具体的な成果

★障害者育児支援の切り捨てが撤回されました。

 

小学生と高校生2人の子育てをしている全盲のシングルファザーに対し、区は「育児の定義は乳幼児まで」との持論から育児支援(調理などの家事援助)の打ち切りを通告。児童福祉法は18歳未満を「児童」と定義し、上川が調査したところ都内4区3市では高校まで育児支援を給付していました。上川の追及で区は非を認め支援の打ち切りを撤回。再発防止認識の徹底が図られました。

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◆上川あや

重度障害のある親への育児支援について伺います。

平成二十一年七月に厚労省より発出された事務連絡、障害者自立支援法上の居宅介護(家事援助)等の業務に含まれる「育児支援」についてによれば、同法の居宅介護を受けている親が、一、障害により家事や付き添いが困難な場合、二、子どもが一人では対応できない場合、三、他の家族等による支援が受けられない場合の三つを満たした場合には、親へのサービスと一体的に行う子ども分の掃除、洗濯、調理等にその居宅介護サービスを利用できるとしています。

しかし、この育児支援を受け続けてきた全盲の重度障害者のお父さんが、ことしの初め、区民健診の代読、代筆等にも必要なわずかばかりの居宅介護時間の増を区に要請したところ、おかしな事態が起こりました。区がこの方に決定、通知してきた介護給付費支給決定の有効期限十二月三十一日を待たずして育児支援を翌月にも切ると言い出したのです。

お父さんは全盲で全く目の見えない重度障害者です。お子さんが二人、この春高校に進学した長女と小学校五年の次女がいらっしゃいます。上の子は通常の授業を終えた後、同校の特別進学コースも受講し、みずから意欲的に勉学に取り組んでいます。また、同コースを受講することで奨学金の上積みも得られ、家計的にも助かっています。さらに、運動部にも所属し、毎日へとへと、ぺこぺこの状態で夜七時過ぎに帰宅するのが常だそうです。
従来、この御家族には親子三人分の食事の用意、調理が行われてきましたが、今後はお父さんの分のみ残し、子ども二人分は切ると言い出したのです。お父さんは全盲で現状で調理はできません。高校に進学した娘さんも調理は全くふなれで連日の調理を強いる余裕もない状態です。しかし、区の言い分は、国の通知に育児支援とあるが、育児はせいぜい乳幼児まで、広辞苑を見ても育児の定義はそうで、高校生は該当しないなどと言葉の定義論に終始したそうです。

お父さんは、勉強にスポーツにと意欲的に高校生活を送り始めた長女に、とてもではないが連日、妹の分も含め二人分の調理を強いることなどできないと話しました。また、そうした毎日を強いたのでは、進学もクラブ活動もあきらめざるを得なくなるとの危惧も伝えました。加えて、支援を打ち切るにしても、せめてもう少し時間的経過を見ていただきたいとも申し添えたそうですが、担当係長は、ともかく育児支援には該当しないから、もう終わりにさせていただきます。部活のこととか学校のことは、育児支援とは直接関係のない話。お子さんに調理の技術があろうがなかろうが、仮に男の子で調理が全然できなかったとしても育児ではないので仕方がないと言い放ったといいます。

ほとほと困ったお父さんは、七月末、子どもの人権擁護機関である「せたホッと」に相談電話を入れ、その後、面接相談にも出向きました。
相談に応じた弁護士からは、介護給付費の受給期間が十二月末までなのだから、その途中での変更などだめだ。子どもに食事づくりをしていくよう話したら、すぐに切れるという判断もだめだとの見解が示され、また、子どもに進学や部活をあきらめさせるようなことは言えないとのお父さんの心情にもそのとおりと理解を示したといいます。その影響からか、ケースワーカーの態度もその後やや軟化し、もう八月に入っているので、そのままでいいですと一旦打ち切りは延期となりました。しかし、お父さんに対しては依然、年末の更新までに考えておいていただかないととも、次の支給決定の調査までには今までのようにはいきませんよとも繰り返しており、年明けにも打ち切る姿勢を崩さなかったといいます。

