◆上川あや

最後に、神明の森みつ池の蛍についてです。

区内に多く残る樹林地や水辺地の中でも、動物生息地が一体となった土地で、特に保全する必要がある民有地を区は特別保護区として指定し、保護しています。中でも、成城四丁目の神明の森みつ池特別保護区は、二十三区で二カ所しかないゲンジボタルの自生地として知られ、また、唯一、関東型のDNAの蛍が自生する場所となっています。
みつ池の森では、オオタカの飛来等も確認され、区が進める生物多様性地域戦略でも最重要地点の一つになるものと考えますが、保護区の面積はわずか六千五十六平米、四角形に直せば、たった七十八メートル四方しかありません。住宅地に残るこの小さな森だけで蛍の保全は大丈夫なのでしょうか。

懸念の第一は、蛍同士の出会い、交尾を難しくする光の存在、光害のおそれがあることです。
蛍は満月の夜に飛行や発光が極端に少なくなることが知られています。満月の明るさは〇・二ルクス、消えかけたろうそく一本程度の光ですが、国立環境研究所の研究では、さらにその半分、〇・一ルクスのLEDの光でも蛍の繁殖に悪影響が出ることが確認をされています。街灯に使われる高圧ナトリウムランプにも、このLEDと同じ波長を持つ明かりは多いそうですが、保護区に面した区道には、保護区に向けて街灯がずらりと並びます。また、みつ池の水面そのものにも隣家の明かりが落ちています。フェンスに面した区道には、ライトをつけた車、バイクが行き交いますが、遮光ネット等の配慮もなく、蛍見物に来た見物客からはカメラのフラッシュまでたかれる始末です。それでいて、周囲には注意書きの一つすらありません。
ヘイケボタルの自生する千代田区の牛ヶ淵では、繁殖期、お堀に光を漏らさない協定が既に環境省と千代田区、隣接事業者の間で取り交わされています。お堀に面して建設が進む千代田区の高齢者センターも、蛍に配慮した照明を目指し、工事を進めていると言います。区も何らかの対策をとるべきと考えますが、いかがでしょうか。

また、生物には、最小存続可能個体数の法則というものがあるそうです。生息地が細分化、孤立化し、周囲との交流が絶たれれば、近親交配のリスクが高まり、弱い個体の増加から、絶滅のリスクも高まると言われます。遺伝的多様性の減少を最小限にとどめるための有効集団サイズは通常五十個体、遺伝的浮動によって減少する遺伝的変異を新たに生じる突然変異によって補い、平衡を保つには五百個体が必要だとも言われます。ところが、区に確認すると、みつ池の蛍は現在二百個体程度しかありません。安易な放流は厳に慎むべきですが、現状のまま近親交配が重なっていくことに絶滅のリスクがないのかが気になります。区はみつ池の個体群の現状をどのように見ているのでしょうか。調査、研究に基づく計画的な保全もぜひ必要と考えますが、いかがでしょうか。あわせて区の見解を伺います。

◎澤谷 みどりとみず政策担当部長

続きまして、神明の森みつ池特別保護区における蛍の保全について、光害の対策に取り組むべきではないか、近親交配により弱い個体が増加し、絶滅するリスクについて、個体数環境評価を行い、保全計画を考えるべきにつきまして、三点あわせて御答弁申し上げます。

神明の森みつ池は、区内でも特に豊かな自然環境が残されている場所であり、特別保護区及び特別緑地保全地区として指定し、保存している緑地です。ここでは、周辺環境との調和を図ること、保存ゾーンと活動ゾーンに分けて管理すること、区民参加により運営管理することを基本として、区や世田谷トラストまちづくりが区民団体であります成城みつ池を育てる会と連携して、管理運営を行ってきております。この育てる会では、蛍を初めとした動植物の調査や緑地などの維持管理作業、蛍の餌となるカワニナの増殖活動を行っています。
お話しの光害の影響、懸念につきましては、繁殖期における観賞者のフラッシュ撮影の禁止などについて、育てる会とも相談し、検討してまいります。
また、近親交配のリスクについてですが、蛍の生息数は多くございませんが、他の地域の蛍やカワニナを放流するのではなく、みつ池の個体をふやしていくために、地区内のカワニナの移動や増殖のための緑地管理などの環境整備を引き続き行ってまいります。
最後に、保全計画などにつきましては、今後も世田谷トラストまちづくりや育てる会への活動支援によりまして、みつ池の環境調査や保全活動を継続しつつ、検討を積み重ねていくものと考えてございます。
以上でございます。