛りはすぐにでも撤廃するべきです。

私からはかねてより、都内二十三区中十一の区に、そもそも回数制限、時間数制限などないと指摘してまいりました。都の最新の取りまとめによれば、回数制限のない区は十八区に、時間数制限のない区も十五区へと広がり、回数、時間数ともに制限を加え続けている区はただ一区、ここ世田谷区だけです。何とも情けない状況です。
皆さん御承知のとおり、当区は都内最大の人口を抱えています。聴覚に障害のある区民も当然のように多く、その数は足立区に次ぐ都内二位となっています。しかし、当区の手話通訳者の派遣実績は低く、昨年度は件数ベースで二十三区中、何と十四位です。当区より聴覚障害者数の少ない練馬区、板橋区の三分の一以下、江東区、北区、江戸川区、足立区の二分の一以下という惨たんたる状況です。

当区の制度は回数制限、時間数制限ともにその上限が低く、いざというときに備え、使いたくても使えない制度だと、かねてより批判をされ続けてまいりました。これだけ他区との派遣実績に大きく差が開いた状態で十分な情報保障を図ってきたと言えるのか、まずはお答えいただければと思います。その上で、他区とのギャップに使い控えの影響、区の抑圧的制度の因果関係を認めるのかどうか、区の見解を伺います。

次に、国が平成二十五年三月に示した意思疎通支援事業実施要綱、いわゆる今後のあるべき制度設計を示したモデル要綱と当区との乖離についてです。

国のモデル要綱に回数制限、時間数制限などありません。それらをつければ利用をためらわせる制度にしかならないのですから、当然の判断です。
このモデル要綱との差異を昨年九月、私から指摘すると、区は、国の要綱も参考に、利用回数、時間数につきまして検討してまいりますとしましたが、以来一年と二カ月、検討状況はどうなっているのでしょうか。区は国が示したモデル要綱に従うつもりがあるのか、それとも背き続け、制限を加えるつもりであるのかどうか、見解を伺います。

さらに、来年四月施行となる障害者差別解消法との整合性も課題です。同法施行で障害を理由とした差別は禁止され、障害者にとっての社会的な障壁を取り除くための必要かつ合理的な配慮が当区にも義務づけられることとなります。
こうした中、聴覚障害者にその利用をためらわせる当区独自の制度設計が、同法が禁じる差別の一類型、いわゆる使いにくい制度に当たる疑いを私からは指摘してまいりました。昨年十一月、区は私のこの問いに、法の趣旨から外れていないかという観点からも確認が必要になるとお認めになりましたが、その後の確認作業はどうなったのでしょうか。このまま法に抵触する可能性を内包させて、来年度以降も制限を加え続けていくおつもりであるのかどうか、区の見解を伺います。

この質問の最後に、当区の派遣制度が命と健康を守るための派遣にすら制限を加えていることの撤廃を求めます。
昨年度、当区の個人向け派遣の総件数は五百六十三件でした。うち医療機関への派遣は二百八十三件と最も多く、実に半数以上を占めました。時間数でも医療機関への派遣は約四割と最大で、当区の実績は命と健康を守る分野にばかり偏り過ぎています。そして、これらが個人派遣の多くを占めるがために、当然他の類型に割ける時間は少なくなり、当事者の社会参加は妨げられてまいりました。
区は、都の制度を活用した専門的通訳の派遣先にも医療分野は含まれており、それらに回数制限等はないと言いわけをするつもりなのかもしれません。しかし、都の制度で想定されているのは、インフォームド・コンセントなど高度な判断が求められるケースだと確認をしております。
区事業による派遣が、地域の医療機関への通院、入院時のコミュニケーションでそのベースを担っていることは明白で、区がその意思疎通にすら制限を加え続けている現状は非人道的であり、不当です。利用の上限枠から医療関係を即刻外すよう強く求めますが、いかがでしょうか、区の見解を伺います。

