具体的な成果

★同性カップルの入居を認める区営住宅3条例が全会一致で成立しました。

 

同年6月22日 同性カップルの入居を認める区営住宅3条例が全会一致で成立。
同趣旨での公営住宅条例の改正は全国初。画期的な出来事としてテレビ、新聞でも報じられました。

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◆上川あや

パートナーが異性なら入居可、同性なら入居不可の区営住宅条例の差別解消について伺います。

住まいは、人の人らしい生活の根底をなすものです。ところがそのセーフティーネットを担う区の住宅関連条例は、ともに暮らすパートナーの性別が異性か同性かで事実上差別をし、同性をパートナーとする区民の利用を妨げています。
例えば世田谷区営住宅管理条例は、入居要件を定めた第五条の中で、「現に同居し、又は同居しようとする親族(婚姻の届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者その他婚姻の予定者を含む)」があるという、いわゆる同居親族要件を定めています。婚姻届を提出している男女はもちろん、事実婚の男女や婚姻予定者をも保護する規定でありますが、同性カップルは数十年添い遂げようが排除をされております。これは、性的指向に基づく構造的差別にほかならないのではないでしょうか。
この要件規定には、公営住宅法の二十三条一号に同様の規定があったことが影響しております。しかし、同規定は二〇〇八年、国連人権機関の是正勧告を受けた後、二〇一二年四月施行のいわゆる地方分権一括法で削除されています。

この間の経緯を整理いたします。
二〇〇八年十月、国連の人権規約委員会が日本の人権状況について審査を行いました。これは一九六六年に国連総会で採択された人権保障に関する多国間条約である市民的及び政治的権利に関する国際規約、いわゆる自由権規約を批准する国が定期的に受け入れなければならない審査です。
審査の結果、日本政府は次のような勧告を受けました。委員会は、婚姻したあるいは婚姻していない異性カップルに対してのみ適用され、婚姻していない同性カップルが公営住宅を賃借することを確実に妨げている公営住宅法二十三条一号のように、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル及び性同一性障害の人々に対する差別があることを懸念する、つまり、公営住宅からの同性カップルの排除は平等を定めた国際人権規約に明らかに反する差別だと名言をしたわけです。
これを受け、日本政府は報告書で次のように述べています。現行の公営住宅法二十三条一号については、公営住宅の入居者資格として同居親族を有することを規定しているものであるが、同号の規定は、今般の地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関連法律の整備に関する法律、これはいわゆる公営住宅法のことでありますが、この改正によって削除されている。したがって、上記の公営住宅法の改正に従い、親族関係にない同性の同居も含め同居親族による入居者資格の制限はなくなっている。つまり政府としては、同性カップルを排除する法の規定はなくしたと報告しているわけです。

ところがどうでしょうか。当区の住宅条例は、なお同性パートナーの平等な取り扱いさえ阻んでおります。つまり、ここにあるのは差別です。
今回、区がその改善を目指し、関連条例を上程したことを高く評価いたします。ところが、今定例会の提出予定案件について、三条例が報告された二月七日の都市整備常任委員会の質疑では、なお幾つもの誤解が解かれぬまま残されてしまったと感じました。

そこで以下、誤解の払拭を目指して質問いたします。
まず、区は今回の条例改正の前段に、多様性の尊重を掲げた区の最上位計画、世田谷区基本計画の策定があることを述べ、また性的マイノリティー当事者を対象に実施した昨年のアンケート調査で、公営住宅に住めるようにしてほしいとの要望が五六%と高かったこと等を述べましたが、説明が簡素にされ過ぎていると感じました。当区で性的マイノリティーへの差別を排していく議論には長い蓄積があります。支援施策も十数年来広がり続けております。それらを無視した説明は誤解を招くものと危惧いたします。
また、先行するパートナーシップ宣誓の取り組みについても、終始一貫、昨年より実施と誤認されたまま議論が続けられました。このためか、委員会では先行するパートナーシップについても議会で十分議論されてこなかったのではとその提言に疑念が示され、この誤認は、昨日の他会派の意見表明にまで引き継がれてしまいました。
実際にはどうでしょうか。当区でパートナーシップ制度の必要性が論じ始められてから二年半が経過いたしました。パートナーシップ宣誓もその開始から一年と四カ月が過ぎました。今回議論されている区営住宅の開放も二年前から複数回議会で論じられ、昨年九月には、条例改正も視野に早々に具体策の検討を深めると答弁もされており、今回の動きも予期されるものでした。
この間、私も同性パートナーをテーマに十二回もの質疑ができております。議論の時間は十分あったはずだと考えます。しかし、区の説明はここでも簡略に過ぎております。これまでの経緯について、いま一度整理した上での説明を求めます。

