具体的な成果

★避難所となる学校の給水拠点化が進みました。

 

水道が断水しても、学校等、区立施設の受水槽内には約45万人分の飲み水が残ります。しかし上部のふたを開け、バケツを入れるは不衛生。上川は受水槽の下部に応急給水栓(蛇口)をつけることを提案。昨年末までに58校で整備を終え、28年度には全校で整備を済ませる計画です。最寄りの小中学校が給水拠点に変わります。

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◆上川あや

初めに、地震、災害時の区民の命の水を確保していく方策としての受水槽の画期的な活用方法について提案いたします。

水道水の給水方式には大きく分けて配水管から蛇口まで受水槽を経ずに直接給水する直結方式と一旦受水槽で受けとめ給水する貯水槽方式の二つがあります。従来、ビル、マンション、学校、病院などの多くで、後者の貯水槽方式が採用されてきました。
通常、この方式で置く受水槽は二つです。一つは地上部あるいは地下に置かれる大型の受水槽、もう一つは、そこからさらにポンプアップされた水を受けとめる屋上部の小型の受水槽です。建物内部の各蛇口へは、この屋上の受水槽から配水されます。
地震災害時に建物本体の給水がとまったり、停電により屋上へのポンプアップがとまったとしても、屋上の受水槽に一旦蓄えられた水は重力で自然におりるため、一定程度使うことができます。しかし、屋上部の受水槽の容量は、その建物の一日の水使用量の十分の一程度と限られています。
一方、地上部あるいは地下に置かれる大型の受水槽には、そのビルの一日の水使用量の約半分、マンション等であれば、住民一人当たり百リットルから百七十五リットルもの飲料水が蓄えられています。これは災害時、一人一日三リットルの水が最低限必要になるとして、ざっと一カ月から二カ月分もの、従来注目されていなかった備蓄水です。

つまり、行政が従来想定、整備してきた半径二キロ以内に一カ所という応急給水拠点にわざわざ苦労して水をくみに行くまでもなく、必要となる水は居住の建物に、また、災害時避難所となる学校、集会所、そのものに大量にあるのです。その水を積極的に活用できるよう設備、制度を変えていこうというのが今回の提案です。
そこで以下伺います。

第一に、区有施設の設備状況を明らかにされたい。この間、区立学校ではおいしいフレッシュな水を直接飲み水栓に届けていくための水道水の直結化、学校フレッシュ水道事業を進めてまいりましたが、多くの学校で受水槽そのものは残されているといいます。これらを含め、区有施設の設備はどのような状況にあるのか、災害時、特にその活用が図られる学校とその他施設とに分けて、その状況を明らかにしていただきたい。

第二に、区有施設の地上部の受水槽に非常用給水栓、つまり蛇口をつけることを求めます。さきに述べたとおり、地上部の受水槽には、災害時でも大量の飲料水が残ります。しかし、そのままの設備では、上部のふたをあけ、人力でバケツを差し入れでもしない限り、くみ出すことはできません。残留塩素がしばらくあるとはいえ、非常に不衛生で好ましくない利用方法です。
しかし、これは簡単に安価に、しかも衛生的に解決することが可能です。通常、公共施設の水道料金課金メーターは受水槽の手前についています。つまり、受水槽内の水は既にメーターを通過し、課金を経ているので、区に所有権が移っています。これは受水槽の下に給水栓さえつければ、衛生的に内部の水を使えることを意味します。
この考えから、千葉県船橋市では二十三年度以降、市が所有する百三の施設にこの非常用給水栓を取りつけ、計三百二万千二百五十リットルもの水を確保したといいます。特に昨年度は、この蛇口設置に千八百八十万円もの補正予算を計上し、新たに九十四の施設で給水を可能としました。市はこの設置によって、一人一日三リットル換算で、何と百万人分を超える常にフレッシュな水を市の施設に備蓄できたことになります。区もこの施設に倣うべきと考えますが、いかがでしょうか、見解を伺います。

第三に、民間のマンション等にも非常用給水栓の設置が可能となるよう、都に制度改正を働きかけるべきと考えます。
世田谷保健所に確認したところ、区内には民間施設だけで六千六百七十三カ所もの受水槽があるとわかりました。その容量は五立方メートル未満から百立方メートルを超える大型のものまでさまざまですが、貯留量五立方メートルの小型のものだけでも、一日一人三リットル換算で百六十六人分の飲み水が、百立方メートルの大型のものでは同じく三万三千三百人分の飲み水が蓄えられている計算になります。区内全体、約六千七百の民間の受水槽を足し合わせれば膨大な量となるでしょう。

しかし、現状では都の水道局がこれらマンション等への非常用給水栓の設置を認めておりません。
何が問題かといいますと、マンションの受水槽は各戸に枝分かれしていく管路の手前にあり、内部の水は各戸につけられた課金メーターを経ていないことから、これらの受水槽に蛇口の設置を認めてしまえば、水道料金を払わずして水が抜き取られる可能性が出てしまう、それを警戒して、都は認めていないのです。
一方、千葉県水道局は、昨年四月、マンション等広く民間施設の受水槽にも非常用給水栓の設置を可能とする制度改正に踏み切りました。通常時、安易に使用することができないよう、あらかじめ封印を施す、災害時にしか使用しないという誓約書の提出を求める等、事前のルールを整えることにより、県内に広く存在する受水槽の災害時の活用を可能としたのです。
同様の制度改正は、既に神奈川県下でも行われています。区として都にも同様の制度改正を強く求めるべきと考えますが、いかがでしょうか、見解を求めます。
また、その制度改正とあわせては、給水栓の普及を促進できる広報の充実、助成制度の構築も進めるよう求めます。

