具体的な成果

★盛土宅地の安全点検。専門家会議が立ち上がりました。

 

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◆上川あや

初めに、本来あった谷を埋め造成された住宅地、谷埋め盛土宅地の災害対策について伺います。この問題での質問は六回目となります。

この夏、熱海市で起きた大規模土石流の原因が、谷の最上流部を不適切に埋めた大規模盛土の崩落という人災であった可能性が高まったことで、今、盛土災害への関心が高まっています。
私がこの問題を初めて取り上げたのは二〇〇八年の六月です。当時より区は、住宅の耐震化率向上を減災対策の重点としていましたが、地盤そのものの脆弱性は見落としてきた嫌いがありました。
そこで、阪神・淡路大震災では、大阪―神戸間の斜面地に発生した地盤変動二百か所のうち実に半数以上が谷埋め盛土の地滑りであった事実を取り上げ、世田谷区内の地下空間にも、同じく巨大な集水構造である谷は、そこかしこに埋まり、谷の水位が高まれば、地震時に動く可能性があることを指摘しました。その際使ったパネルを改めて示します。

これは、世田谷区南部を含む谷埋め盛土の被害予測図です。斜面地災害研究の第一人者、京都大学の釜井俊孝教授からデータ提供を受け作成したもので、一九九七年に都が想定した神奈川県境直下での地震時に起こり得る地盤災害を予測したものです。
左手中央から右下に下りていくのが多摩川です。この黒くぽつんと見えるのが二子玉川の玉川高島屋です。ここが二子玉川になります。ここから横に伸びていくのが東急大井町線ですね。この黒ずんで見える市街地が自由が丘です。つまり、この自由が丘より西側、多摩川以北が世田谷区に該当します。
この白黒のマップの中で色分けをされている部分があるんですが、この色分けをされた部分が全て谷を埋めた造成宅地、谷埋め盛土です。この色分けしているうちで、ほとんどがこの朱色で示されていることが分かりますが、朱色の色は何かといいますと、地震時に変動する可能性が極めて高い谷埋め盛土を指しています。
この世田谷区の面積で言えば、四分の一弱に満たないところに、約二十五か所の極めてハイリスクの谷埋め盛土が内包されていることが、この図から分かります。

すると、区内全体になりますと、どれくらいの谷埋め盛土があるのかが気になるところですが、都が昨年八月改訂、公表した谷埋め盛土造成地のマップでは、たった十五か所しかありません。
しかも、それはおととし十一月、毎日新聞が朝刊一面で、都が戦前に造成された谷埋め盛土、都内区部三十五か所、世田谷区内の十か所の掲載を見送り、現地調査すら行っていない事実をすっぱ抜き、当区からも開示を求められ、ようやく十増やされた結果です。
加えて、都は昨年八月、同じ毎日新聞の取材に、既に判明していた谷埋め造成地以外にも、同様な手法で調べれば、さらに盛土が出てくる可能性があると認め、しかも都の公開盛土は面積三千平米以上の大規模に限られています。都の公表マップがいかにうのみにできないものかがお分かりいただけるのではないでしょうか。

このため私からは、かねてより都に漏れのない谷埋め盛土の精査と公表、防災区域の指定を求めるのみでなく、区による独自視点での点検、評価の実施と、宅地耐震化への具体的支援を求めてきました。
すると、この春、区は、都市整備常任委員会の主要事務事業の説明資料に新たな一言を加えました。その記述はたった二十三文字の次の一言です。
大規模盛土造成地を対象とする宅地耐震化に関する学識経験者の知見を活用する、これだけです。これでは区の対応は海のものとも山のものとも分かりません。

そこで伺います。区の担当者に伺うと、既に私が議会質問で何度もお名前を出してきた京都大学の釜井俊孝教授はじめ複数の学識経験者による検討組織を立ち上げる準備を始めているとのことですが、どのように専門家の知見を取り入れ、対策に生かすのか、そのステップの説明と併せ、予算の確保に向け区全体として取り組む意思があるのか、その本気度を問います。

◎笠原 防災街づくり担当部長

私からは、谷埋め盛土に関する区の取組について御答弁申し上げます。

東京都は、谷埋め盛土等の大規模盛土造成地について、国のガイドラインに基づき、第一次スクリーニング調査結果を表示した大規模盛土造成地マップを令和二年八月に更新し、区内において十五か所を抽出した上で公表しています。
さらに東京都では、都内の市区町で統一的な調査を実施するため、地盤調査等を行うべき盛土造成地を抽出するための評価手法や現地踏査結果の宅地カルテの作成を含めた第二次スクリーニング調査の計画策定を進めています。
区においては今年度、独自に大規模盛土造成地十五か所について、区職員による目視調査を行っております。また、調査結果について、学識経験者を招いて勉強会形式で意見交換を行い、今後の進め方についても助言をいただいているところです。

東京都から第二次スクリーニング調査の計画内容が来年度提示される予定と聞いております。今後、区といたしましては、都の作成する評価手法や宅地カルテについて改めて検証する必要があると考えておりますので、学識経験者による会議体を独自に設け、御意見をいただきながら第二次スクリーニング調査を進めていきたいと考えております。
東京都からは、コロナ禍で進捗に影響が出ていると聞いてはおりますが、情報共有等の連携を密に取り、大規模盛土造成地の調査を着実に進め、必要な情報を周知するとともに、結果に応じた具体的な防災対策につなげてまいります。私からは以上です。