◎小堀 障害福祉担当部長

私からは、区の手話通訳者派遣制度からの利用の上限枠につきまして四点御答弁申し上げます。

まず、十分な情報保障を図ってきたのか、また、使い控えの影響、そして区の抑圧的制度の因果関係について御答弁申し上げます。
区では、聴覚障害者に対し、昭和六十三年四月から手話通訳者の派遣事業を行っており、平成二十五年四月から障害者総合支援法に規定する意思疎通支援の一環として実施しております。
御指摘のとおり、区では派遣回数と時間に制限を設けております。三カ月間に四十五回、合計九十時間を上限としております。今年度四月から六月までの実績を見ますと、上限回数の約六割の二十六回、合計二十二時間の利用をされた方が一名、それ以外の方は二割未満の利用率となってございます。
利用上限を設定していない品川区でございますが、昨年度利用登録人数九十九名で四百八十九件の利用実績があったと伺っておりまして、一名当たり年間で平均四・九回の利用となっております。一方、世田谷区の昨年度登録人数でございますが、百四十七名で六百四十七件の利用実績がありましたので、一名当たりにしますと、年間平均四・四回の利用となっております。こうしたことから、利用制限と利用実績の因果関係につきましては、直接的な因果関係は明確に判断できないものと考えております。
また、御質問の十分な情報保障を図ってきたと言えるかという点におきましては、利用者個々人の状況をつかめていないという点におきまして、必ずしも十分な情報保障であるとは言い切れないと認識してございます。

次に、利用回数や時間数の制限の撤廃についての区の検討状況についてでございます。
利用回数、時間数につきましては、派遣実績の調査、近隣区である大田区、目黒区、渋谷区、品川区への聞き取り等を行い、制限撤廃の可能性について検討を行ってまいりました。
国は平成二十五年三月に、地域における事業実施の差異を解消する観点から、区市町村意思疎通支援事業実施要綱、いわゆるモデル要綱を制定し、事業を実施する上での参考にするよう、都道府県等を通じて通知いたしました。
議員お話しのモデル要綱には、手話通訳者への手当や健康診断の実施に関する規定、他県の制度を利用する場合の利用者負担の規定などがございますが、区はこれらの規定について取り入れてまいりました。
区といたしましては、平成二十二年四月に上限回数と時間を三カ月間に十八回、四十五時間から四十五回、九十時間に拡大してまいりました。
今後も国による補助制度のあり方や利用状況を勘案しながら、この件につきましては、引き続き検討を進めてまいります。

次に、障害者差別解消法との整合性についてでございます。
手話通訳派遣の回数や時間に上限があることによって、利用がしにくかったり、必要とする利用を抑制することもあるというふうには伺っております。そのことをもって、障害者差別解消法にすぐに抵触するということでは考えてございません。
今後、今般の法施行によりまして、行政機関に求められている合理的な配慮の提供について、自治体として具体的な事例、積み重ねが必要になるということは十分認識してございます。

最後に、利用の上限枠から医療関係の派遣を即時外すよう求めるという御質問にお答えいたします。
区の手話通訳者派遣事業は、日常生活において手話通訳者を必要とする場合に利用いただいておりまして、お話しのとおり、日常的な通院等の医療関係の派遣利用が多いものと捉えております。
区といたしましては、医療関係の手話通訳者派遣が命や健康にかかわるものであることに鑑み、平成二十八年度以降、区の手話通訳者派遣事業におきましては回数や時間数の制限をなくしていきたいと考えております。
以上でございます。

◆上川あや

再質問いたします。手話通訳者派遣についてです。
部長は御答弁で利用制限と利用実績との因果関係をお認めになりませんでした。ならば財政を圧迫する懸念もないはずで、そもそも意地悪な上限設定など不要と考えます。何のために意地悪な上限設定があるのでしょうか、お答えいただきたい。

あともう一点です。部長は来年度以降、医療機関への派遣から上限を外すとおっしゃいました。ただ一方で、全体の上限枠については明言を避けました。結局、来年度以降、上限枠は撤廃が見込めるのでしょうか。その可能性があるのかないのか、はっきりお答えください。

◎小堀 障害福祉担当部長

二点の再質問にお答えいたします。

区といたしましては、決して意地悪な制約を設けているということではございません。手話通訳者派遣事業につきましては、国の地域生活支援事業に位置づけられ、国による補助制度の制約がある中で、区といたしましても利用回数、時間数について検討してまいりました。

次に、二十八年度以降でございますが、先ほども御答弁申し上げましたように、医療関係への手話通訳者派遣につきましては、命や健康にかかわることを鑑み、区の手話通訳者派遣事業におきまして回数や時間数の制限をなくしていきたいと考えております。そのほかの手話通訳者派遣制度につきましても、今後検討を進めてまいりたいと考えております。
以上でございます。

◆上川あや

もう六年前から検討と言っているんですね、結論を出してください。