次に、委員会では、高齢者、障害者、母子等の住宅確保が総量的に追いついていない中で、公営住宅の必要性はますます高まっている。そういう中で、今回条例改正に踏み切るのは大きな政策転換ではないか、高齢者、母子など必要な方々はまだいるのに、区営住宅がふえる見込みもない中で、なぜ優先順位として対処しなければならないのか等の議論がありました。
しかし、今回の条例改正は、同性カップルを高齢者、障害者、ひとり親家庭と並ぶ優遇対象とするものではないと理解しております。現に住宅に困窮し、また低所得で、本来なら当然入居資格が与えられるべき区民に対し、パートナーの性別が同性であるというだけの理由で排除している、その差別を単にやめるものだと理解しています。
この点、十分な説明がなかったことが大変に残念です。改めての説明を求めます。

次に、委員会では同性カップルの公営住宅入居を認めている前例があるのか問われたのに対し、区は、渋谷区、那覇市、伊賀市、宝塚市が検討している状況かと理解していると極めて曖昧に答弁を返しています。実際には、世田谷区と同様、同性パートナーシップを認めている渋谷区、那覇市、伊賀市で既に公営住宅入居への道は開かれております。また、宝塚市も検討しております。つまり、同性パートナーシップを認める自治体の中では、実は世田谷区は後発組であるのに、他の自治体もなお検討中であるかのような答弁は誤りです。
その後の議論の中では、副区長より、前例がほかにあるとの説明が加えられはしましたが、いま一度の整理を求めます。既に同性カップルに門戸を開いている全ての自治体とその改正時期、根拠規定のそれぞれについて説明を求めます。

次に、区が区内の不動産関係団体に同性カップルへの入居理解を求めていることに関連し、同性カップルが差別的な扱いをされた等の直接な把握は当区にないかのような説明がありましたが、これも事実に反しております。
おととし三月五日、十六人の同性カップルを中心とした方々が区に提出した要望書には、不動産会社から、男同士には貸せないと言われ、倍額の管理費を六年間払わされ続けた等の理不尽な証言が複数含まれておりました。また、昨年区が実施をした性的マイノリティーの調査でも、九百六十五人の有効回答を得て、二百十六人から、同性パートナーと暮らす上で困ったこととして、民間の賃貸住宅や公営住宅に家族と住む際の困難が挙げられてもおりました。つまり、区は差別的事案の存在を、具体例、統計の両面で既に把握をしております。この点も再度説明を求めます。

最後に、委員会で問われたなりすまし等への対処についてです。
区からは、パートナーシップの宣誓の有無にかかわらず、他の入居要件に合致すれば同性カップルもお申し込みいただける、この三条例の中で全体が完結するものと考えている、申述書や戸籍関係の書類等々でチェックし、ルームシェアと峻別する等との説明がありましたが、いま一つ安心に足る説明とはなっていないと感じました。
例えば従前からの事実婚の男女への審査と比べるとどうなるのか、むしろ同性カップルのほうが慎重かつ綿密な審査になるようにも伺っておりますが、いかがか。十分に信頼に足る説明をするべきです。審査の提出書類と手順、入居後の継続的なチェック、さらに不適合が発覚した際の除斥の方法も含めて説明を求めます。

◎板垣 副区長

さきの都市整備常任委員会におきまして、パートナーに相当する同性者を入居資格要件の対象に加える世田谷区営住宅管理条例等の三条例の改正につきまして御説明させていただきました。その際、条例改正の根底にある理念や議論の経過について述べましたが、改めて説明を求めるとのことでございますので、御答弁申し上げます。

