◆上川あや

次に、性的マイノリティ、LGBTの当事者である区職員の環境改善について伺います。

区が性的マイノリティの環境改善を目指し、渋谷区と並んで先進諸国ではむしろ当然の同性カップルの公的認証並びに支援策を検討していることを高く評価します。しかし、外に働きかけるばかりで、区役所で働く当事者の方々からは、役所の中では依然偏見や差別的言動があり、セクシュアリティは安心して語れない、明かせないと耳にします。とても残念なことです。

そこで、区内最大の事業者である区役所みずから率先して庁内の環境を変えてゆくことを求めたいと思います。
まず、LGBTへのやゆ、不愉快な言動をハラスメントであると明確に位置づけるよう求めます。
経済誌「東洋経済」によるCSR、企業の社会的責任、行動規範づくりの調査では、LGBTの権利尊重や差別禁止などの基本方針を既に定めた国内企業は、調査対象六百四社のうち一三・二%、今後予定しているとした企業も四・八%を占めました。
基本方針ありとした百十四社のうち、例えば資生堂では、行動基準のあらゆる差別や虐待、セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントなどのモラルハラスメントは絶対に行わず、決して許しませんの項目の中に、人種や性別などと並び性的指向、つまり同性愛者の差別禁止を明記しています。野村證券を傘下に持つ野村グループでも、その倫理規程で、国籍、人種、民族、性別、年齢、宗教、信条、社会的身分、性的指向、性同一性障害の有無等を理由とする一切の差別やハラスメントを行わないと定めています。同性愛や性同一性障害への差別を明確に禁じています。今や多くの国公立大学も私立大学もハラスメント防止のガイドラインを持ち、その中にLGBTへの無理解な言動をハラスメントと定義し、啓発、相談を行っています。

ところが、区が定めるセクシュアルハラスメントの基本方針にそれとわかる記述は一切ありません。そこに配慮ある記述を求めます。
この点を改善するつもりがあるのか、それともこのまま、うやむやに過ごすおつもりであるのか見解を問います。
第二に、同性愛者である区職員の処遇の改善です。

アメリカ政府は、二〇一〇年より、同性愛の連邦職員に対しても家族向けの手当支給を認めるなど、職員間の権利の平等を期しております。昨年七月、国際連合も同性婚をしている事務局職員に異性との結婚とほぼ同じ待遇を保障すると発表し、話題となりました。潘基文事務総長は、人権尊重は国連の使命の中核、全職員のさらなる平等な待遇を支持すると全職員四万三千人に通知を出し、同性愛者への嫌悪や差別を拒絶するよう呼びかけております。
国内でも、日本IBMが二〇一一年から同性カップルにも結婚祝い金の支給を始め、十組近くが申請したと報じられました。また、化粧品のLushも、先日同性カップルに結婚祝い金を出し、家族向け休暇等、福利厚生を平等にすると決め、報道されました。

さて、区でも区の職員の処遇、福利厚生は当人のセクシュアリティにかかわらず平等であるべきです。
区役所では、婚姻し一定の要件を満たした職員には扶養手当、単身赴任手当が支給されます。また、出産支援休暇、慶弔休暇、介護休暇、配偶者同行休業もあります。職員親睦会からは結婚祝い金や貸付金などが支給されます。これらは結婚休暇を除き、法的婚姻をしていない事実婚のカップルにも認められると言います。事実婚の確認方法は、例えば手当であれば連名の署名による申し立てだそうですが、ならば同性カップルにも適用可能であるはずです。福利厚生、休暇、手当等の処遇で性的マイノリティの職員にも適用可能なものの洗い出しとその適用を求めますがいかがか、区の見解を問います。

◎保坂 区長

上川議員にお答えをいたします。
まず、性的マイノリティの皆さんに対する差別解消の取り組みについて、区みずからが足もとから環境を変えよという御質問でございました。
基本構想では、多様性を認め合い、自分らしく暮らせる地域社会を築き、差別や偏見のない社会を実現していくことを掲げていまして、行政の最上位計画である基本計画では、性的マイノリティの方々の人権尊重も明確に記しております。
したがって、世田谷区の組織を支える職員は、一人一人がこの基本構想に掲げる理念を理解し、基本構想に明記されている人権尊重をしっかりよく理解して日々の職務に当たっていくことが必要だと思います。
御指摘の性的マイノリティの問題に対して、区組織の中におけるセクハラ対策の観点からも大変重要な点だと受けとめました。職員研修の内容充実なども含め、今まで以上に職員の意識啓発に取り組んでいくとともに、何らかの対策について考えてまいりたいと思います。
具体的な取り組みについて、所管部長より答弁をさせていただきます。

