◆上川あや

初めに、区の法規担当に二点、お伺いいたします。男女共同参画と多文化共生の条例についてです。

さきの他会派の代表質問の中に、基礎的自治体である世田谷区が今になって本条例を制定する意義は何かとの問いかけがございました。
憲法第十四条は、侵すことのできない永久の権利として国民一人一人の人権を保障しており、世界人権宣言も、「いかなる事由による差別をも受けることなく、この宣言に掲げるすべての権利と自由とを享有することができる」とうたっている。本条例骨子案における目的、趣旨については、ともに約七十年前に制定された日本国憲法や世界人権宣言でほぼ網羅されているように思えるという御指摘です。
両者は確かに、区の今回の条例の趣旨、目的にも重なるように思えます。しかし、条例にかわる法的拘束力があるかどうかが重要だと考えます。憲法第十四条が拘束するのは、基本的に公権力であって、市民ではない。このことは、さきの一般質問でも、最高裁判決を引きまして、申し上げましたとおりです。
では、世界人権宣言はどうでしょうか。法的拘束力はあるでしょうか。法規担当者の見解を伺います。

◎大塚 区政情報課長

お話しの世界人権宣言は、一九四八年十二月十日、第三回国連総会の決議として宣言されたもので、前文と本文三十条から成り、前文では、「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準として、この世界人権宣言を公布する」と述べられております。宣言の本文は、全ての人間の自由と平等、刑事手続上の権利、表現の自由、社会保障を受ける権利など、全ての国の人々が持っている市民的、政治的、経済的、社会的、文化的分野にわたる多くの権利を内容としております。
世界人権宣言は、各国政府が達成すべき共通の基準を宣言したもので、法的な拘束力を持つものではないとされておりまして、裁判例においてもこうした考えが示されているものがございます。

◆上川あや

国には、既に男女共同参画に関して男女共同参画社会基本法がございます。また、性差別の禁止に関しても、雇用機会均等法などの定めがございます。こうした関連法令と今回の条例制定の必要性について、法規の立場からはどのように整理をされますでしょうか、伺います。

◎大塚 区政情報課長

お話しの男女共同参画社会基本法は、男女共同参画社会の形成について、基本理念や国、自治体等の責務などを規定しておりますが、主に、国の取り組み内容の枠組みを定めた法律となっております。
また、男女雇用機会均等法は、雇用の分野における面から、性別を理由とする差別の禁止など、事業主の義務やとるべき措置などについて規定されております。
男女共同参画と多文化共生を推進する条例については、こうした関係法律を踏まえた上で、区として施策を総合的、計画的に推進する観点から、区の基本理念や責務、具体的な基本施策、行動計画の策定などを内容として検討を進めているものでございます。
御案内のとおり、自治体の条例制定につきましては、地方自治法において、地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて、地域における事務と法令により処理する事務に関して、条例を制定することができると定められております。このため、例えば条例と同じような趣旨や目的を持つ法律があっても、自治体として必要がある場合は、法律に違反しない範囲において議会の議決により条例を定めることが可能となっております。このことから、男女共同参画と多文化共生を推進する条例の制定は、最終的に区議会の御判断によるものと考えております。

◆上川あや

ありがとうございます。