これまでも、区では性的マイノリティーの方々の人権尊重という観点から、例えば平成十五年度には申請書類の性別記載事項の削除に関する事務改善、また、平成十九年策定の、男女共同参画プランにおいても、性的少数者への理解促進を施策の一つとして位置づけ、職員研修を初め、区民への啓発等に取り組み、ほぼ十年にわたりまして多様性を認め合い、人権意識の啓発や理解の促進に努めてまいりました。
また、基本構想・基本計画の策定過程におきましても、性的マイノリティーへの配慮という視点を御提起いただきました。これらを踏まえまして、平成二十六年三月に策定いたしました区の基本計画におきましては、多様性の尊重を分野別政策の一つとして掲げ、女性や高齢者、障害者、外国人、性的マイノリティーなどを理由に差別されることのない地域社会づくりを進めることといたしました。
こうした経緯の中で、平成二十七年三月には、同性をパートナーとする区民の方々が区役所にお見えになり、住まいを探す上での困難、医療機関等でも家族としての処遇が受けられない等の御不便を訴えられ、区としてパートナーシップを認めるよう求める要望書をいただきました。これらを検討してまいりました結果として、平成二十七年十一月に、同性パートナーシップの宣誓の取り組みが実施される運びとなった次第でございます。
事業実施以降の実績といたしましては、この二月時点で四十五組九十名の皆さんから宣誓の手続をいただいております。また、同性をパートナーとする区民の方々の区営住宅等への入居の道を開くことにつきましては、平成二十六年九月議会を初めとし、善処を求める御質疑を複数回いただいておりました。平成二十八年九月議会では、区営住宅管理条例等の改正を視野に具体策の検討を深めていくと答弁をさせていただいております。
区の性的マイノリティー支援につきましては、現在策定中の第二次男女共同参画プラン案の中で、十二ある課題の一つとして性的マイノリティー等多様な性への理解促進と支援としてお示ししておりますが、同性パートナーシップに関する取り組みの一つとして、住まい確保の支援を位置づけているところでございます。
このような取り組みとこれまでの議論の経緯を踏まえまして、今回の条例提案に至った次第でございます。
以上でございます。

◎渡辺 都市整備政策部長

区営住宅条例の差別解消につきまして、さきの都市整備常任委員会の質疑を受けまして、四点に順次御答弁申し上げます。

まず、今定例会で御提案しております区営住宅管理条例等の改正内容についてでございます。
議員お話しのように、本条例の改正趣旨は、いわゆる性的マイノリティーの方々を優遇対象とするものではなく、あくまでも、従前、区営住宅への応募資格要件から外れておりました同性パートナーを同居予定者と位置づけ、他の親族等と同様に応募申し込みができるようにするという御提案でございます。
公営住宅は、憲法二十五条に定める生存権を保障するため、住宅に困窮する低額所得者に、低廉な家賃で住宅を提供するもので、昭和二十六年に制定された公営住宅法にその根拠を置いています。
当時、民間賃貸住宅市場では、単身者向け住宅供給が比較的多く、一方で、家族向け住宅供給が十分とは言えない状況にあったことから、より必要性の高い同居親族向けに振り向ける趣旨から、公営住宅法に同居親族要件が規定された経緯がございます。
その後、昭和五十五年に単身高齢者、障害者について、その居住に適した設備、バリアフリー等でございますが、民間賃貸住宅が十分供給されておらず、また、他の住宅困窮世帯と比べても居住の安定を図る必要が高いことから、高齢者や身体障害者、生活保護受給者等につきましては、単身者でも入居資格を有する者とする公営住宅法の一部改正が行われました。
これを受けまして、区の住宅管理条例でも、親族要件を入居の前提としながらも、高齢者、障害者、戦傷病者、原爆被爆者、中国残留邦人、ハンセン病療養所入所者、DV被害者につきましては、親族要件を要しないとの配慮をしております。
今回の条例の改正の趣旨におきましては、この単身入居の要件にかかわるものではなく、親族やいわゆる事実婚にも認められてきた区営住宅等への応募要件を同性パートナーとする区民等にも認めるものでございます。

