具体的な成果

★同性ペアでも「事実婚」。区が社会通念あると初見解。

 

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◆上川あや

次に、LGBTなど性的マイノリティー当事者の職員も等しく扱われ、自分らしく働くことのできる環境整備を求め、二点伺います。

初めに、同性をパートナーとする職員の処遇の平等についての続編です。
区の職員の退職手当に関する条例第三条は、死亡による退職の場合には、その遺族に支給すると定めます。続く第四条は、遺族の範囲と順位を定め、その第一順位を配偶者とし、届け出をしないが職員の死亡当時、事実上の婚姻関係と同様の事情にあった者を含むと定義をしています。この届け出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者に同性パートナーを含むか否かは、公金の使途でもあることから、社会通念の有無にも左右される部分です。

しかし、本区では三年以上前、区が実施をした性的マイノリティー支援に関する区民意識調査でも、同性カップルにも区営住宅への入居を等しく認めること、医療や福祉で法律上の婚姻関係と同等な扱いを受けられるようにすることの二点について、賛成が過半数を占めました。また、同調査結果も踏まえ、区議会では同性カップルにも区営住宅の入居申込み資格を平等に与える区営住宅三条例が全会派一致で成立をしています。

加えて、本区は五年前より全国に先駆け同性パートナーシップ宣誓制度をスタートさせ、利用者は先月末までに二百四十名に上ります。同様の制度は現在、大阪府、茨城県を含む五十九の自治体に広がり、そのカバー人口は既に三千七百万人を超えました。さらに、この公的承認の流れは司法判断にも好影響を与えています。同性カップルの不貞をめぐる訴訟で、一審、二審と相次いで男女の内縁関係に準じた法的保護を同性パートナーにも認める判決が出ています。

加えて、本区議会はおととし春、性的指向、性自認を理由とした差別を禁じる多様性尊重条例を成立させました。ここで言う差別の禁止には同性カップルへの差別も含まれるとするのが条例提案時の区の説明です。このため、区は区内医師会にも不動産関係団体にも、また通信事業者や世田谷病院長会に対しても、同性カップルを配偶者に準じて扱うよう理解を求めてきた経緯があります。
その上で、同性をパートナーとする区職員の休暇制度を平等にするよう求めた昨年四月の私の苦情申立てに対し、区長の諮問機関、男女共同参画・多文化共生苦情処理委員会の答申は、いずれにせよ、同性をパートナーとする職員にも異性の配偶者、パートナーを有する職員と同等な休暇を取得できるよう改善するべきであると結論した上で、職員の休暇に関する条例及び同施行規則に規定する配偶者について、次のように述べています。配偶者の定義を、届け出をしないが事実上婚姻関係と同様の関係にある者としているが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者には同性パートナーも包含されていると解することができるから、同性のパートナーを有する職員にも配偶者を有する職員と同様の休暇制度が認められてよいのではないか、引用はここまでです。

以上、述べてきたような区民理解、区条例に基づく差別の禁止、法律家も含めた区の諮問機関による同性パートナーも事実婚に含まれ得るとした答申、加えて昨年、国立社会保障・人口問題研究所がその結果を公表した全国家庭動向調査で、同性婚を法律で認めるべきだとの回答が六九・五%に達した圧倒的な世論等を踏まえれば、区条例で言う事実上婚姻関係と同様の事情にある者には同性パートナーも含まれるとするのが相当で、それを認める社会通念も既にあると見るべきではないですか。区の見解を問います。
その上で、職員死亡時の退職金の受給権も、当然同性パートナーに認められるようにするよう求めます。区の見解を問います。

最後に、出生時割り当てられた性別とは異なる性自認を生きるトランスジェンダーの区の職員の処遇について伺います。
この件をめぐっては、二〇一六年六月の定例会において、当時の岡田総務部長、現在の副区長より、次のような答弁を得ています。「御指摘のトランスジェンダーに関しましては、手術による性別変更をした方は二割にすぎないとの話がございましたが、こうした現状も踏まえ、区においてもトランスジェンダーの当事者職員に関し、自認する性別に配慮した柔軟な組織対応を行っていく必要があると考えます」とお答えになりました。
しかし、この柔軟な組織対応を図るとの区の方針は、会議録を検索しなければ分からない情報のままとなっています。この間、豊島区や船橋市では、全庁的な性自認、性的指向に対する対応方針を定め、職員についてもその対応方針を柔軟にするように定めております。これに見劣りすることのないよう規定の整備を図り、公表すること。また、旧姓使用になぞらえて、通称名の使用についてもその整備を図るよう求めて、その見解を伺って、私の壇上での質問を終わります。

◎田中 総務部長

私からは、性自認、性的指向にかかわらず職員が働きやすい職場づくりについて、二点に御答弁いたします。

初めに、本区における同性パートナーについての社会通念及び死亡退職金の受給権についてお答えいたします。
世田谷区は、全国に先駆けて世田谷区パートナーシップ宣誓の取扱いに関する要綱を定め、同性パートナーシップを受け止める取組を始めるとともに、性的マイノリティーも差別しない、多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例を制定するなど、区の内外に向け、性的マイノリティーの理解促進に努めてまいりました。こうしたことなどから、議員御指摘のとおり、退職手当の支給根拠となる条例の適用範囲である世田谷区においては、同性パートナーも事実上の婚姻関係に準じるとする社会通念が形成されているものと評価しております。

しかしながら、退職手当の支給についての規定及び解釈は二十三区共通基準であり、少なくとも二十三区全体のコンセンサスを得る、あるいは判例により同性パートナーも事実上の婚姻関係に準ずるとする社会通念の形成が認められる必要があり、現時点で職員が亡くなった場合、直ちに職員の同性パートナーに退職手当を支給することは難しいと考えております。
同性パートナーも事実上の婚姻関係に準ずるとする区の認識が二十三区の共通の理解となるよう働きかけ、性的指向にかかわらず職員が等しく扱われ、安心して働き続けることができる職場環境の改善に引き続き努めてまいります。

次に、性的マイノリティー職員に対する区の処遇方針についてお答えいたします。
区は、多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例に定める事業者の責務として、トランスジェンダーを含む性的マイノリティーの職員が、その性自認が尊重されて安心して働ける職場環境を率先して目指していく必要があると認識しております。これまで職員互助会の結婚祝い金や弔慰金について、同性をパートナーとする職員を対象に加え、また、今年度からは同性をパートナーとする職員の休暇制度を創設しております。加えて、今年度定めた職場におけるハラスメントの防止に関する基本方針では、新たにLGBTへのハラスメントであるSOGIハラスメントも防止すべきハラスメントとして明記し、懲戒処分の指針の改定により、職員の処分についても規定したところです。
このように、性的マイノリティーの職員に対する様々な処遇改善について取り組んでまいりましたが、今後はこれらの情報に職員誰もがアクセスできるようにすることが必要であると認識しております。お話しの他自治体の取組例を参考にしながら、当事者が安心して相談できる環境の整備に努めてまいります。
また、トランスジェンダーの職員である場合、自認する性別と一致しない名前を名乗らざるを得ず、またその名で呼ばれることに苦痛を感じることも考えられるところです。通称名の使用は、旧姓使用とは違い戸籍に基づかない名前を使用することになりますので、その影響等を整理した上で旧姓使用に関する要項等を参考に検討してまいります。以上でございます。