◎萩原 総務部長

私からは、性的マイノリティに関して二点お答えいたします。

初めに、性的マイノリティへのやゆ、不愉快な言動をハラスメントと位置づけよとのお尋ねでございます。
区では、平成十年に職場におけるセクシュアルハラスメントに関する基本方針を策定し、この間、庁内での研修を行うなど全庁挙げてセクシュアルハラスメント防止に取り組んでまいりました。平成二十六年十月には、セクシュアルハラスメントに関する国の指針が改正されたことに伴い、区の基本方針を改正し、新たにセクシュアルハラスメントには同性に対するものも含まれることや、性的な言動には、性別役割分担意識に基づく行動も含まれることを盛り込んだところでございます。
性的マイノリティに関する不快な言動等については、セクシュアルハラスメントの禁止を規定する世田谷区職員服務規程に当然に抵触するものでございますが、御指摘の点については、区としてハラスメント対策を進める上でも大変重要であると考えております。
区では、セクシュアルハラスメントに関する基本方針の制定以後、職員向けのハラスメント防止研修を継続的に実施してまいりましたが、今後は、例えばこの研修の中で職員服務規程で禁止される性的な言動の一つの例として、性的マイノリティへのやゆなどを具体的に盛り込むなど、性的指向や性同一性などに関する区職員の理解がさらに進むよう、しっかりと意識啓発を進めてまいりたいと考えております。

次に、当事者職員の処遇改善についてのお尋ねです。
職員に対する手当て制度や休暇制度、また福利厚生制度の中には、配偶者がいることを要件としたものが幾つかございます。これらの制度の要件にある配偶者は、基本的には法律上の婚姻関係にある配偶者のことを指しておりますが、御指摘のとおり、その多くが法律上の婚姻関係にはない、事実上婚姻関係と同様の事情にある者も配偶者に準じて対象とされております。
同性カップルにもこうした制度を適用できるようにするべきとの御指摘でありますが、さきの区長の答弁にもありましたように、区は基本構想においては、多様性を認め合い、差別や偏見のない社会を実現していくことを掲げており、基本計画においても、性的マイノリティの方々の人権の尊重を記しております。
これらのことから、どのようなことができるのか検討の課題だと認識しております。
以上でございます。

◆上川あや

区長に再質問いたします。性的マイノリティの職員の処遇改善についてです。
一つ目に、性的マイノリティへの不愉快な発言はセクハラに当たると認めながら、セクハラの基本方針に明記をしないという答弁、それはおかしいので、しっかり明記するというお約束をいただきたい、これが一点です。
二点目に、個人の努力で変更不可能な性的指向によって職員の中に処遇の格差がある、これは差別だと私は考えております。検討の課題とするという棚上げの答弁には納得できませんので、区長から、しっかりこれは改善していくというお約束をいただきたいと思います。お願いいたします。

◎保坂 区長

上川議員の再質問にお答えいたします。
まず、私も、平成十年につくられた職場におけるセクシュアルハラスメントに関する基本方針、区の方針ですが、これを拝見いたしました。職場におけるセクハラは、同性に対するものが含まれるなどの記載もありますが、議員おっしゃるように、明確にセクシュアルマイノリティの当事者に関する不愉快な言動、これがセクハラであるということが読み取れない、あるいは非常にそこは不十分な中身となっております。これは早速、セクシュアルマイノリティの当事者の皆さんに対する不愉快な言動はセクシュアルハラスメントであるということの明記をしていきたいと思います。
二番目に、職員の福利厚生面における例えば同性愛の方々に不利益な扱い、あるいは差別などがあってはならないと思いますが、現在のところ制度が想定をしていないということで、いろいろな不利益扱いと思われることがあろうかと思いますが、法や人事制度で動いていることについて、すぐ手をつけるのは難しいこともありますが、まず区としてできること、区長として判断できることから始めるべく、所管部長と相談して検討してまいりたいと思います。
なお、昨年九月の上川議員とのやりとりで示された性的マイノリティの方々のパートナー証明については、なるべく早く実現可能な具体策を準備するように現在指示をしていることもつけ加えさせていただきます。

◆上川あや

ありがとうございます。残る課題は予算審議で伺ってまいります。