具体的な成果

★区から鉄道事業者に有人改札の維持が求められました。

 

タッチパネル設置での改札無人化では視覚障害者が料金精算できず駅から出られない。車いすで出られる幅の自動改札がない――交通弱者を置き去りにした京王電鉄の改札無人化を上川が批判。
区から3つの鉄道事象者に、①UD条例の施設整備マニュアルに沿った駅整備、②有人改札の維持、③改札を無人化する前に区に事前相談すること――を求める文書が区から発出されました。

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◆上川あや

初めに、京王電鉄が沿線自治体に連絡調整もなく進めている交通弱者にほとんど配慮がない駅改札の無人化と駅員削減の動きについて伺います。

皆さんは、二〇二〇年以降のコロナ禍で、京王電鉄が水面下、駅改札の無人化と駅員削減を同時に加速させていることを御存じでしょうか。京王電鉄に確認したところ、コロナ禍以降、無人化された改札は九駅十二改札、それ以前の無人化まで含めると、その数は十七駅二十一改札に上ります。このうち、区内の無人改札は現状で、明大前駅フレンテ口、下北沢駅西口、千歳烏山駅南口の三改札ですが、ここで注意すべきは改札無人化はなお途上だということです。

京王電鉄に尋ねると、今後のさらなる無人化についてはお答えできないとの回答ですが、京王電鉄労組発行のニュースによれば、さらなる改札無人化と駅員削減を進める意向は明らかです。例えば来月十二日のダイヤ改正で、千歳烏山駅は特急停車駅となり、平日上り方向だけでも四十九本も停車本数が増加します。
ところが、京王電鉄は昨年七月の南口改札に続けて、ダイヤ改正の四日後から西口改札まで密かに無人化する計画です。加えて、四月十六日には北口の定期券売場まで閉鎖します。これにより以後、区内で定期券の窓口販売は受けられなくなります。連動して進められているのが駅員の削減です。その数は昨年七月以降、全線で十七名、本年五月の計画分まで含めると二十八名の減となり、この中には千歳烏山、桜上水両駅の計五名も含まれます。

問題は、こうした公共交通機関の運営体制の変化が、影響を受ける沿線自治体に何ら連絡調整もなく行われ、かつ視覚障害者や車椅子ユーザー、高齢者等、いわゆる交通弱者に配慮のない無人化で、既にトラブルまで起こっているという現実です。
昨年末、この件で私も烏山にお住いの全盲の視覚障害者の方から御相談を受けました。京王電鉄が昨年七月、千歳烏山駅南口を突然無人化し大変困っている。タッチパネル式の精算機だけが置かれたが、画面が見えないので操作はできない。インターホンで駅員を呼び出そうにも、手探りで探さざるを得ず、ようやくボタンを見つけ呼び出しても駅員が来るまで待たされる。世田谷区視力障害者協会でも抗議をしているが、改善の見通しもないというのです。

同種のトラブルは区外の駅でも起きています。同時期、駅改札を無人化した京王稲田堤駅では、付近の作業所に通う車椅子ユーザーが一々駅員を呼び出さなければ、改札を通れなくなりました。駅では一旦彼らが作業所に通う時間帯、無人化した駅員ブース横の扉を開くことにしましたが、その後、社内から反対の声が上がり、同改札は閉じられたと聞きました。つまり、同社の人員削減に障害者への配慮などないのです。
千歳烏山駅の御相談は早速区につなぎましたが、区としても南口改札の無人化は青天のへきれきで、視覚障害者が運賃精算できない状況も私からの指摘で初めて知り、区内全体の無人化状況についても把握はなく、今後の改札無人化、人員削減計画についても知らない、尋ねたこともないというのです。これでは困ります。

そこで伺います。
一点目に、こうした駅改札の無人化、駅員の削減を障害のある区民から苦情を受けて知る、議員の指摘を受けて初めて知るという状況は改めていただかなければなりません。千歳烏山駅南口の状況は、その後区の口添えもあり、およそ二か月かけて視覚障害者でも操作可能なテンキー付の精算機への交換、インターホンの場所を知らせる音声案内の整備へとつながりましたが、本来、こうした改善は、やむを得ず無人化する場合でも、無人化に先立ち行われるべきものでした。今回、完全に後手に回った区の対応をどうお考えなのですか、区の御所見を問います。
その上で、これを教訓に今後は区内全ての交通事業者との連絡を密に取り、事前の計画把握とトラブル防止に努めるよう求めます。見解を問います。

二点目に、駅員のいる改札に勝る無人化改札などないということです。
国土交通省の移動円滑化のガイドラインも、本区が定めたUDの施設整備基準も、無人化を容認する前提で次善の策を定めたものですが、それらに従いテンキー付の自動精算機や音声案内、インターホンを整えても、視覚障害者は手探りでそれらを探さなければなりません。聴覚障害者もインターホンは使えません。介助を要する方々も、結局、駅員の到着を余計に待って、その介助を受けなければなりません。つまり、無人化のツケは必ず交通弱者が払うのです。区民の利益を代弁する立場では安易に無人化を受け入れることがないよう求めますが、いかがですか。

