◆上川あや

非正規在留外国人に対する区の対応について伺います。

在留資格を持たない外国人であっても、国際人権条約の枠組みから、また、それら規定によらずとも、人道支援の必要性から、区で提供するべき行政サービスは決して少なくありません。それがよく分かるのが、本年八月十日、総務省が都道府県を介して全市町村に発出した事務連絡です。
そこでは、在留資格の有無を問わず提供されるべき三十の行政サービスが列挙され、本区を含む全自治体に適切な対処を求めています。
ところが、同通知を受け取った区の所管課に、その後の扱いを伺いますと、単なる課内資料にとどめ、各サービス担当課には情報共有されていないと分かりました。これでは人道上必要な行政サービスが適用されない可能性が高くなり、問題ではないのでしょうか。いかがですか。

◎松見 住民記録・戸籍課長

委員お話しの通知の内容ですが、在留資格の有無にかかわらず提供対象となっている行政サービスについて、サービスを提供するための情報の把握、記録の管理方法等の取組状況を、総務省が各省庁へ調査した結果であり、各自治体での行政上の便益、サービスの付与に資する目的のために、三年に一度、定期的に調査が行われております。
これまで本通知は庁内周知をしておりませんでしたが、在留資格を有しない外国人に対する行政サービスの取扱いについて、制度の周知、確認を図っていくためにも、庁内周知を徹底してまいります。

◆上川あや

当然そうであらなければならない御答弁です。速やかな対処をお願いします。

本区には、そもそも非正規在留外国人全体についての統計も記録もありません。一方で、入管が仮放免した方の区内居住情報だけは毎月本区に送られてきています。同情報を受け取る課は、先ほどと同じ住民記録・戸籍課で、同課によると、その数は現在十七名だと言います。ところが、こうした居住者の情報が本区で生かされた形跡はほとんどありません。
同情報は、庁内各課からリクエストがあって初めて提供される扱いで庁内周知されており、リクエストがなければ積極的な情報提供はありません。ところが、ここ数年でリクエストがあったのは一度だけ、本年三月、厚労省が仮放免者にも新型コロナワクチンの接種券を送付するよう求める通知を出したため、これに応じた所管課がリクエストをしてきたのが唯一だと言います。その陰で起きているのは何かと言えば、行政の不作為ではないのでしょうか。

例えば、区教委は外部からの調査に、在留資格のない子どもでも、区立学校への入学を認めると回答しています。ところが、その実、仮放免者の学齢期の子どもの有無について、住民記録・戸籍課に問い合わせたことはないと言います。それでは、学齢期の子どもがいないのかと言いますと、現にいるのですね。
区は、なぜ子どもの学びを保障するよう動けないのですか、人権問題ではないのでしょうか。こうした住民情報の変動は、都度区教委に提供されてしかるべきものではないのですか、いかがですか。

◎松見 住民記録・戸籍課長

学齢期の子どもは、被仮放免者であっても、公立小中学校に入学し、授業を受けることができる旨の国会答弁があり、区の教育委員会においても受入れを行うとのことです。これまで、被仮放免者の情報は、各担当所管課からの求めに応じて提供を行っておりましたが、加えて、今後は、行政サービスの対象となる可能性がある該当者の情報は、逐次、個人情報の目的外利用に留意しながら提供してまいります。さらに、行政サービスの提供に漏れのないよう、対象となる行政サービスの種類や対象範囲などについて調査、確認の上、庁内周知の徹底を図ってまいります。

◆上川あや

改めて、区教委のほかにも仮放免者情報の都度提供するべき行政実務がないかの全庁の調査を求めます。この点についてもお答え願います。

◎松見 住民記録・戸籍課長

出入国在留管理局からの被仮放免者に係る情報提供は、被仮放免者本人の同意の上、住居が所在する市町村に対して毎月一回の通知があります。学齢期の子どもに限らず、早期の情報提供が適当であると思われる担当所管課には、逐次情報提供を行ってまいります。

◆上川あや

最後に、もう一つ重要な指摘をしたいと思います。

区の職員には法律で、在留資格のない外国人についての通報義務が課されています。
一方で、平成十五年十一月十七日付の法務省通知では、当該行政機関において通報義務により守られる利益と各官署の職務の遂行という公益を比較考量して、通報するかどうかを個別に判断することも可能としています。つまり、自治体が人道上、その他の必要から通報より優先して適用するべき行政サービスがある場合、通報の留保もまた可能であるということです。
ところが、本年五月から六月にかけ、さいたま市議会から送られてきた調査票、外国人への行政サービス等についてというアンケートに区がどう答えたかといえば、国が滞留資格を問わず提供できるとしたサービスであっても、住民記録がなければ適用しないと一刀両断に切り捨て、通報を優先すると回答したサービスが散見されるという情けなさです。
そもそも在留資格のない人は、住民登録などできませんよね。たとえ母国に帰れば命の危険がある難民認定の申請者であってもです。つまり、区の回答は人道支援の放棄、見殺しではないのですか。これら人道上その適用が求められる行政サービスと通報義務のどちらを優先するかを問われた九月のさいたま市議会の議会質問に対して市は、通報より人道支援を優先させる旨答弁したと承知をしていますが、当区でも命や健康、子どもの学習権を守る人道支援こそ優先されるべきではないのでしょうか。ここは所管がまたがりますので、副区長にその基本姿勢を伺えればと思います。

◎岩本 副区長

お話しいただきましたとおり、通報と区のサービス提供について、それぞれの公益を比較考量して判断できると通知にはございます。一方で、提供できるサービスが医療や子育て、教育、被災者への支援など、いわゆる命や人権に関わるものでありまして、サービスの提供という公益に重きを置くべきだと考えております。また、お話しいただきました被仮放免者等の情報につきましては、サービス担当所管と具体の調整を行うなど、対応の徹底を図ってまいります。

◆上川あや

それぞれあるべき答弁がいただけて、ようやく安心いたしました。この日本の入管行政の非人道性は、ウィシュマさんの一件を見るだけでも明らかなことだと思います。日本では難民認定申請者への差別が常態化している、昨年九月にまとめられた国連人権理事会恣意的拘禁作業部会の意見書は、日本のその施策を極めて厳しく評価しています。こうした入管行政と私たちの、この住民をどう守るのか、きちんとした比較考量、命の優先、安全の優先、よろしくお願いいたします。