◎阿部 危機管理室長

私からは、地震災害時における受水槽の活用について、順次御答弁申し上げます。

災害時、生命維持に不可欠な飲料水の確保は、区にとって重要な課題であり、この間、区民の自助による備えを基本としつつ、九十万近い区民などの飲料水確保という観点から、地下水や流通備蓄を含めたあらゆる資源の活用について検討を進めているところでございます。
地下水の利用については、昨年度、区役所において井戸と浄水設備を整備し、最大で一日五万人の飲料水を確保できる体制を整えるなど、具体的な取り組みを進めております。

公共施設の受水槽については、現在、東京都水道局管内では衛生や維持費用の面から受水槽を介さない給水方法、いわゆる直結方式を推奨しておりますが、区では災害時における受水槽の有効性に鑑み、特に避難所となる区立小中学校について、一部で直結方式を採用しながらも、受水槽をあわせて設置し、全校において受水槽を設置してまいりました。
区立小中学校における受水槽の設置数や規模については、各学校の状況により異なりますが、各受水槽内で常時貯留している水の量を全て合計すると、およそ六百立方メートルとなってございます。
また、区営住宅や区民センター、保育園、児童館といった他の公共施設におきましても受水槽を備えた施設が九十一施設あり、各受水槽内で常時貯留している水の量を全て合計いたしますと約七百六十立方メートルとなり、先ほどの小中学校の分を加えますと、区公共施設における総量は約千三百六十立方メートル、言いかえますと千三百六十トンの水を貯留していることになります。一日一人三リットルで換算いたしますと四十五万三千人分に相当いたします。

続きまして、区有施設の非常用給水栓の設置を進めるべきだとの御質問にお答えいたします。
広範囲に断水した場合の飲料水の確保については、東京都が整備している給水拠点の運用に加え、従来より建築物などに設置されている受水槽の水を積極的に活用を図ることとしてございます。
具体的には、避難所における飲料水の確保という観点から、区立小中学校の受水槽の活用についても検討してまいりました。御指摘のとおり、停電が発生した場合には、受水槽から校舎屋上の水槽へ水を送ることができず、建物内の蛇口からの給水が困難になります。このような状況にも対応するため、受水槽から直接水を取り出すための蛇口の設置が必要となりますが、現在、小中学校九十三校のうち、二十三校で蛇口を設置しており、引き続き設置を進めてまいります。
また、他の公共施設におきましても、対象施設や災害時の運用方法等について、関係所管と検討した上で、蛇口の設置を進めてまいります。

続きまして、都にマンション等への給水栓設置を可能とするよう制度改正を求めるべきであるとの御質問にお答え申し上げます。
御提案の災害時におけるマンションなどの民間施設の受水槽の活用につきましては、御案内のとおり、東京都水道局の料金課金などの都合により進んでいないと聞いております。民間の受水槽の活用については、これまでは大学などの特定の大規模施設が自助の観点から受水槽に蛇口を設置する例はございましたが、民間マンション等の受水槽の蛇口に設置し、活用できる環境が整えば、飲料水確保の有効な一方策となり得ることから、他の区との連携も視野に入れ、東京都に対して制度見直しの働きかけを行ってまいります。
区といたしましては、区民に対して引き続き自助を呼びかけるとともに、区内のさまざまな水資源に着目いたしまして、災害時における飲料水の確保に努めてまいります。
以上でございます。

◆上川あや

区立施設への給水栓の設置について再質問いたします。
お答えでは、区立学校の残る七十校、その他の区立施設についても蛇口の設置を進めていくとのことでありました。しかし、特に学校については、従来どおり学校改築に合わせて整備するというテンポでは全く遅過ぎて、これは対策にならないと思っています。速やかに対応していただかなければおかしいと考えるんですが、どういったスケジュール感で進めていくのかお伺いいたします。

◎阿部 危機管理室長

小中学校への給水栓の設置について、さらなるスピードアップをとの再質問でございます。
区ではこれまで、小中学校の改築、改修に合わせまして年数カ所のペースで給水栓の設置を進めており、現在、九十三校中二十三校について設置をしてございます。避難所における飲料水の確保は優先課題でございまして、これまで以上にスピード感を持って対応しなければいけないものと認識してございます。
御指摘の給水栓の設置につきましては、庁内の調整は必要ではございますが、避難所における飲料水の確保に向けて有効な策と考えておりますので、三年程度の間に、全ての小中学校の受水槽の水が利用可能となるよう取り組んでまいりたいというふうに考えております。
以上でございます。

◆上川あや

災害対策として三年かけるというのは時間をかけ過ぎだと思いますので、速やかにお願いします。