◆上川あや

罹災証明書の発行について伺います。
まずは罹災証明書発行の目的、本区における確認方法と、その執行体制について確認をさせていただきます。御説明ください。

◎志賀 地域行政部長

災害対策基本法により、市区町村長は、地震、台風、大雨等により災害が発生した場合において、当該災害の被災者から申請があった場合は、遅滞なく住家の被害等の状況を調査し、罹災証明書を交付しなければならないと定められております。罹災証明書は、税の減免や猶予を初め、住宅の応急修理、義援金の給付など、各種被災者支援策を適用する際の判断材料として幅広く活用されているものでございます。
当区におきましては、罹災証明の発行の際には、申請に基づき職員複数名で被害現場を確認し、内閣府が定める被害認定基準運用指針により被害を判定し、発行することとなっております。具体的な発行体制でございますが、世田谷区地域防災計画では、震災時には、各関係機関との連絡調整を行った上で、災対地域本部のもと、活動拠点や罹災証明書発行窓口を設置し、各総合支所で罹災証明書の発行を行うこととなっております。

◆上川あや

ありがとうございます。区は遅滞なく罹災証明書の交付をしなければならないと。そして、区の現在のスキームですと、全壊、半壊、また、一部損壊の全てについて、必ず複数名を現地に派遣して調査をすると、こういうことですよね。

◎志賀 地域行政部長

はい、お話しのとおりでございます。

◆上川あや

現実に速やかな調査と交付は可能なのでしょうか。

現在の首都直下地震における世田谷区の被害想定の最大値は、全壊が六千七十四棟、半壊が一万七千六百二十七棟、合わせて二万三千七百一棟となっています。これだけでも大変膨大な調査箇所になるのですが、肝心なのは、ここには、その数倍に上るであろう一部損壊の建物が含まれていないということです。二〇一六年の熊本地震では、一部損壊の建物数は、全壊建物数の十五・七九倍に上りました。
今挙げた首都直下地震の想定と同じ震度六強を記録しました新潟県中越沖地震の柏崎市内のデータでも、一部損壊の建物数は、全壊建物数の二十・二六倍と、べらぼうな比率でふえました。そこで、仮にこの柏崎市内の比率を区の被害想定に当てはめてみますと、十二万三千棟もの一部損壊建物が区内でも出てしまう計算になります。全壊、半壊にこの数字を足し合わせた全数が区の訪問調査対象となりますけれども、その合計数は、何と十四万六千棟以上に膨らみます。
現在のスキームでは、必ずこれら全てに二人以上の職員を同時に現地派遣して調査をするとしていますが、どれくらいの期間で調査を終えられるのでしょうか。現実的に迅速発行可能なスキームと言えるのかどうか、確認をさせていただきます。

◎志賀 地域行政部長

被害状況調査の能率につきましては、内閣府の「災害に係る住家の被害認定業務 実施体制の手引き」によりますと、班体制を組んだ場合、一次調査では木造で一班当たり一日三十棟、非木造で十五棟となってございます。調査にかかる期間についてのお尋ねでございますが、被害建物の木造、非木造の割合や、調査に必要な班体制をどれだけ組めるかにもよりますので、具体的にどれくらいの期間が必要かお示しすることは難しいですが、相当の日数がかかるものと想定されます。
調査に当たりましては、必要な人員をどれだけ確保できるかが課題であると考えてございます。被災した他の自治体では、全国の自治体から職員の応援を受け、罹災証明の発行業務を行った例がございますので、当区でも、他自治体から支援が受けられる場合には積極的に受け入れて、発行体制を整えていきたいと考えております。

◆上川あや

全く現実感がない、頼りない想定だというふうに感じざるを得ません。

二〇一六年の熊本地震では、約十八万件の発行を終えるまでに四カ月半もかかってしまいました。この間、当然生活再建に必要な公的支援の提供はおくれ、被災者が先に家屋を修繕せざるを得ませんので、被害の実態もわかりにくくなって、事後、判定に納得がいかないなどのトラブルのもとになったとも言われます。
その教訓を踏まえ、国は昨年三月、既に指針を改定しておりまして、一部損壊の場合のみ、住民が自宅の外観や壊れた部分をスマートフォンなどで撮った写真で判定する自己判定方式を採用しております。この方式は、最大震度六弱を記録した昨年六月の大阪北部地震でも、災害救助法が適用された大阪府内十三市町の大部分、九市町で導入されまして、即日発行が進められたといいます。

今回、当時の導入の実例として、議会事務局を介して、大阪北部地震に対する高槻、茨木、両市の罹災証明書の発行状況を調べてみました。それによりますと、三十五万都市、高槻市の罹災証明書発行総数は二万二千七百七十五件、うち自己判定方式は二万百四十四件と八八%を占め、職員の直接訪問は二千六百三十一件だけで済みました。人口二十八万人の茨木市でも、申請総数一万六千五百八十三件のうち自己判定方式が一万三千三百二十七件と八〇%を占め、職員の現地調査は三千二百五十六件だけで済みました。自己判定方式を取り入れることで、罹災証明書の発行の大半が即日化できるだけではなく、震災時に限られてしまう動ける職員を、より被害の大きい住宅点検に向かわせることができたということです。
区の現在のスキームでは、このような大規模災害に追いつかないことは確実で、こうした迅速化の検討が当区でも平素から進められていく必要があると考えるのですけれども、いかがでしょうか。

◎志賀 地域行政部長

お話しございましたように、内閣府において、罹災証明書を早期に交付するため、一部損壊の場合、被災者が撮影した写真から判定することができるように、被害認定基準運用指針を改定したところでございます。実際に、御紹介をいただきましたが、大阪北部地震の後、この指針に基づき、大阪府の九つの自治体が自己判定方式を取り入れ、迅速に罹災証明を発行したと聞いてございます。
罹災証明書はその後の区民の生活再建に直結するものであり、申請が集中することが想定されるため、迅速かつ効率的に証明書を発行することが重要と認識しており、この観点からは有効な手段であると考えてございます。今後は、自己判定方式を導入している他自治体の事例も参考に、課題を整理し、東京都を初め関係機関との調整を図りつつ、災害対策を担う関連所管と連携しながら、迅速かつ能率的な罹災証明の発行体制について検討してまいります。

◆上川あや

大規模災害でなければ、丁寧に見ていただくのは大いに結構なのです。しかし、大規模災害では追いつかないことは確実ですので、平素からの備えは手抜かりなくぜひお願いしたいということを改めて申し上げて、私の質疑を終わります。