第三に、京王電鉄は区のユニバーサルデザイン環境整備審議会にも委員を出す事業者ですが、国交省のガイドラインも区の整備基準も無視をしています。区はこれをどう評価しますか。また、本件では区のUD審議会も施設整備基準も絵に描いた餅でした。では、今後これらをどう機能させる考えか問います。

第四に、京王線連続立体交差事業との関連です。今後、京王線内では、連続立体交差事業に伴い、駅構内の構造、経路の変更が繰り返されることになるでしょう。日本盲人会連合の調べで、何と四割もの視覚障害者がホームからの転落事故を経験している中で、命を守るホームドアも工事の最終局面まで動きません。ところが、彼らを見守り支援するべき駅員の削減だけが密かに進んでいます。区はこれをどう捉えますか。また、これ以上の駅員削減は控えるよう区は要請を強めるべきではないですか。区の評価と対応を問います。

第五に、京王線では昨年十月、傷害放火事件が起きたことは記憶に新しいところです。京王電鉄では平常時、健常者だけを前提に改札無人化と駅員削減を進めていますが、これで事件、事故、トラブルに対応できると区はお考えでしょうか。
また、視覚障害者の多くが出発駅改札で行き先を告げ、その後の乗換駅、終着駅で駅員から介助を受けるリレーサービスで安全な移動を担保しますが、それらは今後も滞りなく受けられるのか、区の把握と考察を問います。

この質問の最後に、鉄道事業者への支援です。コロナ禍で京王電鉄も乗客数は二割減だと伺っています。経営環境が悪化する中で、障害者、高齢者の滞りのない移動のために、有人改札は維持してほしい、ホーム上の人員も削減しないでほしいと口は出すけれども、人も金も出さない。そのような態度が通るのか疑問です。そのような態度がもたらすのは、結局、人員削減と自動化、無人化で、そのしわ寄せは交通弱者に行くのではないですか、いかがですか。

このような苦境を打開した一例として、宮崎県川南町では、JR九州と協定を結び、町職員が乗り降り等の介助まで始めたと報じられています。区でも学生ボランティアと協力体制を組むなど、柔軟な発想で支援策の構築が考えられるのではないですか。区はどう事業者を支え、多様な区民を助ける考えか、区の考えを問います。

◎田中 道路・交通計画部長

私からは五点順次御答弁申し上げます。

まず、千歳烏山駅南口改札無人化での区の対応と、今後、区内におけるトラブル防止について併せてお答えします。
現在、鉄道駅における改札の無人化の動きは、都内を含め全国的なものとなっており、国では、駅の無人化に伴う安全、円滑な駅利用に関するガイドライン策定に向け、障害当事者団体、鉄道事業者、国土交通省の三者による意見交換会を実施しております。
今回御指摘いただいた改札を無人化したにもかかわらず、チャージ機に視覚障害者への配慮としてテンキーの整備がなされていないことにつきましては、区から鉄道事業者へテンキー設置に向けた要望書を提出し、設置する方向との回答を得ております。
また、今回の区の対応は後手ではないかとの御指摘につきましては、この間、御不便を強いられた方に御迷惑をおかけし、大変申し訳なく思っております。今後、区といたしましては、改札の無人化等、駅の運用変更に関する情報について、各鉄道事業者からの情報提供を求め、計画把握に努めるなど、連携を強化し、未然のトラブル防止に努めてまいります。

次に、京王線連続立体交差事業に伴い、駅員削減は控えるよう要請すべきについてです。
京王線連続立体交差事業に伴う鉄道工事において、現在、橋上駅舎構造となっている駅については、工事中に使用ができなくなることから、仮設駅舎となる代替施設を設けるなどの検討がなされております。工事期間中は、鉄道利用者に御不便をおかけしないよう、京王電鉄からの適切な情報提供等に区も連携して取り組むとともに、適切な人員配置を含め、安全上の十分な配慮を区としても求めてまいります。
また、今後、鉄道工事が進捗していく上で、鉄道利用者の方々からの御意見などが区に寄せられた際には、京王電鉄や事業主体である東京都とも情報を共有し、誰もが安全で快適に御利用できる交通環境の整備に努めてまいります。

次に、改札無人化と駅員削減を同時に進めているが、事件、トラブル等に対応できるのかについてです。
改札無人化の施策について京王電鉄に確認したところ、今回の内容は、複数改札口を有する駅において、一部改札口をインターホン改札化したものであり、係員の補助が必要な場合には、今までどおり有人改札口より係員が駆けつけ、対応する体制を整えているとの説明を伺っております。しかしながら、補助を要する場合に対応する駅員の手が足りるかと、視覚障害者や聴覚障害者の方から支援として十分ではないとの不安の声も寄せられており、区としては懸念も残ると考えております。
一方、車内や駅構内の非常時における対応については、車内やホーム上に防犯カメラを設置し、リアルタイムで伝達機能を果たす環境整備を二〇二三年度までに構築する予定とのことであり、非常事態の発生を想定した警察との合同訓練など、未然防止に向けた取組も実践しているとのことでございます。
区といたしましては、区民の安全で安心な暮らしを守ることを最優先に、今後の京王電鉄の駅利用者の対応や安全管理についての取組を注視し、必要に応じて要請等を行ってまいります。

