具体的な成果

★家族の多様性に配慮ない「父母欄」、撤廃されました。

 

単に「保護者」とすればよい記入欄に、「父・母」と印刷する無配慮を上川が指摘。
19年5月、区と区教委の書類から父母欄が撤廃されました。

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◆上川あや

家族の多様性に区の書類が追いついていないという課題を取り上げます。

先日、区のパートナーシップ宣誓制度も利用したあるレズビアンのお母さんの方から御指摘を受けました。
区の保育担当部に出す書類には、母欄、父欄があらかじめ印刷されており、単に保護者欄ではないために、この方はいつも父欄のこの二文字を二重線で消して、父親の不存在に丸をつけて対応しているということでした。世田谷には子ども条例もあり、子どもの人権にはすごく配慮しているのに、その御家族の多様性となると全く配慮がないことが不思議だというお話でした。

今回この御指摘を受け、私も保育課から書類を取り寄せ調べてみました。例えば、お子さんを保育所に預ける際の入り口となる入園申込書には、御家庭の状況の記入欄が丸々一ページありますが、その書面は左右に分かれて、左側が印刷文字で母の状況、右側が印刷文字で父の状況となっています。つまり、あくまで男女で御両親がそろっている御家庭が前提なんですね。しかも、母欄を左側に優先して書かせるところに、区が条例で解消を目指しているはずの性別役割分担意識が丸々あらわれています。

世の中には、祖父母に育てられるお子さんも、おじ、おばに育てられる子どもも、親権を持たない養育世帯で育てられている子も、児童養護施設の子どももいるわけですけれども、区の書類には母欄、父欄しか印刷されていない。それ以外の方は書きようがない。こういった書類なんですね。これら保護者には、左右の両欄とも二重線で消して余白に書いていただくつもりなんでしょうか、お答えください。

◎知久 保育担当部長

入園申込書の家族状況欄などへの記載につきましては、保育の必要性を判断する指数に直接影響しますので、各御家庭の状況等を伺いながら個別に対応させていただいておりますが、家族の多様性を認め合うといった点から、父、母のみを想定した様式は課題があるものと考えます。

◆上川あや

職員が個別に聞き取ればいいという問題じゃないと思うんですね。御家族の多様性にも、受け手側の心情にも全く配慮がないと感じます。
本来、単に保護者とだけ書けばよい欄に、父親、母親とあらかじめ印刷してしまう無配慮こそ問題だと思います。同様の無配慮は、入園後に書いていただく連絡カードにも、児童票にも見られました。今挙げた書面に限らず、保育の書類を全面的に点検し、見直していただきたいと考えますけれども、いかがでしょうか。

◎知久 保育担当部長

保育園に関して、保護者の方に提出いただく書類としては、保育所等入園申込書を初め、区立保育園ですと、入園後に御提出いただく連絡カード、お子さんや家族の状況を把握するための児童票、また延長保育を申し込まれる際の申込書などさまざまなものがございますが、御指摘のとおり、父、母以外の選択肢がない書類がございます。全ての書類について、いま一度再確認しまして、保護者の実態に応じ、お書きいただける様式に改めてまいります。

◆上川あや

今回、私は、保育園の書類のみならず、区教委の書類についても取り寄せ調べてみました。
幼稚園関係の書類にも、小中学校の書類にも、さすがに父母欄だけをあらかじめ印刷したものはなく、保護者の呼称で統一をされていたのは救いなんですが、続き柄欄を自由記載とし、保護者の多様性にニュートラルな様式と、父、母、その他などとあらかじめ印刷してしまい、その他の場合のみ括弧内に書いていただく様式の二種類がありました。
父と母だけを典型例として前に出し、残る人たちをその他とする必要もないのではないかと感じます。
自由記述欄一つで書面が十分機能することは、ほかの書面で既に明らかなのですから、父、母以外はその他だと、あなた方御家族はその他だと、一々感じさせる必要などないと思います。区教委の書面も点検し、誰もが気持ちよく書けるニュートラルな書面にしていただきたいと考えるんですけれども、いかがでしょうか。

◎工藤 教育政策部長

区立幼稚園、区立小中学校におきましては、保護者にさまざまな書類の作成をお願いし、御提出いただいております。これらの書類では、委員お話がございましたように、母欄と父欄に分かれていることはございませんでしたが、子どもとの関係性を記載する欄には、父、母、その他、性別欄には男女の記載があり、選択する形式となっているものがございました。
教育委員会といたしましては、保護者から提出いただく書類を改めて確認し、子育てをしている方の多様性に配慮し、可能な限り自由な記載ができるよう見直していきたいと考えております。また、各幼稚園や小中学校では、行事の参加や災害時の引き取り、転出入などにかかわり、保護者に提出を求めるさまざまな書類もございます。各幼稚園や小中学校においては、日ごろから多様な家庭環境などの子どもたちがいることに配慮した教育活動を進めているところでございますけれども、引き続き一人一人の人権を尊重した取り組みを推進していく必要があると認識しております。
今後とも、各幼稚園や小中学校における多様性を尊重した取り組みの重要性や書類の記載欄への具体的な配慮などについて、校長会などにおいて周知徹底を図るとともに、人権に関する研修の充実を図るなどして、教職員の人権意識の向上にも努めてまいります。

◆上川あや

最後に、区政全般にかかわることとして、副区長に伺いたいと思います。

今回は、保育と区教委のそれぞれに点検と見直しを求めたんですが、学童クラブや児童館など、ほかにも御家族にかかわる書面は多いだろうと感じます。この際、御家族の多様性の尊重という観点から全庁的に書面を点検して、意識改革とあわせて見直しをしていただきたいと考えるんですけれども、いかがでしょうか。

◎岡田 副区長

昨年四月に施行しました世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例は、全ての人が多様性を認め合い、人権が尊重され、尊厳を持って生きることのできる社会の実現を目指しております。御指摘の固定的な性別役割分担意識の解消、こういったことも条例の基本的施策に掲げておりまして、また、子育てをしている同性カップルを初めとする多様な家族の形態があることも念頭に置いて人権を尊重することは、行政として大切なことであると認識しております。
改めまして、条例の基本理念を全庁に周知することとあわせまして、各種の書面等につきましても必要な見直しを行い、各部署における意識改革を促し、改善につなげてまいります。

◆上川あや

今回私が求めたのは、父や母という呼称をやめましょうという言葉狩りじゃないんですね。お父さん、お母さんと呼ぶので、もちろんお父さんならお父さん、お母さんならお母さんで構わないんです。
問題は、保護者で言えば父母だろうという、この決めつけ。決めつけで書面をつくるようなことはやめてもらいたいと。多様な御家族の実態にそぐわない上に、無用な疎外感を生むことになりかねないということです。この意識の徹底を改めて求めまして、私の質疑を終わります。