◆上川あや

最後に、住所を定めることが難しい方々への特別定額給付金の支給についてです。

国は、同給付金の支給対象を四月二十七日時点で住民基本台帳に記録のある者としています。路上生活者や、いわゆるネットカフェ難民等、安定した居住実態が持てず住民登録のない方も、現実、都内には少なくありませんが、国の給付スキームはあくまでも住民票ありきであり、区の関係所管に尋ねても何ら打開策を見出せていないことに私は懸念を深めています。

ここでは二つのグループ、A、Bとに分け、その状況と問題点を掘り下げます。まず一つ目のグループAに入るのは、定額給付金をめぐる本年四月二十八日付の国の事務連絡でホームレス等と表現された方々です。具体的にはいわゆる路上生活者、ホームレスとネットカフェ等で起居する方々が含まれます。
続いて、二つ目のグループBには、二十三区共通の事務として、特別区人事・厚生事務組合、いわゆる特人厚が所管をする四つの福祉施設、具体的には生活保護法に基づく更生施設と宿所提供施設、社会福祉法に基づく宿泊所、最後に、ホームレスの自立支援を目的とする自立支援センターに入所する方々です。

国が四月二十八日に発出した事務連絡は、グループAの方々について、自立支援センター等が生活の本拠たる住所として認定される場合があると希望を持たせる書き方をしています。続けて、事実上、ネットカフェに寝泊りしている方についても、長期契約が締結され、長期にわたって滞在する利用者の意思が確認されていること、かつ、店舗が利用者の住所として記録されることについて、店舗の管理者が同意しているようなケースにおいては住所として認定される場合もあるとしています。
さらに、同事務連絡は次のように続きます。住所の認定については、個別具体の事案に即し、生活の本拠であるかどうかを総合的に判断して決定されるものなので、各市区町村において判断いただく必要があります。つまり本区にも判断を迫っているのです。ところが、本区の担当者に伺うと、これらグループAについて、区として住民登録を認めることは難しいといいます。他方、二十三区の中には、今回の事務連絡をしんしゃくし、ネットカフェ等との間に長期契約があること、施設管理者が住民票を置くことに同意していることをもって住民登録を認める動きもあり、現に台東区、墨田区、北区では、これらAについて住民登録を認めた先例もあると確認をしております。

今回、区は、特別定額給付金の申込み期限を八月二十七日までと定めました。この間、都から国へは再三にわたり、住民記録によらず支給する方法を示してほしいと求めているそうですが、国はなお方針を変えず、返答もないままだと伺っています。区の申込み期限までに国がその姿勢を変えない場合、住民登録をあくまで拒む本区の姿勢では、最も支援を必要とする方々に給付金が届きません。
区は、国への是正の働きかけ、東京都任せで終わらせず、自らも是正を求め動くべきですし、国の是正を待つのみでなく、それが是正されなかった場合の次善の策も検討されてしかるべきと考えますが、いかがか、区の見解を伺います。

続けて、グループBについても、四施設を持つ特人厚としては、自立支援、就労支援に必要な場合、施設に住民票を置くことも認め得るとしています。ところが、特人厚がそれを認めても、本区はその住民登録を認め難いとしています。しかし、今回、本区を除く二十二区を調べたところでは、新宿区、台東区、墨田区、江東区など十区が、特人厚が認めるのであれば、その住民登録を認め得るとしています。ここでも当区の冷淡さは際立っております。
そこで最後に伺います。A、Bそれぞれへの給付の実現に向けて、本区としても全体を調整し、最善の努力を傾けることをここにお約束いただきたいと思います。この点は所管がまたがりますので、ぜひ副区長より、どのように御指示なさるのか、また今後の展望も含めてお話をいただければと思います。

   

◎岡田 副区長

私からは、住所を定めることが難しい方への特別定額給付金の支給について御答弁申し上げます。

政府は、簡素な仕組みで、迅速かつ的確に家計への支援をすべく、全国民に対して一律に一人当たり十万円の特別定額給付金を給付するとし、本区におきましても、基準日時点で区に住民登録されている全ての区民に給付すべく、作業を進めているところでございます。
議員お話しのいわゆるホームレスなどの方については、多くが住民登録されていないため、そのままでは給付することが困難になります。給付要件である住民登録に向けましては、本人の意思や住民登録の要件等、個別具体の事案について総合的に判断する必要があります。総合支所を中心にホームレスの方の実態を把握するとともに、その給付金の支給につきましては、特別定額給付金担当部と住民記録を担当する地域行政部がしっかりと情報共有をし、適正に希望する方に給付できるよう指示してまいります。詳細については、部長から答弁させます。

◎小澤 特別定額給付金担当部長

私からは、住民登録がないホームレス等への特別定額給付金の支給に向けて、国への働きかけについてお答えいたします。

総務省の実施要領では、特別定額給付金を迅速かつ的確に給付するため、給付対象者は原則として住民基本台帳に記録されている者としております。住民登録が必要な理由といたしましては、居住の確認が取れないことから、現に居住していない複数の自治体から給付金を受け取るおそれもあり、正確に給付されない事態も想定されます。
そのため、居住が安定していない、いわゆるホームレスの方や、事実上、ネットカフェに寝泊りしている方が特別定額給付金を受給するためには、現に居住している区市町村において住民登録の手続を行い、居住地を確定することが必要だとされています。まずは八月二十七日の申請期限があるため、ホームレスなどの方にも給付金を受け取られるように、関係所管部と情報共有、役割分担をするなど連携し、分かりやすい御案内に努めてまいります。また、給付に向けた次善の策の検討につきましても、まずは国が統一した対応を示すように、既に国と連絡を取り合っている他自治体との情報共有を深め、区としても働きかけてまいります。
以上でございます。

◎清水 地域行政部長

私からは、路上生活者、いわゆるホームレスやネットカフェ等で起居する方や特別区人事・厚生事務組合が所管している施設の入所者の住民登録について御答弁いたします。

国の通知によりますと、いわゆるホームレスの方やネットカフェに寝泊りしている方について、長期契約により長期滞在の意思が明確、かつネットカフェなどの施設管理者等からの利用者の住所として、住民基本台帳の登録の同意があるケースにおいては生活の本拠たる住所と認められる場合があるとされています。
区といたしましては、国の通知を参考にし、住民基本台帳法に基づき、住所の認定については個別具体の事案に即し、生活の本拠であるかどうかを総合的に判断いたします。特別区人事・厚生事務組合が所管する施設につきましても、施設の管理者から、生活の本拠であることを明らかにするための確認資料、例えば生活の本拠として住民登録を認める等の施設管理者の同意書などにより、個別具体の事案に即して、生活の本拠であるか総合的に判断し、住民登録を行ってまいります。
以上です。

◆上川あや

ただいまいただきました御答弁で、定額給付金、給付の前提となる安定した住まいを定めることが難しい方々の住民登録について、世田谷区も、さきに挙げましたAとB、二つのグループについてその住民登録を認め得るというふうに見解が変わったことは評価いたします。区として、スキームの是正を国に求めていくということの主体性を求めましたけれども、こちらも御答弁いただきましたので、その変化に期待をしております。
これを機に、定額給付金に限らずに、福祉につなげることもしっかり取り組むことを求めまして、私の質問を終わらせていただきます。