◆上川あや

特別区職員の障害者向け採用選考について伺います。
この問題については、平成十七年以来およそ六回にわたって取り上げてまいりました。当区を含む特別区が、民間に対しては精神・知的障害者の雇用の拡大を求めながら、みずからは一切雇わない姿勢は全くおかしいということを問い続けてまいりました。
区では、この間、精神・知的障害者に対してはごく短期のチャレンジ雇用ばかりを続け、昨年ようやく非常勤職員の採用に踏み出しました。さらに、来年度からは特別区人事委員会も障害者を対象とする選考に、初めて精神・知的障害者を含める決定をしたということです。
今回ようやく三障害全てに正規雇用の門戸を開いたきっかけは何だったのでしょうか、まず伺います。

◎中村 総務部長

障害者の雇用の促進等に関する法律が改正されまして、国や他の地方公共団体、民間企業において、障害者雇用のさらなる促進が図られる中、特別区においても、採用選考に当たって障害種別を特定せずに、障害者間の均等な就労機会の確保が求められております。また、東京都において、今年度より障害者を対象とするⅢ類採用選考として、障害種別を特定しない形での採用選考へと見直しが行われたところです。
こうした課題認識や都の状況などを踏まえまして、平成三十年度の特別区人事委員会の職員採用試験については、現行の身体障害者を対象とする採用選考を知的障害者、精神障害者をも含めた障害者を対象とする採用選考へ見直しを図るものです。

◆上川あや

精神・知的障害者にも門戸を開いたことは一定の評価をいたします。
しかし、大きな課題が残されていると感じています。現状の広報を見る限り、特別区は三障害全てを一つの採用区分、採用基準に押し込んでおります。つまり知的障害者に対しても、あくまで教養偏重の選抜試験を受けさせようとしています。これでは知的障害者の多くが現実には採用されないと危惧いたします。

そのあしき前例が東京都です。都は特別区より一年早く従来の身体障害者のみを対象とした採用選考を三障害共通選考へと改めました。しかし、三障害を同一区分、同一基準で選んだ結果、知的障害者の採用は結局ゼロです。精神障害者の採用が全体の六六%を占めるなど、いびつな結果となっております。都の募集案内を見ましても、精神・知的障害者に障害特性に応じた合理的配慮を提供した痕跡はありません。共通の一次選考の手始めは二時間二十分の筆記試験になります。知能分野として、文章理解、英文理解、判断推理、数的処理、資料解釈、空間概念を二十五問問い、続けて知識分野として生活常識、人文科学系、社会科学系、自然科学系を十五問問うとしています。これが終わりますと課題式の作文、一時間三十分が続きます。この一次選考の結果、応募時点では八・八%いたはずの知的障害者は一次選考の合格者の一・一%にまで激減します。続く二次選考のグループ討議と個別面接を経ますと、最終結果はゼロ人です。

障害者差別解消法は、障害特性に応じた合理的配慮の提供を行政機関に義務づけておりますが、同一基準での採用に十分な合理的配慮があると言えるんでしょうか。同じことが三障害一括で行う特別区の新たな選考でも起こるのではないでしょうか。
区には先行事例として都の選考手順をしっかり調べていただきたいと求めたところですが、それをどのように把握、評価しているでしょうか、お伺いします。

◎中村 総務部長

お話のありました東京都の二十九年度に実施しました障害種別を特定しない職員採用選考につきましては、最終合格者が三十五名のうち、身体障害者が十二名、精神障害者が二十三名、お話がありました知的障害者ゼロということで把握をしております。東京都の障害者を対象とする選考は、一般事務職のⅢ類としての試験区分であり、地方公務員法に定める能力主義や成績主義を基本に、障害の種別にかかわらず、同一の基準を適用しているものと推察しておりますが、知的障害者の方が、こうした筆記を中心とした選考基準で合格することは困難な面もあると認識をしております。

◆上川あや

ここで他の自治体の障害特性に配慮した選考を御紹介したいと思います。
県レベルでは、知的障害者の職員採用が岐阜県、静岡県、愛知県、京都府、三重県、また滋賀県、鳥取県などに広がりを見せております。例えば滋賀県では、昨年度より知的障害者向け採用選考を身体・精神障害者と別個に分け、また、採用の人数も別個に分けて実施をしております。
一次選考は人物評価と筆記試験なんですが、筆記試験といいましても、知的障害者の特別支援学校の高等部卒業程度の難易度で、試験時間も九十分と短く、採用選考全体に占める配点は全体の六分の一、百点ということです。この選考で重視をされているのはむしろ人物試験でありまして、一次選考では、理解力やコミュニケーション能力を見て配点二百点、二次選考では、人物や意欲、作業能率を見て配点が三百点となっています。合理的配慮ということはこういうことを言うのではないかと私は考えています。
また、静岡県、愛知県、滋賀県でも、障害種別において筆記試験の内容は変えているんですね。特別区の採用選考にも同様の配慮があるべきだと私は考えております。三障害全てを同一区分、同一基準で選ぶ選考手法はぜひしっかり配慮して、改めていただきたいということを求めて、特別区に対しても進言を求めますけれども、いかがでしょうか。

◎中村 総務部長

来年度から対象を拡大します特別区の障害者を対象とする職員採用選考につきましては、東京都と同様に、一般事務職のⅢ類の採用区分として実施されるものですが、特別区の一般事務職の試験に比べて、試験時間を延長するとともに、一般教養試験の出題数を少なくすることや、課題式の作文についての必要文字数を少なくするなど、一定の配慮も行われます。
まずは、来年度の障害者を対象とした採用選考の実施状況を見据える必要がありますが、お話にありました他自治体などの取り組み事例も踏まえ、採用選考のあり方などについて、二十三区全体での会議体の中で議論を深めていきながら、特別区人事委員会等へも働きかけてまいりたいと考えております。
また、こうした試験制度のほかにも、知的障害者や精神障害者を含めて一人一人の障害特性や個人の能力に見合った雇用について、今後、区として課題を整理するとともに、継続して働き続けられるための環境整備についても検討してまいりたいと考えております。

◆上川あや

もう一問聞きたいんですけれども、時間がなくなりました。これで終わります。