◆上川あや

ひとり暮らし世帯が急増し、社会的に孤立する人や、誰にもみとられず亡くなる方が増え続ける中で、六十五歳未満の孤立死の実態が把握されていないことについて伺います。

今、私が手にしているのは「世田谷区における高齢者見守りの取組み」という、区がホームページで公開している十八ページの資料です。委員の皆さんには配付のタブレットでも本日共有しております。

ページの構成は次のようになっています。
まず、冒頭ページが国の高齢者統計、二ページ目と三ページ目の一部が区の高齢者統計、三ページ目半ばから六ページにかけての三ページ半が、世田谷区独自の平成三十年度高齢者孤立死の調査結果であり、冒頭の説明部分にはこうあります。「高齢者が誰にも看取られずに自宅で死亡し、死後数日を経過し発見されたもので、区及びあんしんすこやかセンター(地域包括支援センター)にて把握した件数を計上している」。そして、区内の六十五歳以上の高齢者の孤立死八十二件について、性別、年齢、発見までの期間、発見月、発見者、介護保険その他のサービス利用状況等を子細に分析したレポートとなっています。
最後に残る十一枚のページは、全て区の見守り施策の紹介となっています。当区で独自に把握した、この区内孤立死の調査結果について、六十五歳未満のデータもいただけないですかと、お問合せをしたところ、返ってきたメールでの回答はただ一言、六十五歳未満の状況は把握していないということでした。これのみです。

そこで伺います。区は六十五歳未満の現役世代の孤立死について、なぜ把握し、分析しようとなさらないのでしょうか。その命の重みと対策の必要性に変わりはないのではないですか。いかがですか。

◎有馬 保健福祉政策部次長

区における高齢者見守りの取組の中で、六十五歳以上について調査分析を行っておりますが、これまで六十五歳未満について把握してこなかったのが現状でございます。
孤立死は独居の高齢者だけではなく、どの年齢層にも起こり得ることだと認識しておりますが、現状は東京都監察医務院の孤独死の数値でしか把握をしておりません。区内でどのくらいの方が孤立した状態で亡くなっていたかを把握することは非常に難しいものと捉えております。

◆上川あや

高齢者で把握できるものが、現役世代で把握できないはずなどないと思うのです。要は、現役世代への目配りが不足しているのではないでしょうか。さきに挙げた資料の後段、十一ページにもわたる見守り施策の中で、六十五歳未満でも御利用いただけるものは、どれとどれなんでしょうか。

◎有馬 保健福祉政策部次長

委員御指摘の資料でございますが、より早く異変に気づくための見守りや、安全確保のための高齢者を見守る仕組みでして、地区高齢者見守りネットワーク、高齢者あんしんコール、民生委員ふれあい訪問、あんしんすこやかセンターによるあんしん見守り事業の四つの見守りに加え、配食やごみの訪問収集などのサービス提供者による見守り、新聞販売やライフラインなどの事業者による見守り、地域の支え合いによる見守りがございますが、これらの見守りは基本的には高齢者を対象とした取組となっておりまして、六十五歳未満は対象としておりません。
孤独、孤立は人生のあらゆる場面において誰にでも起こり得るものでございますから、現在実施しております高齢者の把握の仕組みが活用できないか、検討してまいります。

◆上川あや

六十五歳未満の孤立死についても、もっと把握する努力が必要だと思います。

東京都の監察医務院が公表する統計資料によりますと、令和二年度のひとり暮らしの者の死、つまり、単身の自宅住まいで他者により発見された死亡者の数、すなわち孤立死の数は、都内全体で七千六百七十三名となっています。
このうち、六十五歳未満の割合は男性が三七・一二%、女性も一九・六九%です。つまり、現役世代の孤立死は男性で四割、女性で二割にも上りますが、区にはデータの蓄積も考察もなく、支援策もほとんどないというのが現状です。そこで見守りがあれば守れた命もあったのではないでしょうか。

今後は、六十五歳未満の孤立死についても把握、分析し、孤立死の予防や異変の早期発見の手だてを検討するよう求めますけれども、いかがでしょうか。

◎有馬 保健福祉政策部次長

区は、令和六年度からの次期地域保健医療福祉総合計画を来月から検討する予定でございます。
計画策定に当たり、例えばヤングケアラーなどの関係部署をまたぐ支援が必要な方や、ひきこもりなど既存の制度では対応が困難な方など、複雑、複合的な課題や制度のはざまの方などを支援するための体制を検討することとしておりまして、孤独、孤立の問題につきましても検討する予定としております。
孤独、孤立の問題は年齢にかかわらず、また、御本人が抱えている課題も様々な事情が想定されますので、区としましては、高齢者を対象とした従来の見守り、施策等を拡大する中から実態の把握に努め、六十五歳未満の孤独死を含め、孤独、孤立に対する手だてを検討してまいります。

◆上川あや

最後に、今、具体的に動ける支援策について伺います。

先週、現役世代の見守り支援に取り組むNPO法人エンリッチ代表の紺野功さんという方にお会いしてきました。
二〇一五年二月、自宅のマンションで自営業をされていた当時五十一歳の弟さんを孤独死で亡くされ、現役世代に対する行政の無策を痛感したことをきっかけに、LINEのプッシュ通知に相手がタップをすることで日々安否確認をし、異変があれば登録した連絡先に知らせる、もしくはスタッフが駆けつける見守り支援事業を立ち上げ、御活動をされています。

現在のサービス利用者は約九千人。しかし、先月は一月で六百人の増加、先々月も一月で四百人の増加と、利用者も急増しているそうです。そこではサービス利用者の大部分が現役世代ですが、もしもの際の連絡先が書けないという方も多く、誰でもよいから書いてと求めても、実際に駆けつけてくださるとは限らない、こういった課題があるそうです。
このため自治体との連携を模索されています。実際、二十三区全てに当たって協力関係をつくれたのは杉並と足立区の二区だけというのが、とても悲しいです。
六十五歳以上では、区も多くの事業者と見守り協力協定を結べているのですから、六十五歳未満の区民のために連携できないはずなどないのです。御協力いただけないでしょうか、伺います。

◎有馬 保健福祉政策部次長

委員御紹介のNPOの取組については、高齢者に限らず、多くの世代で現実に発生しているひとり暮らしの孤独死につながる健康不安、見守りや安否確認のニーズと受け止めております。他の自治体が六十五歳未満の方々の見守りをどのように実施しているかなどの対応例を参考にしながら、まず区として、御本人の安否確認への協力等、できる対応を検討してまいります。

◆上川あや

速やかに改善を求めて、私の質問を終わります。