◆上川あや

同性パートナーも家族として扱われる医療機関の情報が区内のどこにもないことについて伺います。

この課題での質問は三回目になります。前回の質疑で中村副区長は、まず区内の病院、診療所において、厚労省のガイドラインに沿って法的な意味での家族だけでなく、同性パートナーも家族と同様の対応に含めているかどうか実態を把握させていただくとお約束になられた。そこで回答を取り寄せましたが、その結果には落胆せざるを得ませんでした。
調査対象となった区内二十八の医療機関のうち、同性パートナーも婚姻関係にある親族と同様に受け入れているとした病院は二か所だけ。今後行う予定とした病院も三か所、検討するも三か所だけで、残る二十か所が未回答。最初の課題提起から二年でこの結果です。
これをどう改善するのかをお伺いする前に、今日はこの課題の解決に時間的猶予などないことを二つの事例からお話をしたいと思っています。

今年に入り、同性婚の実現を願い続けてきた二人の友人、知人が亡くなりました。一人はふるさと青森市に根を下ろし、故郷を帰れる町にしたいと同性パートナーと二人、仲間たちが集えるカフェを開き、パレードを開催してきた宇佐美翔子さんという友人です。先週の木曜日、がんのため亡くなりました。
宇佐美さんたちカップルは二〇一四年、婚姻届を地元市に提出しましたが結果は不受理。二〇一八年に進行がんが見つかると、地域のがん拠点病院は、法的に配偶者でないパートナーを緊急時の連絡先として認めず、二人はがん拠点病院という選択肢を失います。男女の夫婦だったらあり得ない排除です。
一月には同性婚裁判の原告の一人だった佐藤郁夫さんが脳出血で亡くなりました。佐藤さんが救急搬送されたのは都内の誰もが知る有名な病院でしたが、同性のパートナーであると申し出たよしさんに、病院側は血縁者でないことを確認すると病状説明は佐藤さんの肉親に対してのみ行われ、十七年間、共に暮らしてきたよしさんが肉親、夫婦と同様に扱われることはついぞないままに終わりました。これも今年に入り、都内で起きた現実です。
このように結婚を願い続けてきた同性カップルの一方が亡くなるたびに、婚姻の平等と安心してかかれる医療機関の確保はまさしく待ったなしの課題だと痛感します。この二年、区が悠長に構えている間にも人生の大切な時間は過ぎ去っていきます。
こうした状況を、前回調査をお約束になった副区長はどのようにお考えになるでしょうか。

◎中村 副区長

お話しのありました同性カップルの方々が、人生の最終段階の医療において、法的な婚姻関係にある親族と同様に対応されることなくお亡くなりになってしまったことを大変重く受け止めています。
私からは、本年三月の質疑において、まずは実態調査をさせていただきますとお約束をしましたが、本年五月に行ったこの調査の結果については、区条例や世田谷区パートナーシップ宣言、それを踏まえた医療同意について、区の理解促進や協力依頼の取組が不十分ではなかったかという反省があります。
今お話しのとおり、まさに待ったなしの課題と認識しております。医療機関への働きかけをさらに進めるよう所管部に指示をしてまいります。

◆上川あや

真摯な御答弁と受け止めます。

そこで、お願いがあります。まずは一か所からでも結構です。同性カップルが家族として扱われる区内医療機関を同意の取れたところから順次広報できないでしょうか。区は、病院院長会内の合意形成を優先し、一部の理解ある医療機関の情報までをも秘匿したままとしています。このため同性カップルが安心してかかれる区内医療機関の情報が全くない状態が長引いています。改善を求めますけれども、いかがでしょうか。

◎小泉 保健医療福祉推進課長

五月の病院院長会において御説明申し上げ、アンケート調査を行ったところですが、二十八の医療機関のうち回答を得た病院が八か所。先ほどお話しございましたが、同性パートナーの方を親族と同様に受け入れている病院が二か所ということで御回答いただきました。それ以外にも、検討するですとか、今後行いたいという病院がございます。
同性パートナーの方を親族と同様に受け入れていると回答した病院がございますので、今後調整をさらに進めまして、同意の取れたところから情報提供ができるよう順次取り組んでまいります。
今回検討中とか未回答であった、御指摘もございましたこちらについても、引き続き医師会をはじめ、一つでも多くの医療機関に親族と同様に取り扱っていただけるよう、理解協力を求めてまいります。

◆上川あや

この問題は当事者にとってはまさに死活問題です。本来、一か所や二か所の病院の対処で済む問題ではないことに理解を求めたいと思います。

本区の条例でそもそも同性カップルへの差別的取扱いは禁止です。厚労省のガイドラインを見ても、同性パートナーを夫婦と同様に扱え得るとしており、どの病院でも平等な対処が理想であり基本です。
しかし、その実現までの間、同性カップルにフェアな医療資源をまとめて可視化をしていくことについては、本区より他の自治体が先行しております。例えば昨年十二月から当区と類似のパートナーシップ宣誓制度を始めた群馬県は、県内三十七か所の理解ある医療機関リストを公表しています。先月、同制度を始めた三重県でも、四十か所の理解ある医療機関のリストを公表しています。一方で、パートナーシップ宣誓制度の本家本元、六年がたとうとする世田谷区の対応はなぜこうも遅いのでしょうか。区には改めて、区内の医療機関全体における理解増進と平等に御対応いただける医療体制の整備に本腰を入れていただくように求めます。
区はいつ頃までに、またどのように改善させるお考えなのでしょうか。スケジュール感を含めてお伺いします。

◎小泉 保健医療福祉推進課長

ただいま委員から群馬ですとか三重のお話がございましたが、ホームページ上で病状の説明ですとか面会などにつきまして、同性パートナーの方に対する家族と同様の対応を行っている医療機関の名前が掲載されている事例がございます。
このようなことから、医療機関ごとや区のホームページに掲載し、広く周知していくことで、パートナーシップ宣誓の取組への理解につなげるものと考え、積極的な対応を医療機関に働きかけていく必要があるというふうに認識してございます。
この病院院長会は定期的に開催されており、今月末にも予定されていることから、今般のアンケート調査を報告するとともに、調査時において前向きに御回答いただいたところに対しては、情報公開なども含めて、さらなる推進をお願いしたいと思っております。
今、改善の時期という趣旨でございますが、ちょっと難しい部分もございますが、引き続き、医師会をはじめ医療機関からの協力を得ながら、関係所管とも連携し、できる限り速やかに周知方法が改善できるよう努めてまいりたいと存じます。

◆上川あや

今回は医療連携ということで小泉課長に御答弁いただいたのが中心ですが、人権・男女共同参画課、一緒に推進していただかなければいけないんですけれども、どうも私は温度差があるような気がして仕方がありません。しっかり人権・男女課とも連携していただくよう、課長にも副区長にもお願いいたしまして、私の質疑を終わらせていただきます。