◆上川あや

続けて、聴覚障害者団体から繰り返し出されている要望の一つに、聴覚障害者情報提供施設の開設があります。同施設は、身体障害者福祉法第二十八条に根拠を持ち、同第三十七条の規定に基づき、国庫負担率五割で区でも開設が可能な施設です。そこで展開される事業は、さきの定例会でも取り上げました手話通訳等派遣事業の運営と、同じく決算質疑で取り上げました手話講習会等の開催、さらに相談事業、情報提供事業がその核となります。
これまで私が指摘したとおり、区はこれまで、区の必須事業、手話通訳等派遣センターの借り上げ賃料の実費すら負担することなく、人件費も含めその多くを区内障害者団体に不当に背負わせてきました。その押しつけ金額は、家賃回りだけでも七百万円以上、私からはその弁済を繰り返し求めています。

また、さきの福祉保健領域で取り上げた手話講習会の開催も区の必須事業です。ここでも区は、安定させるべき講習会場を毎週のように二転、三転、四転させており、委託先である障害者団体、区民受講者等に不便を強い続けています。これら複数の課題を整理、集約し、合理的に解消しようと図れば、おのずと聴覚障害者団体の皆さんが求める情報提供施設の開設に帰結するのではないでしょうか。
現在、都内にある同施設は千二百万人以上の都民に対し、目黒区内の一カ所だけ。世田谷区より人口の少ない鳥取県内に三カ所、島根県にも二カ所開設されていることから考えましても、区内に同施設を開くことには合理性があると考えます。まずはどれくらいの設備、規模が必要で、その開設にどれだけのコストがかかるのか、開設を求める団体とともにラフに想定する作業を求めます。
区長の見解を伺いまして、私の壇上からの質問を終わります。

◎保坂 区長

上川議員にお答えをいたします。
聴覚障害者情報提供施設は、身体障害者福祉法第三十四条に視聴覚障害者情報提供施設として規定されています。国は障害者基本計画第三次におきまして、聴覚障害者情報提供施設の全ての都道府県への設置を目指しており、東京都は聴力障害者情報文化センターを社会福祉法人に補助し、目黒区内に設置しており、ここでは主に字幕、手話入りDVDの貸し出しや相談事業など、きめ細かな情報提供を行っていると聞いています。しかし、同センターの利用件数が減少していることから、隣接している世田谷区としても、同センターを区民に周知することも重要であると考えています。
区としましては、世田谷区立総合福祉センターにおいて、聴覚障害者を対象とする体操教室や手話講座、聞こえや補聴器に関する相談や情報提供等を実施しており、手話通訳者の養成や派遣も含め、聴覚障害者情報提供施設と同じようにきめ細かく実施していきたいと考えています。
御指摘のように、障害者権利条約が批准され、また障害者差別解消法の制定に伴って、やはり目に見えない壁、あるいは、まさに合理的な配慮を常に重ねていかなければならないということが義務づけられたことを踏まえると、都道府県に義務づけた中に島根県が二カ所、鳥取県が三カ所ということであれば、まず東京都全体、二十三区だけでも八百万人以上の、八百八十万の人口がいるわけで、そういう意味では、東京都全体もやはり一カ所では非常に足りないということだろうと思います。
厚生労働省と東京都と改めてお話をして、区内でしっかりそういう場所を立ち上げていくということだけではなくて、現在の状況、非常に不足しているということを踏まえて取り組みを進めていきたいと思います。