◆上川あや

次に、新型コロナウイルスの感染症対策として、徐々にその掲載項目を増やしてきた感染者情報の公開に関して伺います。

新型コロナウイルスの感染者が確認されると、保健所は、感染経路や濃厚接触者の有無などを把握するため、発症前後の行動歴や接触した人の名前、関係性、接触した場所や当時の状況などの調査を行います。
こうした情報は、感染症法の規定により、個人情報の保護に留意した上で、感染予防や治療に必要なものについては、新聞、放送、インターネットその他適切な方法で公表すると定められています。そして、この間、身近に感染者が迫ることへの不安から、より詳細な情報公開を求める声や、感染者の行動とその責任を問う声も高まっています。しかし、感染者情報の公開においては人権の擁護が大前提、慎重な対応が求められると考えています。

新型コロナウイルスをめぐっては、感染者やその家族、職場や感染経路となった場所を中傷する電話やSNSの投稿が、この間、相次いでいると報じられています。NHKによれば、国に寄せられた被害者からの相談は五月までに八百件、中には看護師の感染した病院に誹謗中傷の電話やメールが届いたり、感染者が経営に関わる店名の公表に伴い、ツイッター上で日本から消えてほしいなどと中傷される事態も起きており、自治体の公表情報に対しても、名前と住所を公表しろよ、くたばれ、自業自得などの投稿が相次いでいると報じられています。

こうした中、LGBT、性的マイノリティーの当事者の間でも、自身やパートナーの感染をきっかけに、これまで職場や周囲に伏せてきた日常生活とは異なる戸籍上の性別や個人の性的指向、同性パートナーの存在が調査の形で否応なく聞き出され、不注意に家族や職場に伝えられないか、個人の特定につながる属性とともに公表されないかへの懸念が高まっています。
こうした本人の意に沿わないセクシュアリティの暴露は、今月施行されたパワハラ防止法、また、この春、改定された区のハラスメント防止に関する基本方針も禁じている個の情報の暴露、アウティングにほかならないはずですが、極めて不用意に感染者ごとの性別、年代、職業、居住地域、さらには感染者相互の関係性まで明らかにしている自治体が少なくないことを懸念しています。自分がいつ誰と会ったのか、どこに行ったのか、共に暮らす人はいるか、その関係性は何か。人によっては家族や仕事すら失いかねない非常にセンシティブな情報が、コロナ禍の中、軽々に取り扱われることのないよう求めます。区の見解を問います。

◎中村 政策経営部長

私からは、新型コロナウイルスの感染者情報の公開について御答弁いたします。

新型コロナウイルス感染症の検査陽性者の情報を公開することによって人権侵害がなされることはあってはならないことです。こうしたことから、区は、個人のプライバシーの保護と人権への配慮、また、医療機関や企業活動への配慮を前提とした上で、四月一日から新型コロナウイルス感染症の検査陽性者数の公表を始めました。五月十三日からは、東京都の公表方法に準じ、入院中、宿泊療養中、自宅療養中、療養期間経過を含む退院等、死亡と、それぞれの人数を公開することとともに、PCR検査数も公表することとしました。緊急事態宣言が解除された五月二十五日からは、男女別と年代別人数の公表を始めましたが、日ごとに公表することで個人が特定されやすいことから、これらは週ごとの公表としたところです。
今後も検査陽性者の状況の公表に当たっては、御指摘のように公表された数字による影響をよく理解した上で人権等への十分な配慮をしてまいります。
以上です。