最後に、リレーサービスは今後も受けられるのかについてお答えします。
京王電鉄では、これまでも駅での支援が必要な方には、駅係員による電車への乗降の際に必要なサポート支援を実施してきたと承知しております。今後の駅の運用につきましても、駅係員を配置している有人駅であることから、御案内が必要な場合には、モニターを通じて画面越しに対応できるカメラ付インターホンを整備しているほか、必要に応じて係員が直接対応する体制となっているとの説明を受けてございます。
議員お話しのリレーサービスを含む区民の安全な移動の担保につきましては、区としても必要不可欠なサービスと認識しております。京王電鉄からは、障害者に限らず、誰もが安心して鉄道を御利用いただける体制をこれまで同様維持すると伺っておりますので、引き続き取組を注視してまいります。
以上です。

◎畝目 都市整備政策部長

私からは四点順次御答弁申し上げます。

初めに、安易に駅改札の無人化を受け入れることはないようにについてです。
バリアフリー法改正により、令和三年に改定及び策定された国の公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドラインは、高齢者や障害者をはじめ、全ての人にとって使いやすいユニバーサルデザインの考え方に配慮した旅客施設等のガイドラインでございます。駅改札口の無人化に際しては、やむを得ず無人改札口を設置する場合の対応基準について、国のガイドライン、また世田谷区施設整備マニュアルに設けており、障害者の方をはじめ利用者の方ができるだけ不便なく利用できるよう誘導を行ってございますが、これらの基準を全て満たした場合においても、障害者等の方にとりましては、障害の度合いや特性により負担が増大となることは否めないことから、区といたしましては、障害者への配慮の観点から、まずは有人改札の維持が望ましいとの考えを持っており、各鉄道事業者にもこうした区の基本的な考え方はしっかりと伝えてまいります。

次に、UD審議会、施設整備基準をどう機能させていくのかについてです。
国のガイドラインでは、無人改札口において、視覚障害者、聴覚障害者からの問合せに対応できるよう措置を講ずるとし、区の施設整備マニュアルでも、有人改札の設置が不可能な場合は、全ての人が不便なく利用できるよう、駅舎等の係員につながるインターンホンや呼出しボタン等の整備を基準とし、写真等で例示しており、それに沿い改修等が行われるべきであると捉えてございます。
このたびのテンキーの件については、区のユニバーサルデザインの会議体に鉄道事業者にも参画いただいていること、また、ユニバーサルデザインを推進する立場の所管といたしまして大変申し訳ないことと認識してございます。区といたしましては、改めて施設整備マニュアルがしっかりと機能するよう、鉄道事業者との連携、連絡、調整を徹底し、やむを得ず無人改札口になるとしても、全ての人が安全で安心して利用しやすい駅施設となるよう鋭意取り組んでまいります。

続いて、無人化等による交通弱者への負担についてです。
駅の無人化による利用者への負担の発生は、バリアフリー法やガイドラインを所管する国としても本意とするものではなく、区も同様の考えでございます。障害当事者団体からは、無人駅等の安全、円滑な利用に関わる要請が寄せられ、国との三者による意見交換会で議論されていることからも、区としても、障害者等の方々の不安や生じる負担は解消されなければならないと考えてございます。国は、検討の積み重ねにより論点が整理され、必要な対応方法、設備設置の考え方や留意点がより明確化され、全ての人が安全で安心して利用しやすい施設の在り方について示されてくるものと期待しており、動向を注視してまいります。

最後に、区の基本姿勢についてです。
川南駅は、安全教育を受けた町役場及び観光協会職員が車椅子利用者の介助を行っていた簡易委託駅の事例で、国の移動円滑化に関する事例共有においても、地域と協力し対応できる可能性を示すものとして紹介されてございます。区といたしましては、こうした先行する改善策の事例等についても積極的な情報収集、研究に努めるとともに、鉄道事業者の運営状況を逐次把握し、道路・交通計画部とも連携の上、鉄道事業者との情報共有、協力関係を密にしてまいります。障害者の方が不便なく鉄道を利用できるよう、有人改札維持の検討を基本としながら、鉄道事業者へは多様な利用者の視点に立った丁寧な誘導及び必要な支援にしっかりと取り組んでまいります。
以上でございます。

◆上川あや

京王電鉄の課題、区民の側に立った御回答だと理解しました。一方で、京王が言うインターホン改札なる造語なんですが、この実態は無人改札に違いないと思います。
先週、千歳烏山駅を御利用の全盲の視覚障害者の方がインターホンを押したところ、押し続けても五分間、駅の係員が来なかったそうです。なおかつ、関係者に問いますと、駅のモニターが二か所一遍には見れないのが電鉄側の構造だそうで、それにもかかわらず、南口改札に続けて西口改札も無人化すると言っているんです。どう考えても無理があります。サービス低下は明らかなのですから、しっかり区民の側に寄り添って、事業者に言いくるめられることがないように、区民目線でこの支援に取り組むよう求めて、私の質問を終わらせていただきます。