そこで伺います。
さきに紹介した国の通知では、居宅介護に含まれる育児支援の例として、学校等からの連絡帳の手話代読や学校等への連絡援助が挙げられており、学校等とわざわざ書いていることから考えれば、乳幼児しか支援に該当しないとの担当者の説明ははなから誤りではないのか見解を問います。

第二に、児童福祉法は十八歳に満たない者を児童と定義しています。子どもの権利条約も児童とは十八歳未満の全ての者をいうと定義しています。乳幼児ではない子どもの子育ては、もはや育児ではないという担当者の解釈は狭量に過ぎ、誤りではないのか見解を問います。

第三に、区議会事務局を通して世田谷区を除く都内二十二区、二十六市の本年七月現在の支給状況を確認したところ、中学生に育児支援を支給している団体は六区三市、高校生にも支給している団体が四区三市確認できました。加えて江戸川区は、育児支援の対象を児童福祉法の定義と同じゼロ歳から十七歳までと定義しているとわかりました。国の育児支援の通知は、乳幼児のみを対象としたものだという区の説明のうそはこの点からも明らかです。世田谷区も十八歳未満の児童について、個々の状況を勘案し、柔軟に適用することを基本とするべきと考えますが、いかがか見解を問います。

質問の第四から第六については、「せたホッと」についてです。
お父さんが七月末、「せたホッと」に相談電話を入れ、また、面談にも出向いたことはさきに述べたとおりですが、面談以降の「せたホッと」の対応もおかしな話ばかりです。

まず、「せたホッと」がうたう独立性、専門性、第三者性は極めて怪しいと否定しなければなりません。なぜなら「せたホッと」への相談後も不安を払拭できる材料を何ら得られなかったお父さんは、「せたホッと」に改めて電話を入れ、弁護士の先生が言ってくださったとおり、受給者証の効力はことしいっぱいあるので、せめてそれだけは守るよう区に意見を上げていただけないでしょうかと「せたホッと」がうたう調査、調整機能の発動を何度も繰り返し求めています。しかし、「せたホッと」職員の口からは、お父さんがこれまで要望した代読・代筆サービスなどのプラスアルファのサービスはもう必要がないと区に伝えることが重要です。それを言わないと切られてしまいますよと、区と申し合わせをしたとしか思えない説得が繰り返されたといいます。加えて、それを区に言ってはみますが、それでも打ち切られそうになったときには、区に意見を上げていただけますかと食い下がったお父さんに対しても、「せたホッと」から区に意見するようなことは考えていない。また、「せたホッと」としては、あくまでお父さんに対してのみアドバイスをするとの基本姿勢が示されたといいます。
自称区から独立した第三者機関であるはずの「せたホッと」の担当者は、何の権限があって全盲の視覚障害者の情報取得の権利である代読代筆をあきらめろと言うのでしょうか。また、これら対応のどこに独立性、第三者性などあるのでしょうか。さらに、このような区と口裏合わせしたとしか思えない人権軽視の発言が、どうして人権擁護機関「せたホッと」の口から出てきたのか、その経緯も含め説明を求めます。

第七に、視覚障害者に対する代読・代筆サービスは、本来育児支援とは別に捉え、守られるべき権利であり、育児支援と引きかえにあきらめさせるようなことなどあってはならないと考えますが、いかがか、見解を問います。

第八に、「せたホッと」はそもそもこのお父さんの懸命の要請を申し立てとして受理したのでしょうか。各地で餓死者まで出した生活保護行政の水際作戦よろしく、単なる相談事例として受けとめ、受理としていなかったのではないかと疑いますが、いかがか、確認を求めます。

最後に、区長に伺います。
これまで述べてきたような区の担当職員の重度障害者とその御家族に対する冷酷な仕打ち、人権擁護機関「せたホッと」職員による障害者の権利軽視の発言、区におもねった第三者機関にあるまじき振る舞いは、区長が目指す子ども・青少年支援策とは相入れないものだと考えますが、いかがでしょうか。
あるいは区長も親が障害者である子どもは乳幼児期を過ぎたならもう育児支援とは切り離されるべきで、学業や進学、運動部等での活動などをあきらめ、日々親に困難な家事をこなし続けていくべきとお考えなのでしょうか、見解を問います。

