具体的な成果

★劣化した文化財の案内表示。現地点検し安全確保を図ることになりました。

 

2018年度に、安全上、修理が急務な標示板について対処したものの、板面の汚損、支柱のぐらつきなど問題点のある標示板は多数残されています。区教委では、予算の確保が出来次第、年3件程度の修理や撤去を行ってゆく予定。また5年毎に現地点検し安全確保を図ることになりました。

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◆上川あや

文化財の案内表示について伺います。

区内の文化財のスポットを訪ね歩いていて、たびたび気になるのが、区教委が設置をした文化財の案内看板が見るからに古く、傷んでいて読みづらいことなのですが、区教委にその点検、更新がどの程度行われているのかを尋ねますと、昨年業者に委託して初めて全箇所を点検、評価したということで、分厚い資料をいただくことができました。
この資料を拝見しますと、私が懸念していたとおり、劣化の程度が更新を必要とするほど進んでいる箇所が非常に多いということがわかります。
調査は案内板の総合判定と、支柱等を含めた本体の総合判定の二種類に分かれておりまして、それぞれAからDまでの四段階で評価をされていました。このうち評価のC、劣化があり部分修繕が必要な状態と、評価のD、主要部が劣化し、撤去、修繕が必要な状態の二つで更新が推奨されておりましたが、表示板の判定でCとDが合わせて三十七カ所、全体の四分の一以上、本体評価のCとDが合わせて二十三カ所、全体の六分の一弱となっています。

そこで、まず質問いたしますが、支柱を含めた総合判定で更新が求められた二十三カ所のうち、特に劣化の激しい最低評価のD、十五カ所については早急な対策が必要だと考えます。例えば大蔵の永安寺と北烏山の幸龍寺の本体評価もDですが、それぞれの報告が、支柱部が腐食で折れていると指摘にあります。また、喜多見の滝下橋緑道の評価もDなんですが、支柱部のぐらつきが激しいという報告になっています。台風などで支柱が折れて吹き飛ばされでもしたら、ただでは済まない状態なんですけれども、こういった更新、いかがでしょうか。

◎土屋 生涯学習・地域学校連携課長

平成二十八年度に実施しました世田谷区内の文化財標示・史跡案内板及び道標などの現況確認調査では、文化財標示板等のリストに基づき、標示板等それぞれ一基につき現地で検分し、劣化や破損等の状況がわかる写真を撮影して、それぞれの現状を、委員おっしゃるようにA、B、C、Dの四段階に区分して評価し、報告したものでございます。
そのうち本体部分について、C評価については、支柱にさびが目立つもの、Dについては、さびによる腐食が進行しているものを挙げており、おっしゃるようにC、D合わせたものは二十三件となっており、最も評価が低いものがD評価で八件あります。
劣化が進んでいるものにつきましては、職員が改めて現況の再確認を行った上で、緊急性の度合いを勘案しながら対応について検討しているところでございます。危険な状況にあるものにつきましては撤去を行うなど、適切に維持管理を図るように努めているところでございます。

◆上川あや

今回、区が過去四年にどれだけ案内表示を更新したかについても資料をいただきました。
それによりますと、平成二十六年度の更新は四カ所、二十七年度の更新はゼロカ所、実績がないんですね。二十八年度は撤去が一カ所で、更新はやはりゼロカ所、二十九年度は新規設置が一カ所で更新が二カ所ということで、年度によってやったりやらなかったりという現状があります。
その理由を課長に問いました。壊れていますよと外部から指摘を受けるたびに更新の判断はしているということなんですが、言葉を変えると他人任せ、場当たり的ということなんですね。今回の調査で更新が必要とされた箇所は四分の一を超えるんですから、ぜひ計画的に更新をと考えるんですけれども、いかがでしょうか。

◎土屋 生涯学習・地域学校連携課長

昨年度、世田谷区文化財保存活用基本方針を定めまして、その方針の一つとして、世田谷の歴史・文化に関する情報の効果的な発信を掲げておりますので、文化財の標示板等につきましても、区民の方によりわかりやすいように設置を進めることが重要だと考えております。
標示板の中には設置からかなりの年数が経過したものもあり、設置時点以降に調査や情報提供が進むなどにより、内容を改める必要があるものについては随時更新を行ってまいりました。標示板については設置場所の環境によって劣化の状況がまちまちであり、設置後さほど年数が経過していなくても劣化が進むものもあれば、相当な年数が経過しても多少のさび等が見受けられても改修等の必要が認められないものなどがございます。
一律に経年で改修するということが適当なものばかりではないため、職員が文化財の所有者などの関係者と相談しながら、状況を確認して維持管理に努めてまいりました。今後は昨年度の調査結果に基づきまして、改修が必要なものにつきましては計画的に更新について検討していくとともに、定期的に状況を確認して適切な維持管理を図ってまいります。

◆上川あや

ここで気になるのが、案内の表示を今後どのようにしていくかという、ソフトの再検討を含めたビジョンなんですね。このところ話題になることの多い観光振興ですとか、インバウンド、オリンピックのホストタウンになることですとか、多文化共生を考えますと、文化財表示の多言語化というものもとても重要だと思います。
この点を区教委に伺いますと、昨年度策定された文化財保存活用基本方針の重点取り組みの中の世田谷デジタルミュージアムの構築の中で多言語化も検討していくという御説明なんですが、その検討結果を待つこともなく、このところ豪徳寺など、格好の観光スポットの更新を行われているんですね。これらが無駄な投資にならないかということを危惧します。
QRコードなどを利用して省スペースでも景観を損ねることなく、また、無駄な経費をかけることなく案内表示を多言語化していくなど、全体のビジョンをしっかりと描いて、投資効果の最大化というものもしっかり考えた上で取り組んでいただきたいと考えるんですけれども、いかがでしょうか。

◎土屋 生涯学習・地域学校連携課長

委員おっしゃるように、文化財保存活用基本方針の中で、(仮称)世田谷デジタルミュージアムの構築を掲げておりまして、その中で多言語化への対応もするというふうにしております。
文化財の標示板につきましても、デジタルミュージアムを通じましてスマートフォンやタブレット端末でアクセスすることで、外国の方にも容易に情報を得ることができるような機能を検討しているところであり、こうした機能を勘案した上で標示板の改修を行っていく考えでございます。
さらに、地図情報と連携することで、まちなか観光にも役立てるとともに、現地の標示板への情報の記載を最小限に抑えて、文化財周辺の美観にも配慮してまいります。
文化財の解説を多言語化していく上では、異なる文化や社会の方に日本あるいは世田谷の独自の歴史や文化を理解していただくために、単なる直訳ではなく、背景などを簡単にわかりやすく説明することが必要となるなど、具体的には課題も多くあります。また、区の歴史、文化を伝えるために、どのような場所に設置すべきかも含め、全体の方向性を含めて、標示板の更新や優先的に取り組む方法について、しっかりと検討した上で取り組んでまいります。

◆上川あや

記載内容のチェックも歴史研究に合わせて更新しているという、先ほどお話だったんですけれども、実際には町の変化に対応していないところもあるんですね。
例えば太子堂の林芙美子旧宅の案内板には、この路地奥の二軒長屋は林芙美子の不遇な時代の寓居です、その一軒には壺井繁治、栄夫妻が住み、云々とあるんですけれども、この二軒長屋はもうないんですよ。町の変化にもしっかり合わせた評価点検を行って、評価される案内表示をしていただければということを重ねてお願いしまして、私の質問を終わります。