次に、自治体で同性カップルに公営住宅の門戸を広げている現状についてでございます。
議員御指摘のように、渋谷区、伊賀市、那覇市の三自治体で既に実施をしております。また、宝塚市でも現在検討中と認識しております。
具体的には、渋谷区ではパートナーシップ証明書の発行と同時に、平成二十七年十一月より同性カップルから申請を受け付けております。根拠としましては、渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例の十六条で、渋谷区住宅条例及び渋谷区区民住宅条例その他区条例の規定の適用に当たっては、この条例の趣旨を尊重しなければならないとし、パートナーシップの証明書の交付を受けた者を区営住宅の使用資格と見なしており、審査要綱を設定し、適用しています。
次に、伊賀市でございますが、同じく開始時期につきましては、平成二十八年四月の要綱制定時に、伊賀市パートナーシップの宣誓の取扱いに関する要綱によりまして、事実婚と同様に扱うこととし、現行の規定での運用をしているとのことです。
さらに、那覇市でございますが、同じく開始時期は平成二十八年七月の那覇市パートナーシップ登録の取扱いに関する要綱を根拠として、取り扱いの規定につきましては、那覇市営住宅同居承認取り扱い要領、同入居承継取り扱い要領の規定改正により、事実婚同様に扱うことによって運用しているとのことでございます。
したがいまして、今回の提案の同性パートナーを区営住宅等の入居資格条件の対象とする取り組みにつきましては、全国では四自治体目というところでございます。

続いて、議員御指摘の同性パートナーと暮らそうとなさる方々が、住まいを探した際の差別的事象等の認識についてでございます。
まず、平成二十七年三月に、区内の同性カップルの方々が要望書を持って区役所にお越しになった際のお話として、不動産会社から男同士には貸せないからと言われ、入居するために管理費を倍払うこととなった男性カップルの事例、また女性同士の部屋探しでも、将来片方が異性と結婚して出ていってしまったら部屋代を支払えなくなるのではないかとよく思われずに断られていることがあるなどの困難について訴えがあったと聞いております。
また、昨年十一月に生活文化部から発行されました性的マイノリティー支援のための暮らしと意識に関する実態調査報告書では、有効回答数九百六十五票のうち、あなたが同性パートナーと暮らす上で困ったことを教えてくださいとの設問に対し、民間の賃貸住宅や公営住宅に家族と住む際の困難について、御指摘のように、二百十六名、二二・四%の方々が回答されておりました。
こうした困難への対応ということにつきましても、区の住まいの確保支援ということで課題であると認識しております。

最後に、なりすまし等への対処でございます。同性カップルを区営住宅等に受け入れるに当たりましての提出書類、審査の手順、入居後のチェック等について御答弁申し上げます。
区営住宅等の入居に当たりましては、今回御提案の同性カップルを含め、いずれの家族等におきましても、抽せんに当選した後、住民票、納税証明書、所得が確認できるもの、現在の賃貸借契約書及び家賃領収書等の御提出をいただき、対面で審査を行うという流れになっております。男女の事実婚につきましては、婚姻と同様の事情にあることを住民票の続柄欄の夫または妻の記載により確認をしてございます。
これにかわる同性のパートナーの審査につきましては、提出書類として、戸籍謄本または独身証明書、申述書なども提出いただきます。この戸籍謄本などによって、申込者に配偶者がいないこと、また申述書によって、申込者と同居者の双方がパートナーと認め合っていること、当該同性者の双方が継続的に共同生活を営んでいることなどを確認してまいります。
入居後は、いずれの場合でも毎年各入居者により収入報告書を提出していただき、住民票や課税証明書などに基づき、同居者などの世帯に変化がないかなどを審査しております。例えば世帯員の一部転出がわかった世帯については、御事情等を伺い、届け出を指導するなど厳格に審査を行っており、同性パートナーについても同様と考えております。
この収入報告書を初め、各住宅の定期巡回や居住者からの連絡などによりまして、不正な行為による入居が判明した場合は、公営住宅法に基づき住宅の明け渡しの請求を行っており、同性カップルについても他の入居者と同様、引き続き厳格な管理に努めてまいります。
以上でございます。

◆上川あや

今の答弁に誤りがあったと思うんですけれども、事実婚カップルの確認は住民票続柄欄の夫(未届)、妻(未届)のどちらかだろうと思います。
公営住宅からの同性カップルの排除は、区民の平等に明らかに反しており、私は差別だと考えております。差別に気がついたときに、これを速やかに改善することは議会に求められている我々議員の当然の責務でありまして、いたずらに時間を過ごすことなく、平等にという当然のことでありますので、議員の皆様方の賢明な御判断をお願い申し上げまして、私の質問を終わります。