◎保坂 区長

上川議員にお答えします。

重度障害のある親への育児支援について、また「せたホッと」の対応についてお尋ね、区長の見解と、申し上げたいと思います。
区といたしましては、障害のある方が安心して地域で自立した生活を継続できる社会の実現を目指しており、重度の障害のある方が子育てをする上で必要になる支援は、当事者の意向や家庭の状況を十分に踏まえた上で、適切に進めていくべきであると考えております。今回の件で当事者の御家族に御心労をおかけしたこと、適切でない件を伝えてしまったことについてはおわびを申し上げたいと思います。
また、「せたホッと」の対応についての御指摘もございました。子どもに寄り添って、その存在を受けとめ、身体、生命への危機を回避し、救済を図ることがその設置目的であり、七月の設置以降、第三者機関としての公正、中立な運営を心がけ、対応に当たっていると承知しております。ただ、今回の対応や、あるいは職員の発言には問題があるというふうに受けとめました。御指摘も踏まえまして、今後も子どもの最善の利益の確保を第一に考え、子どもや相談者に真摯に向き合いながら、相談に当たっての助言や支援を行う際は、より慎重に判断をし、取り組んでまいります。以上です。

◎金澤 保健福祉部長

私からは、育児支援等に関する御質問に四点お答えいたします。

育児支援が乳幼児にしか該当しないという説明は誤りではないかという御質問です。
育児支援とは、育児をする親が障害により十分に子どもの世話ができない場合に、保育所、学校等への連絡援助や親へのサービスと一体的に行う子どもの分の掃除、洗濯、調理等を親に対する居宅介護の一環として行うものでございます。この育児支援の対象となる子どもについては具体的な年齢制限の規定はなく、乳幼児しか該当しないということではございません。
区では、現在九人の障害者の方に育児支援を支給決定しておりますが、そのお子さんは乳幼児のみではございません。お話のあった事例のように、子どもの年齢を理由として支給の見直しを説明したことは不適切であり、大変申しわけなく思っております。

次に、乳幼児でない子どもの子育ては育児ではないという解釈は誤りではないのかという御質問です。
児童福祉法においては、満十八歳に満たない者が児童と定義されていることは御指摘のとおりでございます。育児支援に関する厚生労働省の通知におきましては、子どもという言葉が使われておりますが、対象は乳児と幼児に限定されているものではございません。今後は、育児支援については乳幼児のみを対象とするといった誤った解釈をすることがないよう徹底してまいりたいと考えております。

次に、十八歳未満の児童について、個々の状況を勘案し、柔軟に対応すべきではないかという御質問です。
子どもの年齢が高くなれば、自身で対応できる範囲もふえるので、育児支援として必要となる内容もおのずから変わってくるものと考えます。区としては、親御さんの障害や家庭の状況、お子さんの育児支援の内容を十分に勘案し、必要に応じた対応を行うべきであると考えております。

最後に、視覚障害者に対する代読・代筆サービスは育児支援とは別に考えるべきではないかという御質問です。
御指摘のとおり、視覚障害者に対する代読・代筆サービスは、育児支援とは別に提供されるものであり、本件についても親御さんが代読・代筆サービスを申請したことにより育児支援の見直しを行おうとしたものではなく、今後、それぞれについて適切に判断してまいります。以上でございます。

◎岡田 子ども部長

私からは、重度障害のある親への育児支援につきまして、「せたホッと」の対応につきまして、三点御質問がありましたので、まずお答えをさせていただきたいと思います。

「せたホッと」は、子どもの人権を擁護し、救済を図るために設置された公正、中立で独立性と専門性のある第三者機関として、子どもにかかわるさまざまな悩みの御相談を受けて真摯に対応しているところです。
議員御指摘の案件につきましては、お話を伺う中で、相談者の御希望に沿って育児支援サービスの維持を最優先するための方法の一つとして、「せたホッと」からお話をさせていただいたことは事実でございますが、相談者に代読・代筆サービスをあきらめたほうがよいとの趣旨の誤解を与えるような発言は適切さに欠いていたと認識しております。
「せたホッと」は、公正、中立な第三者機関であり、関係所管と事前調整をして対応したとの事実はございませんが、今回の事案を踏まえ、今後、慎重に対応していかなければならないものと考えております。

また、「せたホッと」に関連しまして、区民からの要請を申し立てとして受理しなかったのかということについての御答弁を申し上げます。
「せたホッと」は子どもの権利侵害についての相談を受ける中で、助言や支援を行いながら解決に向けた対応を行っているところです。さらには、子どもの権利侵害が明白と思われる場合には、相談者と調整の上、当該侵害を取り除くための申し立てを受けて、関係機関への調査や調整活動を行いながら、協力、改善を図っていくことが可能となっております。
これまで七月に相談を開始し、十月までの四カ月間で九十一件の相談を受け付けましたが、申し立てに至った事案は四件となっております。お話しの相談の段階におきましては、相談の内容から、子どもの権利侵害に係る問題として、直接「せたホッと」が解決に当たる事案であるとは認められなかったことから、「せたホッと」の機能として、相談対応や申し立てなどの手続があることについて相談者に説明をしなかったところです。ただし、このような場合でも、相談者に寄り添う御案内の必要があったものと考えております。
今後も子どもや相談者に対しましては、「せたホッと」の役割や機能について丁寧に説明を行った上で、真摯に向き合って対応をしてまいります。以上でございます。

◆上川あや

今子ども部長から直接「せたホッと」が解決に当たる事案であるとは認められなかったことから御案内はしなかったということなんですけれども、私は全くこれは納得がいきません。
では、私が議会で取り上げなかったら、来月にも子どもの食事の分、提供を切ると言っていたこと、これは子どもに対する人権侵害は明らかだと思うんですけれども、これをどういうふうに落ちつけばよいと考えていたんですか。結局何もしなかったということなんですよね。
私が今回行ったような調査、調整というものは本来「せたホッと」が担うべき役割で、それを信用しようと思って我々多くの議員は議案に賛成をしたんですね。それに対して何一つやらなかった。私がやったことを本当は「せたホッと」が担うべきだったんではないですか。お答えください。

◎岡田 子ども部長

再質問にお答えします。

「せたホッと」は、子どもの権利侵害に関する相談を受け付けまして、権利侵害が明白と認められる際に、権利侵害の救済活動に入ると、こういう形をとっております。今回の案件につきましては、育児支援の継続に関する相談、こういうことで、子どもに関する相談については基本的には、まず受け付けようと、相談を引き受けようということで、「せたホッと」がまず対応させていただきました。
しかしながら、助言の内容に適切さを欠いた面はございましたけれども、本件については、本来であれば、親の育児支援サービスの提供に関する問題ということで、福祉サービスの担当所管が適切に判断すべき問題ということと捉えまして、第三者機関としてはそのような対応をさせていただいたということでございます。以上でございます。

◆上川あや

担当所管が適切に判断するべき問題としても、不適切に判断していたことを区長も先ほど謝罪しましたよね。不適切な対応があるとわかったときに、間に入るのが「せたホッと」の役割じゃないんですか。どうなんですかね。

質問します。区が不当な理由を振りかざして来月にも子どもの支援を切ると言い出したことは、明白に子どもの権利侵害だと思いますが、権利侵害と認めるのかどうか、まずお答えいただきたい。
また、今回「せたホッと」は、結果として何一つ役立つことをしなかった。これがこれからも続く「せたホッと」のクオリティーなんですか。お答えください。

◎岡田 子ども部長

これまで「せたホッと」が対応してきた内容ですが、問題解決に当たる事案だということで対応してきた案件は幾つもございます。それについては、子どもたちがつらいような状況に置かれていて、それを一刻も早く取り除かなければいけないというときに、実際に調査をし、救済活動に入るということをしておりますが、今回の案件については、福祉サービスの提供に関する問題であるということで、対応しなかったということでございます。以上でございます。